ガブリエウ・ジェズスの去就は再び注目を集めている。1月のFAカップで負った前十字靭帯断裂から長期離脱を余儀なくされ、約10か月のリハビリを経てようやく全体練習に復帰した。ブラジル代表として64キャップを誇るストライカーは、アーセナル加入後96試合で26ゴールを記録しているが、負傷とコンディション不良により序列を落としていた。
今夏にはスポルティングからヴィクトル・ギョケレスが加入し、さらにカイ・ハフェルツも前線でのオプションとして控える。競争が激化する中で、エヴァートンなど複数クラブが獲得に関心を示したが、ミケル・アルテタは「ジェズスを冬に手放す考えはない」と明言。
英『The Daily Briefing』の報道によれば、アルテタは彼を依然として戦力の一部と見なし、復帰後の出場機会を与える方針を貫いている。
ジェズス自身もブラジルのパルメイラスへの帰還願望を隠していない。しかし彼は「今アーセナルを離れるのは筋が通らない」と語り、クラブがリハビリを支えてくれたことへの感謝を強調している。この発言は、移籍の可能性を完全に否定するものではないが、少なくとも今季中の退団は現実的ではない。
ガブリエウ・ジェズスのプレースタイルと復帰の意味
ジェズスの価値はゴール数だけでは測れない。前線での守備的貢献、相手ディフェンダーを翻弄する動き、そして味方を生かす柔軟なポジショニング。彼がピッチに立つことで、ブカヨ・サカやガブリエウ・マルティネッリの突破力はさらに輝きを増す。アルテタが彼を残留させる理由は、こうした戦術的多様性にある。
ACLからの復帰は容易ではない。多くの選手が爆発的なスプリントや鋭い切り返しを取り戻すまでに時間を要する。ジェズスも例外ではなく、まずはU-21の試合で実戦感覚を取り戻す予定だと報じられている。しかし、彼が完全復活すれば、アーセナルの攻撃は再び厚みを増し、プレミアリーグ首位を走るチームにさらなる推進力を与えるだろう。
また、ジェズスはマンチェスター・シティ時代に数々のタイトルを経験しており、勝者のメンタリティを持ち込める存在だ。若手主体のアーセナルにとって、この経験値は極めて重要であり、単なる戦力補強以上の意味を持つ。彼の復帰は、チーム全体の精神的支柱としても作用する。
移籍市場とアーセナルの戦略
アーセナルは今季、プレミアリーグでマンチェスター・シティを抑えて首位に立っている。この状況で主力を放出するリスクを取る理由はない。
アルテタは「大きな補強よりも既存戦力の結束」を選び、冬の移籍市場では大規模な動きを避ける見込み。ジェズス残留はその象徴的な決断であり、クラブが安定と継続性を重視していることを示している。
ただし、ジェズスの契約は2027年まで残っているものの、来年1月には残り18か月となる。負傷歴や序列の変化を考えれば、延長交渉は簡単ではない。今季後半戦で復活を遂げられるかどうかが、彼の未来を大きく左右する。もし結果を残せなければ、来夏の移籍市場でパルメイラス復帰が現実味を帯びる可能性もある。
個人的な見解
ジェズスの残留は、アルテタの哲学を体現している。短期的な資金調達や即効性の補強に走るのではなく、クラブの結束と戦術的多様性を優先する姿勢は、アーセナルが本気でタイトルを狙っている証拠だ。
ジェズスが完全復帰すれば、前線の流動性はさらに高まり、サカやマルティネッリとの連携は相手守備陣にとって悪夢となるだろう。
一方で、ジェズス自身がパルメイラスへの帰還を望んでいる事実は無視できない。彼のキャリアにおける「最後の章」がブラジルで描かれる可能性は高い。
しかし、それは今ではない。アーセナルがプレミアリーグ制覇を目指すこの瞬間、ジェズスはまだ必要とされている。彼が復帰後にどれだけ存在感を示せるか。それが、クラブと選手双方の未来を決定づける最大の要素になると私は考える。