ヴィトール・ロケの名前が再び欧州移籍市場の中心に浮上している。海外メディア『Sports Illustrated』の報道によれば、マンチェスター・ユナイテッドがパルメイラスで躍動する20歳のストライカーに5000万ユーロのオファーを準備しているという。
バルセロナでの苦い経験を経て母国に戻ったロケは、パルメイラスで完全に息を吹き返した。2025年シーズンは公式戦50試合で17ゴール5アシストを記録し、コパ・リベルタドーレス決勝進出の原動力となった。
その爆発的なスピードとゴール前での冷静さは、欧州のスカウト陣を再び惹きつけている。特にユナイテッドは、前線の補強が急務であり、彼の存在を “未来の軸” として真剣に検討している。
ユナイテッドの事情は明確。ジョシュア・ザークツィーは冬の移籍市場で退団が濃厚とされ、ラズムス・ホイルンドもナポリでのローン移籍が完全移籍に切り替わる可能性が高い。
ベンヤミン・シェシュコ一人に頼る構図はリスクが大きく、クラブは新たなストライカーを必要としている。ロケはその条件を満たすだけでなく、将来的にチームのアイコンとなり得るポテンシャルを秘めている。
バルセロナの利益とプレミアリーグでの適応課題
この移籍話には、バルセロナも深く関わっている。彼らはロケの将来移籍に関して20%の権利を保持しており、もし5000万ユーロの移籍が成立すれば1000万ユーロがクラブに入る。財政難に直面するカタルーニャの巨人にとって、この臨時収入は極めて重要。
皮肉なことに、かつて「レヴァンドフスキの後継者」と期待されながら放出された若者が、別のクラブを経由して彼らの財政を助ける可能性がある。
ただし、ロケにとってプレミアリーグは新たな試練となる。ブラジル国内リーグやラ・リーガと比べ、プレミアはフィジカルとスピードの要求水準が格段に高い。過去にはアレクサンドレ・パトやガブリエル・バルボーザのように適応に苦しんだ南米ストライカーも多い。
一方で、彼のプレースタイルはユナイテッドにとって理想的。爆発的な加速力で裏へ抜け出す動きはもちろん、ポストプレーや守備への献身も兼ね備えている。パルメイラスでは、ゴールゲッターにとどまらず、攻撃全体を活性化させる存在として機能しており、これはプレミアの激しい試合展開においても大きな武器となる。
さらに、ロケは精神的なタフさを備えている。バルセロナでの失敗を糧にし、母国で再び自信を取り戻した姿は、若手選手にありがちな脆さを感じさせない。むしろ逆境を跳ね返す力を持つ彼だからこそ、ユナイテッドが5000万ユーロという大金を投じる価値があると判断しているのだ。
個人的な見解
ユナイテッドにとっては、前線の再構築を象徴する存在であり、バルセロナにとっては過去の投資が思わぬ形で回収される可能性を秘めている。欧州サッカーの複雑な力学が凝縮された案件だと感じる。
個人的には、ロケがプレミアリーグでどこまで通用するかに強い興味を抱いている。彼の爆発力と献身性は、オールド・トラフォードの熱狂的な雰囲気にぴったりだ。
もしこの移籍が実現すれば、ユナイテッドの攻撃は新たな次元へと進化するだろう。逆に、適応に失敗すれば再びキャリアの岐路に立たされることになる。だが、彼がこれまで見せてきた復活力を考えれば、挑戦を恐れる理由はない。
ユナイテッドがロケに賭けるかどうかは、クラブの未来を左右する決断になる。5000万ユーロという金額はリスクを伴うが、それ以上に夢を託す価値がある。私は、この移籍が実現すれば、プレミアリーグに新たな物語が刻まれると確信している。
