マンチェスター・ユナイテッドが提示した9000万ユーロの巨額オファーは、ベルナベウの空気を揺らすことすらできなかった。フロレンティーノ・ペレスは交渉のテーブルに座ることなく拒絶し、アウレリアン・チュアメニはシャビ・アロンソの戦術において中盤の心臓として機能し続けている。
スペイン紙『Fichajes』によると、ユナイテッドが描いた「カゼミーロの後継者」としての青写真は、スペインの首都で即座に破り捨てられた。
チュアメニの現在地、数字が示す支配力
25歳のフランス代表MFは、今季ラ・リーガで既に15試合に出場。平均タックル成功率は68%、パス成功率は91%を記録し、守備と展開の両面で圧倒的な安定感を誇る。彼が中盤に立つことで、ジュード・ベリンガムやフェデリコ・バルベルデは攻撃的に振る舞う余裕を得ている。シャビ・アロンソは彼をアンカーとして固定し、試合のリズムを掌握させている。
その存在は数字以上に試合の流れを変える。相手の攻撃を寸断し、奪ったボールを前線へ供給する一連の動作は、ベルナベウの観衆を沸かせる。ペレスが彼を「未来の中盤の核」と位置づけるのは、クラブの哲学そのものだ。
レアル・マドリードは過去にクリスティアーノ・ロナウドやカゼミーロといったスターを売却してきた。しかし、それはクラブが次の核を確立した後に限られている。チュアメニはまだその段階にない。むしろ彼を中心に未来を描いている最中であり、ユナイテッドのオファーはその計画を崩すものだった。
財政的にもレアルは安定しており、資金確保のために主力を売却する必要はない。ペレスが交渉に応じなかったのは、クラブの哲学を守るための強硬な意思表示だった。
ユナイテッドの焦燥、中盤再建の必然性
ユナイテッドがチュアメニに執着する理由は明らか。カゼミーロは34歳を迎え、契約延長交渉も難航。サウジアラビアからのオファーが噂される中、彼の未来は不透明。さらに、マヌエル・ウガルテは期待されたほどのインパクトを残せていない。ブルーノ・フェルナンデスの創造性を支える「盾」が不足しているのだ。
昨夏にはブライトンのカルロス・バレバを狙ったが、価格の高騰とクラブの強硬姿勢に阻まれた。ルベン・ネヴェスやジョアン・ゴメスも候補に挙がっているが、契約や移籍交渉の複雑さが壁となっている。その中で、世界トップクラスの守備的MFであるチュアメニは、ユナイテッドにとって理想的な解決策だった。
9000万ユーロという巨額のオファーを拒絶したことは、移籍市場全体に波紋を広げた。ユナイテッドが次にどのターゲットへ向かうのか、他クラブがチュアメニ獲得に挑む可能性があるのか。いずれにせよ、今回の一件はレアルの強硬姿勢を改めて示すものとなった。
ペレスは交渉に応じる気配すら見せなかった。これはクラブの未来像を優先する強烈な意思表示であり、ユナイテッドの挑戦を退ける形となった。
個人的見解
チュアメニの移籍が現実になるには、少なくとも1億ユーロを超えるオファーが必要だと考える。しかし、それ以上に重要なのはタイミングだ。
レアルが彼を手放すのは、クラブが次の中盤の核を確立した後であり、現状ではその準備が整っていない。したがって、ユナイテッドがいくら資金を投じても、今冬に彼を獲得する可能性は極めて低い。
一方で、ユナイテッドの補強戦略には柔軟性が求められる。チュアメニに固執するのではなく、バレバやネヴェスといった現実的なターゲットにシフトする必要がある。
中盤の安定はチーム全体の再建に直結するため、彼らがどの選手を選ぶかは今季の成績を大きく左右するだろう。チュアメニは夢のターゲットであり続けるが、ユナイテッドが現実的な選択を迫られていることは疑いようがない。
