カリム・アデイェミの未来は、今やドルトムントの内部だけでなく、ヨーロッパ全体の移籍市場を揺さぶる火種となっている。23歳の快足ウインガーは、ニコ・コバチ監督との度重なる衝突によって立場を失いかけており、ドイツ紙『BILD』によれば、その隙を突こうとマンチェスター・ユナイテッドが動き出した。ジョルジュ・メンデスという世界的代理人の存在が、この移籍劇をさらに複雑かつ刺激的なものにしている。
ドルトムントでのアデイェミの現状と亀裂
アデイェミは2022年にレッドブル・ザルツブルクからドルトムントへ加入し、瞬発力と縦への突破力で注目を浴びた。だが2025年11月現在、彼の立場は不安定だ。先月のケルン戦で交代時にベンチへボトルを投げつけた行為が批判を浴び、続くハンブルク戦でも精彩を欠いたプレーに対してコバチ監督が露骨に苛立ちを示した。この一連の出来事は、クラブと選手の間に深い溝を生んでいる。
契約面でも問題は山積み。アデイェミの現行契約は残り1年半で満了するが、延長交渉は進展していない。メンデスは8000万ユーロの解除条項を盛り込む新契約を望んでいるが、ドルトムントは過去のハーランド退団の経験から、解除条項を避ける姿勢を崩していない。結果として、クラブは延長よりも売却を現実的な選択肢として検討している。
数字面でもアデイェミの存在感は揺らいでいる。今季ここまで公式戦14試合で3得点5アシスト。決して悪い数字ではないが、期待された爆発力には届いていない。ドルトムントの攻撃陣において、彼の役割は曖昧になりつつある。
マンチェスター・ユナイテッドが狙う理由と戦術的な適合性
マンチェスター・ユナイテッドがアデイェミに目を向けるのは、チーム構造の再編に直結する動きだ。右サイドの突破力不足は顕著で、ブライアン・ムベウモが好調と言えども、ポジションを争える選手の存在は喉から手が出るほどに欲しいところ。アデイェミの持つ爆発的なスピードと裏への抜け出しは、プレミアリーグの激しい守備を切り裂く武器となる。
ルベン・アモリム新監督の下で、ユナイテッドはトランジションを重視する戦術を強化している。守備から攻撃への切り替えを一瞬で行うスタイルにおいて、アデイェミの特性は完璧にフィットする。ドルトムントで培ったカウンター局面の鋭さを武器に、プレミアの舞台でも違いを生み出せる可能性を秘めている。
さらに、ユナイテッドはメンデスとの関係を深めており、代理人から直接アデイェミの状況を知らされたとされる。このネットワークは交渉を有利に進める要素となり、クラブが移籍市場で主導権を握るための重要なカードとなる。
個人的な見解
アデイェミの移籍話は、もはや噂の域を超えて現実味を帯びている。ドルトムントが契約延長に固執しない限り、来年1月の移籍市場で大きな動きが起こる可能性は高い。
ユナイテッドがその隙を突く構図は、過去の補強戦略とも重なる。メンデスの存在が交渉を後押しするのは間違いなく、クラブにとっては理想的なタイミングと言える。
私自身は、アデイェミがプレミアリーグで輝く姿を見たいと強く思う。彼のスピードはリーグ屈指の武器となり、ユナイテッドの攻撃に新たな次元を加えるだろう。
ただし、課題はフィニッシュの精度と安定感だ。ドルトムントでも決定力不足が指摘されており、プレミアの舞台で成功するには冷静さを磨く必要がある。
もしそれを克服できれば、ユナイテッドの右サイドは一気に脅威となり、クラブ再建の象徴的な補強となるはずだ。
そして何より、この移籍劇はユナイテッドが再び欧州の頂点を目指すための試金石になる。アデイェミがその挑戦の中心に立つ未来は、決して遠くない。