トッテナム・ホットスパーがユヴェントスのセルビア代表ストライカー、ドゥシャン・ヴラホヴィッチの獲得レースで明確に優位に立っている。
英『Football Insider』の報道によれば、ヴラホヴィッチは来年6月で契約満了を迎えるため、ユヴェントスは1月の移籍市場で売却に踏み切る準備を進めている。クラブとしては、フリーでの流出を避けるために移籍金を得ることが最優先課題となっている。
トッテナムはすでに具体的なアプローチを開始しており、選手本人もロンドン行きに前向きだと伝えられている。チェルシーやマンチェスター・ユナイテッドも関心を示しているが、現時点で最も積極的に動いているのはトッテナムのようだ。
ユヴェントスでのヴラホヴィッチは、2022年の加入以降、公式戦154試合で62得点を記録。数字だけを見れば決して失敗ではないが、監督交代や戦術的な不一致により、今季はリーグ戦9試合中わずか2試合の先発にとどまっている。それでも途中出場から4得点を挙げており、限られた時間で結果を残す勝負強さを示している。
ヴラホヴィッチがトッテナムにもたらすもの
トッテナムはトーマス・フランク監督の下で躍動感あるサッカーを展開しているが、前線の決定力不足は依然として課題だ。リシャルリソンやコロ・ムアニが起用されてきたものの、安定した得点源としては物足りない。今季もプレミアリーグで首位アーセナルに2ポイント差の3位につけているが、勝ち点を取りこぼす試合の多くは「決め切る力」の欠如に起因している。
ヴラホヴィッチは190cmを超える長身を活かした空中戦の強さに加え、足元の技術とポジショニングセンスを兼ね備えている。クロスに合わせる力はもちろん、カウンター局面での推進力も魅力で、フランク監督が志向するダイナミックな攻撃にフィットするだろう。
さらに、前線からの守備にも積極的に関与できるため、単なるフィニッシャーではなく、チーム全体の戦術的バランスを高める存在となる。
また、トッテナムは今季チャンピオンズリーグでも好スタートを切っており、グループリーグ2試合で4ポイントを獲得している。だが、欧州の舞台で勝ち抜くためには、ワールドクラスのストライカーが不可欠。ヴラホヴィッチの加入は、国内リーグだけでなく欧州での競争力を一段引き上げる可能性を秘めている。
ユヴェントスの苦渋の決断と市場の動向
ユヴェントスにとってヴラホヴィッチの売却は、財政的な事情も絡む。高額な年俸と移籍金を投じたにもかかわらず、クラブの期待に完全には応えられなかったことから、経営陣は「損失を最小限に抑える」判断を下そうとしている。ユヴェントスは1月に移籍金を得ることで、来夏の補強資金に充てる計画を立てているという。
一方で、チェルシーやマンチェスター・ユナイテッドも依然として動向を注視しており、特にチェルシーはトッド・ベーリー体制の下で大型補強を続けている。だが、現時点ではトッテナムが最も具体的な交渉を進めており、選手本人の意向もロンドン行きに傾いていることから、他クラブが逆転する可能性は低いと見られている。
個人的な見解
今回のヴラホヴィッチ獲得レースは、トッテナムにとってクラブの未来を決定づける一手になると感じている。
ケイン退団後、クラブは「新たな象徴」を探し続けてきたが、ヴラホヴィッチはその役割を担える数少ない存在と言える。
25歳という年齢は、即戦力でありながら長期的な投資としても理想的で、クラブの野心を体現する補強になるだろう。
ただし、ユヴェントスでの数年間は必ずしも順風満帆ではなかった。戦術的な不一致や怪我の影響もあり、期待されたほどの爆発力を見せられなかったのも事実。
しかし、プレミアリーグという新たな舞台で、攻撃的なスタイルを持つトッテナムに加わることで、彼の潜在能力が解き放たれる可能性は十分にある。
この移籍が実現すればトッテナムにとって「ケイン後時代」の象徴的な一手になるが、ヴラホヴィッチがロンドンの地で真のエースへと成長できるかどうか、その答えは2026年に向けた数か月で明らかになるだろう。