マンチェスターの冬は例年よりも早く、そして熱く訪れた。ルベン・アモリム体制が本格稼働し、オールド・トラッフォードにはかつての覇権を取り戻そうとする野心が充満している。
ピッチ上のパフォーマンスは徐々に改善を見せているが、完璧主義者である指揮官の瞳は、現在のスカッドが抱える構造的な欠陥を決して見逃さない。中盤の再編が叫ばれる中、水面下でより切迫した課題として浮上しているのが右サイドバック、すなわちアモリム戦術の肝である右ウイングバックの刷新。
これまで不動と思われていたディオゴ・ダロトの聖域がついに崩れ去ろうとしている。クラブ首脳陣が狙いを定めたのは、セント・ジェームズ・パークを熱狂させるニューカッスル・ユナイテッドの傑作、ティノ・リヴラメントだ。
プレミア屈指の強度が招く、トップクラブ三つ巴の狂騒曲
英『The Daily Briefing』が報じた情報は、瞬く間にイングランド全土を駆け巡った。マンチェスター・ユナイテッドは、2026年の夏の移籍市場における最優先ターゲットの一人としてリヴラメントをリストアップし、すでに獲得レースの最前線に躍り出たという。
だが、この23歳のイングランド代表DFを欲しているのはユナイテッドだけではない。エティハドの隣人マンチェスター・シティ、そしてエミレーツの要塞を守るアーセナルもまた、虎視眈々と彼を狙っている。
リヴラメントの魅力は、現代フットボールがサイドバックに求めるすべての要素を、極めて高い次元で完結させている点にある。チェルシーのアカデミーで磨かれた技術、サウサンプトンで培った不屈の闘争心、そしてニューカッスルで証明したビッグマッチでの勝負強さ。大怪我を乗り越え、以前よりも強靭になって帰ってきたその姿は、まさにピッチを縦横無尽に切り裂く「槍」そのものだ。
ニューカッスルにとって、彼は絶対に手放せないコアプレイヤーだ。サウジアラビアの資本が入って以来、彼らは「狩られる側」から「狩る側」へと変貌を遂げたはずだった。しかし、リヴラメントのようなワールドクラスの潜在能力を持つタレントに対し、メガクラブが提示するプロジェクトと栄光への道筋は強烈な引力を持つ。
ユナイテッドがこの争奪戦を制するには、ニューカッスルの抵抗をねじ伏せる莫大な移籍金はもちろん、選手自身の魂を揺さぶるビジョンの提示が不可欠。シティやアーセナルという、完成された組織に対抗して彼を口説き落とすことこそが、新生ユナイテッドの本気度を測るもにになりそうだ。
アモリムが突きつけるダロトへの非情な通告
なぜ今、右サイドバックなのか。その答えはルベン・アモリムの戦術哲学と、ディオゴ・ダロトが直面している現実にある。アモリムの3バックシステムにおいて、ウイングバックは単なるサイドの守備者ではない。攻撃の最終局面で決定的な仕事をこなし、守備に転じれば即座にプレスバックして相手のカウンターを摘み取る、超人的なアスリート能力が要求されるポジション。
同郷のダロトは、確かに器用で戦術理解度も高い。偽サイドバックとして中盤をサポートする能力には長けている。しかし、アモリムが求める圧倒的な縦への推進力と90分間落ちないスプリント強度という点において、ダロトは物足りなさを露呈してしまう場面が増えた。
今季のいくつかの試合で見られた、対面のウインガーにスピードで振り切られるシーンや、攻撃参加後の戻りの遅れは、タイトルを狙うチームにとって致命的な隙となり得る。
さらに計算外だったのは、期待の若手パトリック・ドルグの成長スピード。彼が早期にレギュラー争いに加わることを期待していたが、プレミアリーグの荒波は若者が想像する以上に高く、険しい。即戦力としての計算が立たない今、クラブは「育成」から「確実な補強」へと方針を転換せざるを得ない。
リヴラメントならば、この問題を一挙に解決できる。彼の持ち味である爆発的な加速力は、相手の守備ブロックを独力で破壊し、アモリムの攻撃戦術に新たな次元を加える。守備においても、対人戦での強さはリーグ屈指。
ダロトが「司令塔的なサイドバック」なら、リヴラメントは「戦局を破壊するサイドバック」だ。よりダイレクトにゴールへ迫るアモリムのスタイルには、後者が適していることは火を見るよりも明らか。
ダロトをバックアッパーに追いやる、あるいは彼を放出してでもリヴラメントを迎え入れるという冷徹な決断こそが、ユナイテッドを次のステージへと押し上げる。
個人的な見解
このニュースを聞いて、私は久々にユナイテッドの補強戦略に「背筋が凍るような本気」を感じた。
これまでのユナイテッドは、どこか情緒的で、功労者や知名度に頼った補強に終始していたきらいがある。だが、アモリムと新経営陣は違う。
ダロトというファンに愛される選手がいてもなお、チームの機能を最大化するために、より優れたパーツを貪欲に求める。この冷徹さこそ、かつてサー・アレックス・ファーガソンが常勝軍団を築き上げた根幹だったはず。
リヴラメントの獲得は、ユナイテッドが再びプレミアリーグの食物連鎖の頂点に立つという宣言に他ならない。ここで競り勝ち、リヴラメントに赤いユニフォームを着せることができれば、そのインパクトは計り知れない。
アモリムのサッカーを完成させるには、ピッチの両翼に怪物が必要だ。左に誰を置くかも議論の余地はあるが、右にリヴラメントを据えることができれば、向こう5年、いや10年は安泰。
ダロトには酷な話かもしれないが、プロフットボールの世界は残酷なまでに実力主義だ。情を捨て、最強のスカッドを作り上げる。
その覚悟が今のユナイテッドにあるのなら、私はこの移籍の実現を全力で支持する。もはや迷っている時間はない。小切手を切り、セント・ジェームズ・パークの門を叩く時が来たのかもしれない。