リシャルリソンの去就はプレミアリーグ、MLS、さらには中東のクラブを巻き込んだ大きな話題となっている。海外メディア『ESPN』によれば、MLSのオーランド・シティは28歳のブラジル代表FWに対して「キャリアプロジェクト」と銘打った長期契約を提示し、2026年ワールドカップを見据えたチームの象徴として迎え入れる計画を立てていた。
しかし、トッテナムが要求した移籍金は約4000万ユーロ。市場価値が2000万ユーロ前後にまで下落している現状を踏まえると、MLS側はその金額を検討すらしなかった。
この交渉決裂は、MLSが欧州トップリーグの現役主力を引き抜く難しさを鮮明に示した。リシャルリソンは昨夏もサウジアラビアやイタリアのクラブから関心を寄せられたが、ブラジル代表での地位を守るためにトッテナム残留を選択した経緯がある。
契約は2027年12月まで残っており、トッテナムとしても簡単に手放す理由はない。しかし、度重なる怪我と不調で期待に応えきれていない現実が、クラブの判断を揺さぶっている。
トッテナムでの停滞とエヴァートン復帰の可能性
リシャルリソンは2022年にエヴァートンから約6000万ポンドで加入したが、トッテナムでの3年間は決して順風満帆ではなかった。2024-25シーズンは公式戦24試合で5得点2アシストにとどまり、プレータイムはわずか942分。怪我による離脱が多く、リズムを掴めないままシーズンを終えたとLivedoor Newsが報じている。ファンやメディアからは「116億の失敗作」と揶揄されることもあり、クラブ内での立場は不安定だ。
一方で、古巣エヴァートンが復帰を検討していると、英『Sky Sports』が伝えている。デイビッド・モイーズ監督はリシャルリソンを高く評価しており、ストライカー補強の最優先候補に挙げているという。
レンタル移籍を含めた柔軟なオプションが議論されており、給与負担を軽減したいトッテナムにとっても悪くない取引となる可能性がある。エヴァートン時代のリシャルリソンは毎シーズン二桁得点を記録し、クラブの残留争いを支えた象徴的存在だった。その記憶が復帰の期待を後押ししている。
さらに、トルコのガラタサライやサウジアラビアの複数クラブも獲得に関心を示していると報じられており、リシャルリソンの市場価値が下落している今こそ、移籍が現実味を帯びている。
プレースタイルと戦術的価値
リシャルリソンの評価を数字だけで測るのは難しい。彼の真価は、前線からの守備、空中戦での強さ、そしてゴール前での泥臭い動きにある。相手DFにとって常に厄介な存在であり、得点が少なくてもチーム全体の攻撃リズムを活性化させる役割を担ってきた。特にブラジル代表では、カタールW杯でのオーバーヘッド気味のゴールが象徴するように、大舞台での勝負強さを発揮してきた。
トーマス・フランク監督の就任に伴い、リシャルリソンの先発出場も増えている。開幕戦こそ2ゴールを挙げたものの、その後はチャンピオンズリーグなども含めて1ゴールに留まっており、点取り屋としての活躍をできているとは言い難い状態が続いている。
リシャルリソンが移籍を慎重に考える最大の理由は、ブラジル代表での立場だ。カタールW杯ではエースとしてゴールを重ねたが、その後は怪我と不調で序列を落としつつある。2026年大会を見据える中で、MLS移籍は代表選考に不利に働くリスクが高い。欧州トップリーグでのプレーを続けることが、彼にとって最も現実的な選択肢である。
『Transfermarkt』によれば、2025年現在の市場価値は2000万ユーロ。ピーク時の6500万ユーロから大きく下落したが、年齢的にはまだ全盛期にあり、1シーズンの活躍次第で再評価される可能性は十分に残されている。もしトッテナムで再び輝きを取り戻せば、チャンピオンズリーグ常連クラブからのオファーも夢ではない。
個人的な見解
リシャルリソンのキャリアは、常に「期待」と「現実」の狭間で揺れ動いてきた。エヴァートン時代の爆発力を知る者にとって、トッテナムでの停滞はもどかしい。
しかし、彼のプレースタイルは数字に還元されにくい部分が多く、前線からの守備や空中戦での強さ、そして泥臭くゴールに迫る姿勢は、どのクラブにとっても代えがたい武器だ。
だからこそ、MLSのような「象徴的存在」としてのオファーは魅力的でありながらも、彼自身が選ばなかったのは理解できる。代表復権を狙うなら、欧州の舞台で戦い続けるしかないのだ。
個人的には、リシャルリソンにはもう一度「エヴァートン時代の輝き」を取り戻してほしいと願っている。
彼が持つ闘志と献身性は、どのクラブにとっても代えがたい財産だ。トッテナムでの未来が閉ざされつつあるなら、環境を変えることが再生のきっかけになるかもしれない。
2026年ワールドカップまで残された時間は限られている。リシャルリソンがどの道を選ぶのか、その決断は彼のキャリアを大きく左右するだろう。
