リヴァプールの補強戦略において最も注目を集めているのが、ボーンマスのアントワーヌ・セメニョだ。英『The i Paper』の報道によれば、クラブは1月の移籍市場で彼の契約解除条項を利用する可能性を真剣に検討している。
25歳のガーナ代表ウインガーは今季プレミアリーグで9試合6得点3アシストという圧倒的な数字を残し、チームを4位に押し上げる原動力となっている。
リヴァプールが動きを加速させる背景には、モハメド・サラーの不振がある。開幕から9試合でわずか2得点にとどまり、かつての爆発力を欠いている。さらに、サラーは年齢的なピークを過ぎつつあり、クラブは長期的な右サイドの再構築を迫られている。セメニョはその穴を埋めるだけでなく、新たな象徴となり得る存在として浮上しているのだ。
セメニョのプレースタイルとリヴァプールへの適合性
セメニョの魅力は、単なるスピードや突破力にとどまらない。彼は縦への推進力を武器に相手ディフェンスを切り裂きつつ、中央に流れてフィニッシュに絡む柔軟性を持つ。今季のデータでは1試合平均3.2回のドリブル成功、2.1本のキーパスを記録しており、得点力と創造性を兼ね備えた万能型ウインガーであることが証明されている。
リヴァプールの戦術において、右サイドは依然としてサラーの聖域だが、彼の不調と年齢的な衰えを考慮すれば、競争を促す存在が不可欠。
セメニョはハイプレスを厭わない献身性も備えており、アルネ・スロットの哲学に自然に溶け込むだろう。さらに、リヴァプールは夏にルイス・ディアスやダルウィン・ヌニェスを放出し、攻撃陣の再編を進めている。セメニョの加入は、その流れを完成させるピースとなる可能性が高い。
契約解除条項と移籍市場の駆け引き
セメニョは夏にボーンマスと2030年までの新契約を結んだが、その際に契約解除条項が盛り込まれたとされる。具体的な金額は非公開ながら、昨夏の時点で7500万ポンド前後と報じられており、今季の活躍を考えればさらに高額になる可能性もある。リヴァプールはプレミアリーグのPSR（収益性と持続可能性規則）の範囲内で再投資可能な余地を残しており、財政的にも動ける立場にある。
ただし、ライバルは多い。アーセナル、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・ユナイテッドといった強豪が関心を寄せており、争奪戦は避けられない。ボーンマスとしてもシーズン途中での放出は戦力ダウンに直結するため、最低でも夏までは引き留めたいのが本音だろう。
個人的な見解
セメニョの獲得は、リヴァプールにとって最近の不振をカバーする人材になり得る。
サラーの後継者探しは数年来の課題であり、これまで数多くの名前が浮上しては消えていった。その中で、プレミアリーグで既に結果を残し、かつ25歳という成熟期に差し掛かるセメニョは、リスクとリターンのバランスが取れた選択肢と言える。
一方で、7500万ポンドという評価額は決して軽い数字ではない。リヴァプールが本当に動くのであれば、クラブの未来を託す覚悟が求められる。
個人的には、セメニョのハードワークと爆発力はクロップのフットボールに見事に噛み合うと考えており、もし実現すればアンフィールドに新たな熱狂をもたらすだろう。
サラーの時代が終わりを迎えつつある今、次の象徴を見つけることができるかどうか。その答えが、この冬の移籍市場で明らかになるはずだ。