契約満了まで残り半年、バイエルンが直面するウパメカノ残留交渉とグエイ獲得の可能性

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2025年の師走、ミュンヘンの寒空とは裏腹に、ゼーベナー・シュトラーセ(バイエルンの練習場)のオフィスは熱気を帯びている。ヴァンサン・コンパニ体制2年目のシーズンも折り返し地点を迎えようとしている今、クラブ首脳陣の脳裏を占めているのは、ピッチ上の勝敗だけではない。

来たる1月の移籍市場、そしてその先に待つ2026年夏のチーム編成だ。特にセンターバックの去就問題が最大の懸案事項として浮上している。

英『Team Talk』が報じた最新情報は、バイエルンが直面するジレンマと明確な優先順位を鮮明に映し出した。彼らはクリスタル・パレスの主将マルク・グエイに関心を寄せているが、あくまで最優先ミッションは、現行契約が残りわずかとなったダヨ・ウパメカノの慰留にある。

契約満了まで秒読み、ウパメカノ確保こそが最大の「補強」

時計の針は残酷に進む。ダヨ・ウパメカノとバイエルンの契約は2026年6月で満了を迎える。つまり、この2025年12月の時点で契約延長の合意に達していなければ、年が明けた瞬間に彼は他国のクラブと自由交渉が可能になる。

かつてダビド・アラバやニクラス・ズーレをフリーで流出させた苦い記憶を持つバイエルンにとって、全盛期にある27歳の主力CBを無償で失うことは、経営的な敗北以外の何物でもない。

ヴァンサン・コンパニ監督の戦術において、ウパメカノは替えの利かないパーツだ。極端なハイラインを敷き、相手陣内で圧殺するスタイルを完遂するには、広大な背後のスペースを独力でカバーできるスピードとフィジカルが必要不可欠となる。

ブンデスリーガはおろか、欧州全体を見渡しても、ウパメカノほどのリカバリー能力を持つDFは稀有だ。確かに彼は時折、信じがたい集中力の欠如を見せることがある。しかし、コンパニ監督はそのリスクを許容し、彼の攻撃的な守備センスに全幅の信頼を置いている。指揮官が求める「前に出る守備」を体現できるのは、間違いなく彼なのだ。

マックス・エーベルをはじめとする強化部は、このフランス代表DFとの交渉を急ピッチで進めている。ここでの契約延長は戦力を維持するだけでなく、コンパニ体制への支持を明確に示すメッセージとなる。

市場価値が高騰し続ける現代サッカーにおいて、同等のクオリティを持つ選手を獲得しようとすれば、天文学的な移籍金が必要になることは明白。既存の核心戦力を繋ぎ止めることこそが、最も経済的かつ確実な冬の補強となる。

イングランド代表DFマルク・グエイ、ミュンヘンが描くプランBの全貌

ウパメカノとの交渉を最優先としつつも、バイエルンは冷徹なリアリストとしての顔も併せ持つ。交渉決裂という最悪のシナリオに備え、彼らがリストアップしているのが、プレミアリーグで評価を不動のものにしているクリスタル・パレスのマルク・グエイ。

グエイのプレースタイルは、ウパメカノとは対照的であり、それゆえに魅力的だ。ウパメカノが「動」のディフェンダーだとすれば、グエイは「静」の支配者だ。決して大柄ではないが、抜群のポジショニングと予測能力で相手の攻撃の芽を摘む。ボール保持時の落ち着きも際立っており、ビルドアップの出口としても機能する。

イングランド代表として国際舞台での経験も積み、若くしてパレスのキャプテンを務めるリーダーシップは、ドイツの盟主が求めるメンタリティと合致する。ハリー・ケインの成功以降、バイエルンにとってイングランド人選手の獲得は、もはやリスクではなく成功への近道として認識されている側面もある。

バイエルンはグエイに対して継続的な関心を持っている。しかし、ハードルは低いものではない。プレミアリーグのクラブ、特にロンドンのクラブから主力選手を引き抜くには、相応の対価が求められる。パレス側も安売りするつもりは毛頭ないだろう。

それでもバイエルンが彼の名をリストに残し続けるのは、ウパメカノが去った場合の穴埋めとして、あるいは守備陣に異なる戦術的オプションを加えるためのピースとして、彼が最適解であると判断しているからだ。

伊藤洋輝やキム・ミンジェといった既存戦力に加え、グエイのような「読み」に優れたタイプが加われば、守備のバリエーションは劇的に広がる。バイエルンのスカウト陣は、ウパメカノの交渉の行方を横目で見ながら、ロンドンへのホットラインを維持し続けている。

個人的な見解

バイエルンがウパメカノの契約延長に全力を注ぐ判断は全面的に正しい。2025年の現在において、彼のような「理不尽なまでの身体能力」を持つセンターバックを市場から発掘するのは砂漠で針を探すようなものだ。

コンパニ・ボールの根幹を成すハイライン戦術は、ウパメカノという「保険」があって初めて成立する。彼を失えば、戦術の大幅な修正、あるいはチームスタイルの後退を余儀なくされるだろう。アラバを失った時のような空虚感を、再び味わう必要はない。

一方で、マルク・グエイへの憧憬も捨てがたい。彼のインテリジェンス溢れる守備は、ブンデスリーガの混沌としたトランジション合戦に秩序をもたらす可能性がある。

もし仮にウパメカノが新たな挑戦を選び、バイエルンを去ることになったとしても、グエイという後釜が控えているならば、サポーターの絶望は希望へと変わるはず。

個人的には、ウパメカノとグエイがコンビを組む世界線を見てみたいという欲求もある。「最強の矛」のようなウパメカノと、「鉄壁の盾」のようなグエイ。この二人が並び立てば、バイエルンの守備は欧州最強の称号を手にできるのではないか。クラブ幹部の手腕が問われる冬、我々は固唾を呑んでその結末を見守ることになる。