マレスカ監督のラストピース?スタンフォード・ブリッジが渇望するムリージョ

スポンサーリンク
プレミア屈指の守備者争奪戦勃発!アーセナルとバルセロナが狙うフォレストDFムリージョ Chelsea

ロンドンの街路樹が葉を落とし、冷たい風がテムズ川を吹き抜ける季節となっても、スタンフォード・ブリッジの深部にある強化ルームだけは熱帯のような熱気に包まれている。ピッチ上では過密日程との戦いが続いているが、クラブの首脳陣たちはすでに、はるか先の未来を見据えて動き出した。

その視線の先にあるのは、ノッティンガム・フォレストが誇るブラジル産の重戦車23歳DFムリージョだ。英『TEAMtalk』が報じた最新情報は、チェルシーがこの23歳のセンターバックに対し、並々ならぬ執着を見せている事実を白日の下に晒した。

7000万ポンドの攻防戦とノッティンガムの堅牢な意志

チェルシーとムリージョの物語は、今に始まったことではない。記憶に新しい2025年の夏、トッド・ベーリー率いるオーナー陣はこのブラジル人の獲得へ向けて実際に動きを見せた。

しかし、ノッティンガム・フォレストというクラブは、シティ・グラウンドの守護神を安売りする気など微塵も見せなかった。彼らが突きつけた条件は明確だ。交渉の席に着きたければ、少なくとも7000万ポンドを用意しろ、というものだ。

この金額は、現代フットボールにおけるディフェンダーの相場を考慮しても、間違いなくトップクラスの評価額。だが、今シーズンのプレミアリーグで見せるムリージョのパフォーマンスを見れば、フォレストの強気な姿勢も頷ける。

対人戦における圧倒的な強度、相手フォワードを弾き飛ばすフィジカル、そして何より最終ラインから攻撃のスイッチを入れる左足の精度。これらすべてが “非売品” に近い存在へと押し上げている。

しかし、チェルシーは諦めていない。むしろ、一度の失敗が彼らの狩猟本能に火をつけたようだ。情報筋によれば、クラブは現在もスカウト網を駆使してムリージョの一挙手一投足を追い続けている。

2026年、つまり来たるべき次の夏を見据え、財務的な地盤とチーム内の競争環境を整えた上で、再び巨額オファーを提示する青写真を描いている。

7000万ポンドという壁は高いが、近年のチェルシーが見せてきた金に糸目をつけない補強戦略を鑑みれば、この壁を「破壊」する可能性は十分にある。問題は金額ではない。彼らが本気で獲りに行くか、その一点に尽きる。

エンツォ・マレスカ監督が描く最終ラインの構成

なぜ、数あるセンターバックの中でムリージョなのか。その答えは、現在チームを指揮するエンツォ・マレスカの戦術哲学を紐解けば自ずと見えてくる。マレスカが志向するフットボールにおいて、センターバックは守備者であると同時に、最初のプレイメーカーでなければならない。

特に後方からのビルドアップにおいて、相手のハイプレスを無効化し、数的優位を作り出すための「運ぶドリブル」と「縦パス」は不可欠なスキルとなる。

ムリージョはこの要求水準を軽々とクリアする。彼はセンターバックでありながら、ブラジル人特有のボール扱いの柔らかさを持ち、自らボールを持って中盤のスペースへ侵入することを恐れない。この「推進力」こそが、チェルシーの採用チームが彼を「マレスカのプロジェクトに完璧に適合する」と断言する最大の理由。

さらに重要なのが “左利き” であるという点。現代サッカーにおいて、左利きのセンターバックは戦術的な鍵を握る。レヴィ・コルウィルという稀代の才能を擁するチェルシーだが、過密日程を戦い抜く上で、同等のクオリティを持つ左利きのスペシャリストを複数抱えることは、贅沢ではなく必須条件になりつつある。

ムリージョが加われば、最終ラインからの配球ルートは劇的に多彩になる。左サイドから対角線に放たれるロングフィードは、右ウイングのマドゥエケやパルマーの足を止めずに前進させる強力な武器となるはずだ。

また、チェルシーの補強戦略の根幹にある「若く、高いポテンシャルを持つタレントの収集」というポリシーにも、23歳のムリージョは合点がいく。完成されたベテランではない。プレミアリーグという世界最高峰のリーグで揉まれながら、日々成長を続ける未完の大器。

マレスカの下で戦術的な規律とポジショニングを叩き込まれれば、チアゴ・シウバが去った後のスタンフォード・ブリッジにおいて、新たなディフェンスリーダーとして君臨する未来さえ描ける。野性的な守備能力と、知的なビルドアップ能力の融合は、チェルシー守備陣を次のレベルへと引き上げるラストピースとなり得る。

個人的な見解

チェルシーというクラブの「業」のようなものを感じずにはいられなかった。ウェズレイ・フォファナ、ブノワ・バディアシル、アクセル・ディサシ、そしてコルウィル。

すでに多額の資金を投じてセンターバックを乱獲してきた彼らが、さらに7000万ポンドを投じてムリージョを狙う。一見すれば、狂気じみた補強中毒に見えるかもしれない。だが、フットボールの現場目線で言えば、この動きは極めて理にかなっているとも感じる。

今のチェルシー守備陣は、タレントは揃っているものの、怪我の多さやパフォーマンスの波に悩まされ続けている。絶対的な「計算できる」柱が、もう一本必要なのだ。

ムリージョがフォレストで見せている、あのふてぶてしいまでのメンタリティと、フィジカルバトルを厭わない闘争心は、今の優等生が多いチェルシーのスカッドに強烈なアクセントを加えるだろう。

2026年まで待つという判断も、賢明だと言わざるを得ない。PSR(収益性と持続可能性に関する規則)の遵守が叫ばれる中、無理な冬の獲得で勝ち点を剥奪されるような愚は避けなければならない。

また、ムリージョ自身もフォレストでもう一年、主軸としてフル稼働することで、その価値が一発屋ではないことを証明できる。もし彼がこのままの成長曲線を描き、2026年の夏に青いユニフォームに袖を通すことになれば、それはプレミアリーグの勢力図を塗り替える移籍になるはず。

チェルシーファンは、この「重戦車」の動向を、毎週末の試合結果と同じくらいの熱量で追いかけるべきだ。彼こそが、常勝軍団復活の鍵を握っているかもしれない。