2025/26シーズンも佳境に入りつつある今、アーセナルの補強戦略が新たな局面を迎えている。クラブは今年3月にアンドレア・ベルタをスポーツディレクターとして迎え入れ、ミケル・アルテタ監督との二人三脚でチーム強化を進めている。その視線の先にいるのが、バイエルン・ミュンヘンで急速に評価を高めている17歳のレナート・カールだ。
カールは今季、ヴィンセント・コンパニの下でトップチームに定着し、ブンデスリーガとチャンピオンズリーグで存在感を放っている。ブンデスリーガでは9試合に出場し2ゴール2アシストを記録。さらにチャンピオンズリーグでは3試合で2ゴールを挙げ、ドイツ国内では「次世代の攻撃の核」として注目を浴びている。
アーセナルはこの才能を逃すまいと、複数回にわたりスカウトを派遣。10月にはクラブ・ブルージュ戦を視察し、カールのプレーを詳細に分析したと報じられている。ドイツ紙『Bild』によると、アルテタとベルタが揃ってバイエルンの17歳MFに関心を示している。
レナート・カールのプレースタイルとアーセナルへの適合性
カールのプレースタイルは、アーセナルの攻撃陣に新たな可能性をもたらす。右ウイングと攻撃的MFを主戦場とし、ドリブルで相手を切り裂く突破力と、ゴール前で冷静に仕留める決定力を兼ね備えている。さらに守備面でも献身的に動き、前線からのプレスに積極的に関与する。
アルテタが構築する戦術は、攻守の切り替えを素早く行い、前線の選手が流動的にポジションを変えることで相手を混乱させるものだ。
カールの柔軟性はそのシステムに自然に溶け込み、ブカヨ・サカやガブリエル・マルティネッリといった既存の主力と並び立つことで、攻撃の厚みを増す。特に、カイ・ハフェルツの起用法が揺れる現状において、カールのような万能型の攻撃手は戦術的な選択肢を広げる存在となる。
また、彼のプレーには若さを感じさせない落ち着きがある。チャンピオンズリーグでのゴールは、プレッシャーのかかる舞台でも冷静に判断できる資質を示しており、アーセナルが求める大舞台で戦える若手の条件を満たしている。
ベルタ体制の補強戦略とカール獲得の意味
ベルタはアトレティコ・マドリード時代に数々の逸材を発掘し、クラブを欧州の強豪へと押し上げた実績を持つ。アーセナルにおいても、即戦力と将来性を両立させる補強を進めており、カールへの関心はその哲学を体現している。
2025年夏の移籍市場では、マルティン・スビメンディを獲得。最前線にはヴィクトル・ギョケレスを迎え入れるなどチーム力を高めており、現時点でプレミアリーグの首位をひた走っている。そして、プレミアリーグでの上位争いを今後も続けるためにも、ドイツの逸材に注目するのも当たり前だろう。
ただし、バイエルンが自ら育てた逸材を手放す可能性は低い。クラブは彼を次世代の中心選手として位置づけており、移籍を実現するには高額なオファーと説得力あるプロジェクトが必要になる。アーセナルがプレミアリーグでの地位をさらに固め、若手にとって魅力的な環境を提示できるかが勝負の分かれ目となる。
個人的な見解
レナート・カールの獲得は、アーセナルにとって未来への投資であると同時に、ベルタ体制の方向性を示すものだと考える。
アルテタが築いてきた戦術的基盤に、ベルタの眼力で選び抜かれた才能が加われば、クラブはさらに進化する。
カールはまだ17歳だが、そのプレーには成熟した冷静さと大胆さが同居している。彼がエミレーツのピッチに立つ姿を想像すると、クラブの未来が鮮やかに描かれる。
しかし現実的には、バイエルンが手放す可能性は極めて低い。アーセナルがどこまで本気で動くかが問われるだろう。
アーセナルが若き才能を引き寄せ、プレミアリーグの頂点を目指す姿勢を示すかどうか、今後の動きに注目したい。