リヴァプールの補強戦略は大きな転換点を迎えている。夏の移籍市場でマルク・グエヒ獲得が土壇場で破談となった後、クラブは同じクリスタル・パレスに所属するマクサンス・ラクロワへと強い関心を寄せている。英『Football Insider』の報道によれば、ラクロワはリヴァプールのスカウト陣から「ロールスロイス」と称され、プレミアリーグ屈指のセンターバックとして高く評価されている。
25歳のフランス人DFは、昨年ヴォルフスブルクからパレスに加入して以来、プレミアリーグでの存在感を急速に高めてきた。契約は2029年まで残っており、クラブが簡単に手放す可能性は低い。
しかし、リヴァプールのリクルート部門は彼の「過小評価されている現状」にこそ価値を見出している。代表歴がなく、まだフランス代表に定着していないことが、移籍市場での価格を抑える要因になると見られているのだ。
さらに注目すべきは、ラクロワが今季のパレスの無敗記録を支える守備の要である点。地上戦・空中戦ともに高い勝率を誇り、ラインを高く保つ戦術にも適応できるスピードを備えている。リヴァプールが求める「即戦力かつ将来性を持つセンターバック像」に、これほど合致する選手は多くない。
リヴァプールの守備再建とラクロワの適性
リヴァプールがセンターバック補強を急ぐ背景には、複数の現実的な要因がある。まず、夏に獲得した若手ジョヴァンニ・レオーニが前十字靭帯断裂で長期離脱を余儀なくされ、今季の戦力計算から外れてしまったこと。
そして、イブラヒマ・コナテの契約が今季限りで満了を迎える可能性があることだ。さらに、34歳となったフィルジル・ファン・ダイクの衰えが徐々に見え始めており、守備の屋台骨を支える新たな存在が不可欠となっている。
ラクロワの強みは、フィジカルだけではない。彼は試合の流れを読む力に優れ、相手の攻撃を未然に防ぐポジショニングを得意とする。今季のパレスはリーグ戦でわずか3失点と鉄壁の守備を誇っており、その中心にいるのがラクロワだ。
また、ラクロワはビルドアップ能力にも優れており、後方からの正確なパスで攻撃の起点を作ることができる。アルネ・スロット監督が志向するポゼッション型の戦術において、彼の冷静な配球は大きな武器となるだろう。リヴァプールが守備の安定と攻撃の推進力を両立させたいのであれば、ラクロワの加入は理想的な補強となる。
契約と移籍市場の現実
とはいえ、ラクロワ獲得は容易ではない。彼の契約は2029年まで残っており、クリスタル・パレスは現在18試合無敗と絶好調を維持している。オリヴァー・グラスナー監督の下で構築された堅固な守備を崩すリスクを冒してまで、クラブが主力を放出する可能性は低い。実際、グエヒの移籍が破談となった背景にも、守備陣の層を維持したいというクラブの強い意志があった。
それでも、リヴァプールが本気で次世代の守備陣を構築するつもりなら、相応の投資は避けられない。ラクロワの推定市場価値は約3000万ユーロとされるが、実際の移籍金はそれを大きく上回る可能性が高い。パレスにとって彼は「売り物」ではなく、チームの未来を担う存在だからだ。
個人的な見解
マクサンス・ラクロワの名前がリヴァプールの補強リストに浮上したことは、極めて合理的な判断だと考える。
ファン・ダイクの後継者探しは避けて通れないテーマであり、コナテの去就が不透明な現状を踏まえれば、即戦力かつ将来性を兼ね備えたセンターバックの獲得は急務だ。
ラクロワはその条件を満たす数少ない選手であり、しかもまだフランス代表に定着していない点は、リヴァプールにとって「掘り出し物」となり得る。
もちろん、パレスが簡単に手放すはずはない。だが、リヴァプールが本気で守備の再建を進めるのであれば、ここでの投資は避けて通れない。
個人的には、ラクロワがアンフィールドの赤いユニフォームを身にまとう姿は、近い将来現実になる可能性が高いと見ている。彼の冷静さと力強さは、リヴァプールの守備に新たな安定感をもたらすはずだ。
さらに言えば、ラクロワの加入は単なる戦力補強にとどまらず、クラブの未来像を象徴するものになるだろう。
経験豊富なファン・ダイクと若手の間に位置する25歳という年齢は、世代交代をスムーズに進める上で理想的だ。彼が加わることで、リヴァプールは守備の安定と将来への布石を同時に打つことができる。
