イングランド代表としても活躍した元ストライカー、ダレン・ベントの発言が、移籍市場に新たな火種を投じている。彼はウェストハム・ユナイテッドがイヴァン・トニー獲得を本気で狙うなら、推定1400万ポンドに及ぶ税金の半分をクラブが肩代わりすべきだと提案した。
トニーは現在サウジアラビアのアル・アハリに所属しているが、イングランドへ2年未満で戻れば巨額の税金が発生する。選手本人にとってもクラブにとっても重すぎる負担であり、移籍交渉の最大の壁となっている。
ベントの発言は、クラブが選手獲得において「移籍金＋給与」だけでなく「税金」という新たな要素を考慮すべきだと強調するものだ。
ウエストハムの補強戦略とトニーの価値
ウェストハムがトニーをターゲットにしている背景には、ニクラス・フュルクルクの後釜問題がある。前線での決定力とポストプレーを兼ね備えたストライカーは、ヌーノ・エスピーリト・サント新監督の戦術に不可欠。
トニーはブレントフォード時代にプレミアリーグで20ゴールを記録し、ペナルティキックの成功率も高い。空中戦の強さと前線でのボールキープ力は、ウェストハムの攻撃を一段階引き上げる可能性を秘めている。
しかし現実は厳しい。アル・アハリはトニーを手放す意思を示しておらず、財政的にも売却の必要性はない。さらにトニー自身も税金問題を理由に、来夏まではイングランド復帰を避ける可能性が高い。
ダレン・ベントの発言が示す移籍市場の新しい現実
ベントの提案は突飛に聞こえるかもしれないが、移籍市場の現実を突いている。クラブが選手獲得のために税金負担を交渉材料にする時代が来るのかもしれない。
1400万ポンドという数字は、移籍金や給与と並んで選手のキャリア選択を左右する要因となり得る。ウェストハムが本気でトニーを獲得するなら、移籍金交渉ではなく「税金を含めた総合的な投資」として考える必要がある。
この視点は、今後の移籍市場においても重要になるだろう。海外でプレーする選手が母国へ戻る際、税制がキャリア選択に影響を与えるケースは増えていく可能性がある。ベントの発言は、その現実を先取りしたものとして注目すべきだろう。
個人的な見解
ダレン・ベントの発言は、移籍市場における「常識」を揺さぶるものだ。クラブが選手獲得のために税金負担を肩代わりするという発想は、従来の枠組みを超えている。
しかし、トニーのように即戦力となるストライカーを獲得するためなら、クラブが大胆な手を打つ可能性は十分にある。ウェストハムがこの提案を現実のものとするなら、移籍市場の新しいモデルケースになるだろう。
個人的には、トニーがプレミアリーグに戻る姿を見たい。彼の得点力と前線での存在感は、ウェストハムだけでなくリーグ全体を活性化させるはずだ。
ただし、現状では来夏以降の復帰が現実的であり、今冬の移籍はほぼ不可能に近い。ベントの発言が単なる挑発に終わるのか、それとも新しい交渉の扉を開くのか。その答えは、クラブの覚悟次第だ。