トッテナム・ホットスパーはラツィオのセンターバック、マリオ・ヒラに強い関心を寄せている。英『TBR Football』の報道によれば、クラブは冬の移籍市場に向けて本格的にスカウティングを進めており、クリスタル・パレス、ブライトン、エヴァートンといったプレミアリーグのライバルたちも同選手を追っている。
25歳のスペイン人DFは、バルセロナ生まれでレアル・マドリードのカンテラ出身。セリエAでの経験を積み、ラツィオで確固たる地位を築き上げた。
トッテナムがヒラに注目する背景には、昨季から続く守備の不安定さがある。ミッキー・ファン・デ・フェンとクリスティアン・ロメロのコンビはプレミア屈指の強固さを誇るが、どちらかが欠場した際の代替策は十分ではなかった。
実際、昨季は負傷者が相次ぎ、勝ち点を落とす試合が目立った。今季はトーマス・フランク監督の下で改善が見られるものの、チャンピオンズリーグを含む過密日程を戦い抜くには、さらなる補強が不可欠だ。ヒラはその「第三の柱」として、理想的な存在と見なされている。
マリオ・ヒラの強みとプレミア適応の可能性
ヒラの最大の武器は、冷静な守備判断と空中戦での強さだ。ラツィオでは相手の縦パスを読み切るインターセプト能力を発揮し、ビルドアップの局面では中盤に一歩踏み出して数的優位を作り出す。
これはフランク監督が志向する「前進型の守備戦術」と親和性が高く、ロメロの攻撃的な守備スタイルとの相性も良い。さらに、セリエAという戦術的に厳しい環境で磨かれた経験は、プレミアリーグの強度に適応する上で大きな財産となる。
ヒラは「冷静さと攻撃的な守備のバランス」を兼ね備えた稀有な存在であり、トッテナムの守備に安定感をもたらす可能性が高い。特に、空中戦の勝率はラツィオでもトップクラスであり、プレミアリーグのフィジカルな戦いにおいても即戦力として期待できる。加えて、彼の足元の技術は、後方からの組み立てを重視するフランクの戦術において重要な役割を果たすだろう。
ラツィオとの交渉と移籍金のハードル
ヒラの契約は2027年まで残っており、ラツィオは簡単に手放すつもりはない。移籍金は3000万ユーロ前後と見込まれており、トッテナムが獲得に動く場合は相応の投資が必要になる。ラツィオは今季もセリエAとヨーロッパリーグを並行して戦っており、守備の要であるヒラを冬に失うことは大きな痛手となる。そのため、交渉は難航する可能性が高い。
しかし、プレミアリーグでの挑戦を望む選手本人の意志が加われば、状況は一変する。実際、過去にもセリエAからプレミアリーグへと移籍した選手たちは、キャリアの新たなステージを求めてクラブを説得した例が少なくない。トッテナムが本気で動くなら、ヒラの意志を後押しに交渉を進めることになるだろう。
トッテナムは近年、即戦力でありながら将来的な価値も見込める選手をターゲットにしてきた。ヒラは25歳とキャリアのピークに差し掛かっており、経験と成長余地を兼ね備えた理想的な年齢だ。ロメロやファン・デ・フェンといった主力と競争しつつ、長期的には守備の柱となる可能性を秘めている。
さらに、トッテナムは今季チャンピオンズリーグに参戦しており、国内外での戦いを両立させるためには層の厚さが不可欠。ヒラの加入はバックアップではなく、主力と遜色ないレベルでのローテーションを可能にする。これにより、シーズン終盤の勝負どころで疲労や負傷によるリスクを軽減できるだろう。
個人的な見解
マリオ・ヒラは、派手なプレーで観客を沸かせるタイプではない。しかし、その堅実さと安定感こそが、トッテナムにとって最も必要な要素だと感じる。
ロメロの攻撃的な守備とファン・デ・フェンのスピードを支える形で、冷静にラインを統率できる存在は、シーズン終盤の勝負どころで大きな差を生むだろう。
特に、チャンピオンズリーグとプレミアリーグを並行して戦う今季のスパーズにとって、守備の安定は攻撃力以上に重要なテーマだ。
個人的には、ヒラの加入が即座にスタメンを奪うとは考えていない。しかし、彼がもたらす競争意識と戦術的柔軟性は、チーム全体の底上げにつながるはずだ。
移籍金の高さはリスクだが、25歳という年齢を考えれば投資に見合う価値がある。トッテナムが本気でタイトルを狙うのであれば、こうした「堅実な補強」を積み重ねることが不可欠だと強く思う。