ブレントフォードは明確なメッセージを発している。23歳のドイツ代表フォワード、ケヴィン・シャーデは非売品であり、いかなるオファーも受け付けないという強硬姿勢だ。
英『TBR Football』によれば、トッテナムやアストン・ヴィラが熱心に動向を追っているほか、アトレティコ・マドリード、ボルシア・ドルトムント、RBライプツィヒといった欧州の強豪も関心を寄せている。しかし、ブレントフォードは夏にブライアン・エムベウモやヨアン・ウィサといった主力を失った経験から、これ以上の流出を断固として阻止する構えを見せている。
シャーデは今季プレミアリーグで12試合に出場し、2ゴール1アシストを記録。数字だけを見れば突出してはいないが、リヴァプール戦での決勝点やチェルシー戦での先制弾など、勝負を決定づける場面で結果を残している点が際立つ。
特に10月末のリヴァプール戦では、ミッケル・ダムスゴーのスルーパスに抜け出し、冷静にネットを揺らした。ブレントフォードが3-2で王者を撃破した試合の象徴的な存在となり、スタジアム全体を熱狂に包んだ。
昨季は公式戦で12得点を挙げ、チームの攻撃を牽引。今季もイゴール・チアゴとの連携が深まり、前線の流動性を高めている。ブレントフォードのキース・アンドリュース監督も「シャーデはより中心的な役割を担う準備が整っている」と語り、クラブの未来を背負う存在として期待を寄せている。
ケヴィン・シャーデのプレースタイルと戦術的価値
シャーデの最大の強みは、縦への推進力と爆発的なスプリント能力だ。相手最終ラインの背後を突く動きは、かつてのウィサやエムベウモの役割を継承しつつ、より洗練された形で進化している。
特に今季は、サイドから中央へ切れ込むドリブルと、ゴール前での冷静なフィニッシュが際立つ。xG(期待得点)と実際の得点数がほぼ一致していることからも、決定機を確実に仕留める安定感が見て取れる。
さらに、シャーデは守備面でも貢献度が高い。前線からのプレスで相手ビルドアップを妨害し、ボール奪取後の切り替えで一気にゴールへ迫る。ブレントフォードの戦術は、ロングスローや空中戦といった伝統的な武器に加え、シャーデのスピードを活かしたカウンターが大きな柱となっている。リヴァプール戦での勝利は、その戦術が見事に機能した証拠だった。
ブレントフォードは昨夏、エムベウモをマンチェスター・ユナイテッドへ、ウィサをニューカッスルへと放出し、攻撃陣の再構築を迫られた。
だからこそ、シャーデを残すことはクラブの競争力を維持する上で不可欠だ。彼の存在は単なる得点源にとどまらず、チーム全体の戦術的バランスを支える軸となっている。
個人的な見解
ケヴィン・シャーデを巡る移籍報道は、ブレントフォードがプレミアリーグで確固たる地位を築きつつあることを示す象徴的な出来事だ。
かつては有望株を売却して資金を得ることがクラブの宿命だったが、今や「売らない」という選択肢を堂々と取れるようになった。これはクラブの経営基盤が安定し、競技面でも中位以上を狙える力を備えたことの証明となる。
個人的には、シャーデが今すぐにステップアップを果たす必要はないと考える。確かにトッテナムやアトレティコといったクラブの誘いは魅力的だが、ブレントフォードで主軸としてプレーし続けることで、彼はより完成度の高い選手へと成長できるだろう。
スピードと決定力に加え、プレミアリーグでの経験を積み重ねることが、ドイツ代表での地位を確固たるものにするはずだ。ブレントフォードが彼を守り抜く姿勢は、クラブの未来を左右する大きな決断であり、その選択が正しかったと証明される日はそう遠くない。
