ノースロンドンの冬は冷たい風とともに熱を帯びている。トッテナム・ホットスパーがASモナコのマグネス・アクリウシュ獲得に向けて正式な交渉を開始したと、スペイン紙『Fichajes』が報じている。
昨季リーグ・アンで19ゴール関与を記録し、今季もフランス代表で存在感を示す23歳のアタッカーは、トーマス・フランク体制のスパーズが攻撃陣を刷新する上で欠かせない存在と見られている。
アクリウシュの成長と評価
アクリウシュは2022年にモナコのトップチームへ昇格して以来、着実に階段を駆け上がってきた。昨季はリーグ戦で突破力と冷静なフィニッシュを繰り返し、19ゴール関与という数字を残した。
今季もその勢いは止まらず、フランス代表のワールドカップ予選で途中出場し、攻撃のリズムを変えるプレーを披露した。右サイドを基点にしながらも中央や左にも自在に流れる柔軟性を持ち、攻撃の局面を多彩に彩る。
彼の技術は突破力だけではない。ボールを受ける位置を巧みに変え、相手守備を引き裂く視野の広さ、決定的な場面で冷静に選択できる判断力が際立つ。モナコの攻撃を牽引する存在として定着した今、彼の価値はクラブ内外で急速に高まっている。
トッテナムの補強戦略とアクリウシュの適合性
トッテナムは今季、攻撃陣の創造性不足に苦しんでいる。プレシーズンでジェームズ・マディソンが膝の重傷を負い、さらにデヤン・クルゼフスキも離脱したことで、攻撃の組み立てに大きな空白が生まれた。夏にはモハメド・クドゥス、シャビ・シモンズ、ランダル・コロ・ムアニを獲得したが、シモンズはここまで公式戦14試合でわずか2アシストと期待に応えきれていない。
この状況で、アクリウシュの獲得は攻撃の再構築に直結する。右サイドからの推進力はもちろん、中央でのプレーメイク能力も備える彼は、リチャルリソンとの連携を強化し、攻撃の多様性を広げる存在となる。フランクが志向する流動的な攻撃において、アクリウシュは即座にフィットする可能性が高い。
報道によれば、トッテナムはすでにモナコへ正式な接触を行い、移籍金は約4750万ポンドに達する可能性がある。モナコは過去にもキリアン・エムバペやオーレリアン・チュアメニを高額で売却してきたが、その際もクラブが交渉の主導権を握っていた。今回も同様に、破格のオファーが提示されなければ合意は難しい。
さらに、アクリウシュ自身の意思も重要。フランス代表での地位を固めつつある今、環境を変えるリスクを取るかどうかは本人次第である。プレミアリーグ挑戦はキャリアの大きな飛躍となるが、ワールドカップを控える時期に移籍を選ぶかどうかは微妙な判断を迫られる。
個人的見解
アクリウシュの獲得は、トッテナムにとって攻撃陣の再構築の鍵になり得る。
ソン・フンミンが今夏にチームを離れた中、次世代の攻撃の核を据える必要がある。その役割を担えるのがアクリウシュだ。彼の柔軟性と爆発力は、プレミアリーグの激しい試合展開において大きな武器となる。
また、フランクの戦術哲学においてアクリウシュは即戦力以上の存在になり得る。流動的なポジショニングと高い技術を持つ彼は、スパーズの攻撃を一段階引き上げる可能性を秘めている。
もちろん、移籍金は高騰し、交渉は難航するだろう。しかし、クラブが未来を見据えるならば、この投資は避けられない。アクリウシュがノースロンドンの白いユニフォームに袖を通す瞬間は、スパーズの新時代の幕開けを告げるものになる。
