リヴァプールが未来を見据えた補強戦略を進めている。その中心に浮上しているのが、ブライトン所属のガンビア代表ウィンガー、ヤンクバ・ミンテだ。
彼を巡ってはリヴァプールとマンチェスター・ユナイテッドが獲得レースを繰り広げていると報じられており、移籍金は3000万ポンド規模になる可能性がある。一方で、海外メディア『Footy-Africa』はリヴァプールが将来的に1億ポンド超を投じる準備があるとも伝えており、評価額には幅があるものの、サラーの後継者として真剣に考えていることは間違いない。
ヤンクバ・ミンテの成長曲線とスロットの信頼
ヤンクバ・ミンテは2004年生まれの21歳。デンマークのオーデンセで頭角を現し、ニューカッスルに移籍後、フェイエノールトへレンタルされた。ここでアルネ・スロット監督の指導を受け、27試合10得点という結果を残したことが、彼のキャリアを大きく押し上げた。
2024年夏にブライトンへ完全移籍すると、プレミアリーグで32試合6得点を記録。2025年シーズンも序盤から主力として起用され、リヴァプール戦では堂々としたプレーを披露している。特筆すべきはスプリント能力で、欧州5大リーグのウィンガーの中でもトップクラスの走行距離とスプリント回数を誇る。
スロットはかつて「彼は1時間で他の選手が2試合かけて走る距離を走った」と語っており、その爆発的な運動量と自己肯定感の高さを評価している。リヴァプールが彼を追い続ける理由のひとつは、監督自身がその潜在能力を熟知しているからだ。
サラーの後継者としてのリアルな評価
ただし、ミンテの課題も明確。キャリア通算101試合で23得点という数字は、サラーの圧倒的な得点力と比較すると見劣りする。サラーはリヴァプールで8シーズン連続23得点以上を記録しており、その壁は極めて高い。
しかし、リヴァプールの攻撃スタイルは変化している。かつてはサラーの得点力に依存していたが、現在はフロリアン・ヴィルツやアレクサンデル・イサクらを中心に、より流動的で多角的な攻撃を展開している。
ミンテの強みは、得点力よりもスプリントと守備貢献、そしてボールキャリー能力にある。サラーのコピーを探すのではなく、新しい右サイドの形を築くことこそが、クラブの狙いだろう。
さらに、ミンテ自身も大舞台を恐れないメンタルを持っている。2025年5月のインタビューでは「リヴァプールはチャンピオンだが、我々は勝つために戦う」と語り、強豪相手にも臆さない姿勢を示した。こうした気質は、アンフィールドの熱狂に適応するために不可欠だ。
移籍市場での駆け引きと今後の展望
現時点で正式なオファーは出されていないが、リヴァプールとユナイテッドが競合していることは確かだ。ニューカッスルが所有権を持つ選手であるため、ブライトンとの契約構造や将来的な売却益分配が交渉の焦点になるとみられる。
また、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)やプレミアリーグのP&Sルールを考慮すると、ニューカッスルが資金調達のために売却を検討する可能性もある。その場合、リヴァプールがスロットの信頼を背景に優位に立つか、それともユナイテッドが資金力で押し切るか、冬の移籍市場に向けて注目が集まる。
個人的な見解
ヤンクバ・ミンテの獲得は、リヴァプールにとって「サラーの後継者探し」という単純なテーマではない。むしろ、スロットが描く新しい攻撃スタイルを体現する存在としての意味合いが強い。
サラーのように毎シーズン20得点以上を保証できる選手ではないが、走力と守備、そしてチーム全体を押し上げるエネルギーは、今のリヴァプールに欠けていた要素と言える。
個人的には、リヴァプールがミンテに100億円超を投じる可能性は現実的ではないと考える。
むしろ3000万〜5000万ポンドのレンジで獲得できるなら、将来性を見込んだ投資として理にかなっている。
サラーの後継者というよりも、新しいリヴァプールの右サイドを築く“進化の象徴”として、彼がアンフィールドに立つ姿を見てみたい。
