ミュンヘンの一室で交わされた静かな会話が、欧州サッカーの守備戦略を根底から揺さぶろうとしている。バイエルン・ミュンヘンのスポーツディレクター、マックス・エベールが、マルク・グエヒの代理人ゴードン・スティピッチと接触したという報道が『Sky Germany』のフロリアン・プレッテンベルクから飛び出した。
🚨🔴 EXCL | In recent days, there has been a meeting in Munich between Max Eberl and Gordon Stipic, the top agent of Marc #Guéhi.
— Florian Plettenberg (@Plettigoal) October 23, 2025
FC Bayern are fully involved in the race, as Guéhi is set to leave Crystal Palace on a free transfer. Real Madrid and Liverpool are also in the… pic.twitter.com/mIPvGQt8dL
契約満了を目前に控えたイングランド代表センターバックを巡り、リヴァプール、レアル・マドリード、そしてバイエルンが水面下で激しく動いている。
グエヒは現在25歳。クリスタル・パレスで主軸を担う彼は、空中戦の強さと対人守備の粘り強さを兼ね備えた現代型CBだ。プレミアリーグでの経験を通じて、強度の高い試合に慣れており、ライン統率力も年々向上。そんな彼が、2026年夏に契約満了を迎える。
この事実が、欧州のトップクラブにとって、フリーで獲得可能な即戦力という魅力的な条件となっている。
バイエルンの動きは“守備再編”の狼煙か
バイエルンがゲエヒに熱視線を送る背景には、守備陣の再編という明確な意図がある。現在、ダヨ・ウパメカノの契約延長交渉は停滞しており、キム・ミンジェには国外クラブからの関心が高まっている。仮に両者のいずれかが退団となれば、即戦力のセンターバックが必要になるのは明白。
エベールは、グエヒとニコ・シュロッターベックを優先ターゲットとしてリストアップ。特にグエヒは、プレミアリーグでの実績に加え、冷静な判断力とビルドアップ能力を兼ね備えており、バイエルンの後方からの組み立てにおいて理想的なピースとなる。彼のパス成功率は今季も85％を超えており、ショートレンジでの展開力はブンデスリーガのテンポにも適応可能。
さらに、バイエルンは2025年のチャンピオンズリーグで守備の脆さを露呈しており、グエヒのような対人に強く、かつラインコントロールに長けたCBは喉から手が出るほど欲しい存在。ミュンヘンでの代理人との会談は、まさにその布石だった。
リヴァプールとレアル・マドリードの“静かな攻防”
リヴァプールは、2025年夏にグエヒ獲得に向けて3500万ポンドのオファーを提示していたが、クリスタル・パレスが代替選手を見つけられず、交渉は決裂。ユルゲン・クロップ退任後のアルネ・スロット体制下で、守備陣の再構築が急務となっているリヴァプールにとって、グエヒは理想的な補強候補だった。
現在のリヴァプールは、フィルジル・ファン・ダイクの年齢的な衰えと、イブラヒマ・コナテの退団リスクを抱えており、安定した守備の軸を求めている。
グエヒはその条件を満たすだけでなく、プレミアリーグでの経験があるため、適応期間も短く済む。だが、契約満了が近づくにつれ、国外クラブに対する優先交渉権が発生するため、リヴァプールは再び金銭を積む必要がある。それがゲエヒ獲得の障壁となる可能性は否定できない。
一方、レアル・マドリードも静かに動いている。ダビド・アラバやアントニオ・リュディガーの後継者探しに着手しており、グエヒを“無償で獲得可能な即戦力”としてリストアップしている。
とはいえ、スペイン語圏への適応や、ラ・リーガ特有の戦術的要求にフィットするかは未知数。レアルは若手育成と即戦力のバランスを重視しており、グエヒがその中でどのような役割を担えるかは、今後の交渉次第だ。
グエヒのプレースタイルと“欧州型CB”としての価値
マルク・グエヒの最大の特徴は、状況判断の速さとポジショニングの正確さにある。相手FWとの距離感を常に保ち、無理なチャレンジを避けることで、ファウルの少ないクリーンな守備を実現している。今季のプレミアリーグでは、1試合平均1.8回のインターセプトを記録しており、これはリーグでも上位に位置する。
また、彼は空中戦にも強く、セットプレー時の得点源としても機能する。2024-25シーズンでは、クリスタル・パレスで3得点を記録しており、そのうち2点はコーナーキックからのヘッド。守備だけでなく、攻撃面でも貢献できるCBとしての価値は高い。
さらに、グエヒはリーダーシップにも優れており、若手選手とのコミュニケーション能力にも定評がある。これは、バイエルンやリヴァプールのような多国籍クラブにおいて、ロッカールームの安定にも寄与する要素と言える。
個人的な見解
マルク・グエヒの争奪戦は、欧州サッカーにおける契約戦略の進化を示している。
かつては移籍金が交渉の主軸だったが、今や契約満了という制度を巧みに利用するクラブが増えている。バイエルンの動きは、その最前線に立つものだ。エベールは、金額ではなくタイミングと交渉力で勝負を仕掛けている。
個人的には、グエヒがバイエルンに移籍する可能性が最も高いと見ている。彼のプレースタイルはブンデスリーガに適しており、ハリー・ケインやルイス・ディアスといった攻撃陣との連携もスムーズに進むはずだ。
その場合はリヴァプールにとって痛恨となるが、彼らが次に誰をターゲットにするのかも注目だ。グエヒの去就は、2026年の欧州サッカー地図を塗り替える可能性すら秘めている。