セリエAの名門ACミランがウェストハム・ユナイテッド所属のドイツ代表ストライカー、ニクラス・フュルクルクの獲得に本格的に動いている。イタリアメディア『Tutto Mercato Web』によれば、ミランは冬の移籍市場で彼を迎え入れる準備を進めており、ウェストハム側も放出に前向きだ。
昨夏にボルシア・ドルトムントから加入したフュルクルクは、移籍金2700万ポンドという高額投資にもかかわらず、プレミアリーグでの適応に苦しみ続けている。ここまで公式戦27試合でわずか3得点、さらに度重なる負傷で戦列を離れることが多く、クラブの期待に応えられていない。
ウェストハムは現在、降格圏脱出を目指して必死の戦いを続けている。直近のバーンリー戦やニューカッスル戦で勝利を収めたものの、依然として18位に位置し、残留争いの渦中にある。
ヌーノ・エスピリト・サント新監督はチーム再建を急いでおり、得点力不足を補うために新たなストライカー獲得を最優先課題としている。そのため、フュルクルクの放出は資金確保と戦力再編の両面で合理的な選択となる。
フュルクルクのキャリア再生とミランの狙い
フュルクルク自身も新天地を望んでいる。代理人は「この移籍は期待通りには進まなかった」と認め、冬の移籍で環境を変えることが最善だと語っている。
プレミアリーグの激しいフィジカルとスピードに適応できなかったものの、ブンデスリーガでは得点力を発揮してきた実績がある。特にペナルティエリア内でのポジショニングと空中戦の強さは、セリエAの戦術的環境においても有効に機能する可能性が高い。
ACミランは現在、ラファエル・レオンといった主力に依存する攻撃陣に厚みを加えたいと考えている。レオンの突破力を最大限に活かすためには、ターゲットマンとして機能するストライカーの存在が不可欠。
フュルクルクはその役割を担える選手であり、経験豊富なドイツ代表としてチームに安定感をもたらす可能性がある。さらに、移籍金が比較的抑えられる見込みであることもミランにとって魅力的と言える。
一方で、フュルクルクの加入は即座に得点力を保証するものではない。彼の課題はコンディション維持とフィットネスであり、セリエAの守備的な環境に適応できるかどうかが鍵となる。
だが、ミランが彼を「即戦力」ではなく「戦術的オプション」として捉えるならば、リスクは大幅に軽減される。試合終盤でのパワープレーや、控えとしての起用は現実的なシナリオだ。
個人的な見解
フュルクルクのプレミア挑戦は、ブンデスリーガでの成功が必ずしも他リーグで通用するわけではないことを示す典型例。
だが、彼の持つフィジカルと経験はセリエAでは依然として価値がある。ミランが彼を獲得すれば、即座に主力として活躍する保証はないものの、戦術的オプションとしては非常に有効だと考える。特に試合終盤でのパワープレーはチームに新たな側面を付与する。
ウェストハムにとっても、この移籍は前向きな選択だ。残留を目指すクラブにとって、得点力不足のストライカーを抱え続ける余裕はない。
資金を確保し、新たなストライカーを迎えることが生き残りの鍵となる。フュルクルクのキャリアにとっても、クラブにとっても、この移籍は「別れが新たな始まり」となる可能性が高い。
冬の市場でこの動きが実現すれば、両者にとって最良のシナリオとなるだろう。