スタジアムに響く歓声を取り戻すため、トッテナムが次なる一手を準備している。ターゲットはボーンマスのアントワーヌ・セメニョ。
昨夏に2030年までの長期契約を結んだばかりの25歳のガーナ代表FWだが、英『Sky Sports』の報道によれば、トッテナムは冬の移籍市場で左ウイングの補強を最優先課題とし、セメニョをリストの最上位に据えている。スパーズが8000万ユーロの巨額オファーを用意していると伝えており、その本気度は疑いようがない。
セメニョは今季プレミアリーグで11試合6得点3アシストと、数字以上に存在感を放っている。ボーンマスの攻撃を牽引し、ペップ・グアルディオラが称賛するほどの爆発力を備えた選手。彼の推進力とフィニッシュ精度は、ソン・フンミン退団後に得点力不足に悩むトッテナムにとって、まさに喉から手が出るほど欲しい資質である。
セメニョ移籍の現実性とトッテナムの戦術的課題
ただし、移籍は容易ではない。セメニョ自身は「退団を望んでいない」と強調しており、報道にある退団希望説に苛立ちを示している。
ボーンマスもクラブの象徴的存在を手放す意思はなく、契約延長によって立場を強固にしている。とはいえ、リヴァプールやマンチェスター・シティも関心を寄せる中、市場価値は急騰しており、トッテナムが資金力で勝負を仕掛ける可能性は十分にある。
戦術面では、トーマス・フランク率いるトッテナムが抱える課題は明らか。ソンの退団後、左サイドの突破力と決定力が欠け、ドミニク・ソランケやレンタル加入のランダル・コロ・ムアニも負傷続きで戦力になりきれていない。
セメニョが加われば、縦への推進力とカウンターの鋭さが格段に増し、フランクの戦術に新たなダイナミズムをもたらすだろう。彼のプレースタイルは、既存のモハメド・クドゥスやシャビ・シモンズと補完関係を築き、攻撃の多様性を広げる可能性が高い。
個人的な見解
ソン・フンミンの退団後、攻撃の象徴を失ったスパーズは、再びファンを熱狂させる存在を必要としている。
セメニョはその役割を担える選手だ。彼の爆発的なスピードとゴール前での冷静さは、プレミアリーグのトップクラブでも通用する資質であり、トッテナムの停滞した攻撃を一変させる可能性を秘めている。
ただし、ボーンマスが簡単に手放すとは考えにくい。契約延長直後であり、クラブの象徴的存在を売却するには相応の代償が必要。
8000万ユーロという報道額は現実味を帯びているが、それでも競合クラブとの争奪戦は避けられない。
トッテナムが本気でセメニョを獲得するなら、資金力だけでなく、プロジェクトの魅力を選手に示す必要がある。セメニョが「ここで自分をさらに高められる」と感じる環境を提示できるかどうかが、最終的な決め手になるだろう。