チェルシーで構想外となった男が、再び欧州の舞台で輝きを取り戻すかもしれない。元フランス代表DFアクセル・ディサシは、2023年にASモナコから4500万ユーロでチェルシーへ加入が、現在トップチームから外され、個別トレーニングを強いられている。そんな彼に対して、ボルシア・ドルトムントが本格的な関心を示していると、ドイツ紙『BILD』が報じた。
この移籍話が現実味を帯びている背景には、ドルトムントの守備陣に起きている構造的な変化がある。主力CBニコ・シュロッターベックが2026年夏にバイエルン・ミュンヘンへの移籍を希望していると報じられ、クラブはすでに後任探しに着手。その筆頭候補がディサシであるようだ。
ディサシ×コバチ、モナコ時代の再連携が生む守備の再構築
ドルトムントがディサシに注目する最大の理由は、現監督ニコ・コバチとの過去の関係性にある。両者はASモナコ時代に師弟関係を築いており、コバチはディサシのフィジカル、空中戦、そしてリーダーシップを高く評価していた。モナコでは3バックの中央や右CBとして起用され、守備の要として君臨していた。
コバチが現在ドルトムントで採用する可変式の4-2-3-1や3-4-2-1においても、ディサシの特性は戦術的に噛み合う。特に、ビルドアップよりも対人守備と空中戦に強みを持つタイプのCBは、ブンデスリーガの高速カウンターにおいて重宝される。
チェルシーではポゼッション重視の戦術に馴染めず、判断ミスやポジショニングの不安定さが露呈したが、ドルトムントではより明確な守備タスクに集中できる環境が整っている。
さらに、ディサシは27歳と脂の乗った年齢であり、プレミアリーグやリーグ・アンでの経験値も豊富。フランス代表としても5キャップを持ち、国際舞台での実績もある。コバチとの再連携は、彼にとってキャリア再生の起爆剤となる可能性が高い。
チェルシーの“爆弾処理”とドルトムントの補強戦略
一方、チェルシー側の事情もこの移籍を後押ししている。クラブは昨シーズン、ディサシをアストン・ヴィラへローンで放出したが、完全移籍には至らず。現在はトップチームから外され、トレーニングも別メニューで行っている状態だ。市場価値は下落しており、クラブとしては損切りを視野に入れている。
ドルトムントにとっては、まさに“バーゲン”のチャンスだ。2200万ユーロ前後で獲得可能とされるディサシは、経験・年齢・フィジカルの三拍子が揃った即戦力。
しかも、シュロッターベックの退団が濃厚な中で、守備陣の再構築は急務となっている。若手の育成と即戦力のバランスを重視するドルトムントの補強戦略にも合致しており、理にかなった動きと言える。
さらに、過去2年間でチェルシーとドルトムントは複数の取引を行っており、クラブ間の関係性も良好だ。イアン・マートセンやカーニー・チュクウエメカの移籍がその好例であり、今回のディサシ獲得もスムーズに進む可能性が高い。
加えて、ディサシにはニューカッスルやウェストハム、さらにはサウジアラビアの複数クラブも関心を示しているが、コバチとの再会という明確な動機があるドルトムントが優位に立っている。
個人的な見解
アクセル・ディサシのドルトムント移籍は、戦術的にも心理的にも極めて理にかなった補強だと感じる。
コバチの下で再び自信を取り戻し、ブンデスリーガという舞台で本来の力を発揮する可能性は十分にある。
特に、ドルトムントが若手主体の守備陣に経験値を加えるという意味でも、ディサシの加入は大きな意味を持つ。
もちろん、チェルシーでの苦戦は無視できない。ポゼッション型のチームでの不適応、判断ミス、ポジショニングの甘さ。それらはプレミアリーグの厳しさを突きつけた。
しかし、環境が変われば選手も変わる。ドルトムントというクラブは、過去にも“再生工場”として数々の選手を蘇らせてきた。ディサシがその最新例となるか、注目していきたい。
