ナポリの夜空に轟いたボレーシュートが、欧州の移籍市場を再び熱くしている。2025年10月25日、セリエA第8節・インテル戦。スコット・マクトミネイが放った一撃は、ただの追加点ではなかった。ナポリの首位浮上を決定づけ、そして彼自身の価値を再定義する象徴的なゴールとなった。
英『TEAMtalk』によると、トッテナム、ニューカッスル、そしてバルセロナが、このスコットランド代表MFの獲得に本腰を入れている。マンチェスター・ユナイテッドで構想外となり、2024年夏にナポリへ移籍した男が、わずか1年で欧州の注目株へと返り咲いたのだ。
トッテナム、ニューカッスル、バルセロナが狙う“ナポリの心臓”
トッテナムのトーマス・フランク監督は、マクトミネイのようなフィジカルと推進力を兼ね備えた中盤の補強を強く望んでいる。現有戦力ではボール奪取後の展開力に課題があり、マクトミネイの縦への推進力とゴール前での冷静さは、まさに欲しかったピースだ。
ニューカッスルのエディ・ハウ監督もまた、彼のプレミアリーグ経験とリーダーシップに注目している。ブルーノ・ギマランイスとのコンビネーションは、攻守両面でのバランスを高め、トップ4争いにおいて大きな武器となる。
一方、バルセロナは異なる視点から彼を評価している。ペドリやガビといった技巧派MFが揃う中で、マクトミネイのようなフィジカルと守備力を持つ選手は貴重な存在。シャビ監督は、彼を“中盤の潤滑油”としてではなく、戦術の軸として構想しているという。
ナポリでの覚醒と、ピッチ外の葛藤
2024年夏、2100万ポンドという控えめな移籍金でナポリに加入したマクトミネイは、加入初年度からセリエA制覇に貢献。リーグ戦12得点を挙げ、セリエA最優秀選手に選出された。2025年10月現在もその勢いは衰えず、インテル戦では豪快なボレーで勝利を引き寄せた。
だが、彼の進化は数字だけでは語れない。中盤の底から前線までをカバーする運動量、空中戦の強さ、そして試合の流れを読む判断力。これらが融合し、ナポリの心臓として機能している。
一方で、イタリアでの生活における過剰な熱狂に戸惑いを見せているという報道もある。ナポリの街では英雄として扱われるがゆえに、日常生活にまでファンの視線が及ぶ。そのストレスが、プレミア復帰の可能性を後押しする要因となるかもしれない。
ナポリは当然ながら、マクトミネイの流出を阻止すべく動いている。クラブは2026年1月にも契約延長交渉を開始し、2030年までの長期契約と高額な契約解除条項の設定を目指しているという。アントニオ・コンテ監督も、彼をチームの中核と位置づけており、代替案は考えていない。
しかし、ここにきてケヴィン・デ・ブライネの長期離脱というアクシデントが発生。中盤の構成を再考せざるを得ない状況で、マクトミネイの負担はさらに増すことになる。これが彼の去就にどう影響するかは、今後のパフォーマンスとクラブの対応次第だ。
プレミアリーグの舞台で再び脚光を浴びるか、それともナポリでの“神話”をさらに深めるか。選択の時は刻一刻と迫っている。
個人的な見解
スコット・マクトミネイのキャリアは、まさに逆境を力に変えるという言葉を体現している。
マンチェスター・ユナイテッドでの晩年、彼はベンチを温める日々が続き、ファンからも評価が割れていた。しかし、ナポリでの彼は別人だ。プレースタイルに大きな変化があったわけではない。だが、信頼と役割が与えられたことで、彼の本質が解き放たれた。
特筆すべきは、試合を読む力。ボールがどこにこぼれるか、相手がどこにパスを出すか、その予測精度は驚異的。
さらに、ゴール前での落ち着きと決定力は、もはやストライカー顔負け。こうした総合力が、彼を“ただの中盤の潰し屋”から、“試合を決める男”へと変貌させた。
来夏、彼がどのユニフォームを着ているかは分からない。ただ一つ確かなのは、彼がどこに行こうとも、そのクラブの“魂”になれるだけの資質を持っているということだ。
ナポリに残るのか、プレミアに戻るのか、それともバルセロナで新たな挑戦を選ぶのか。マクトミネイの決断は、2026年の欧州サッカー地図を大きく塗り替える可能性を秘めている。
