12月の冷たい風がマージーサイドに吹き荒れる中、KOPの心を熱く焦がすニュースが飛び込んできた。リヴァプールにとって、ドイツのブンデスリーガ、とりわけRBライプツィヒというクラブは、ただの取引先ではない。
ナビ・ケイタが夢を見せ、イブラヒマ・コナテが鉄壁を築き、ドミニク・ソボスライが新たな王として君臨する。レッドブル・グループが丹念に磨き上げた逸材たちは、アンフィールドの芝生の上でこそ、その真の輝きを放ってきた歴史がある。
この成功の系譜は、もはや偶然の産物ではない。そして今、その黄金のラインに連なる新たな怪物の名が浮上した。ヤン・ディオマンデ。コートジボワールが生んだ、ピッチを切り裂く若き雷撃だ。
2025/26シーズンも折り返し地点が見え始めたこの時期、水面下での動きはすでに沸点に達しようとしている。ベルギー屈指のジャーナリストであり、精度の高い情報で信頼を集めるサシャ・タヴォリエリ氏がもたらしたスクープは、冬の移籍市場、そして来るべき夏の市場を見据えたリヴァプールの本気度を白日の下に晒した。
膠着を打破する「理不尽」な個の力
リヴァプールがなぜ今、ヤン・ディオマンデという特定の才能に執着するのか。その答えは、現代フットボールの戦術的進化と直面している課題の中にある。アルネ・スロット体制下でチームは組織的な完成度を高めているが、引いてブロックを敷く相手、あるいは極限のプレッシャーをかけてくるトップレベルの敵に対して、戦術の枠組みを超越して局面を破壊できる「個」の力は常に不足しがち。
タヴォリエリ氏が言及する「新鮮さ」と「推進力」という言葉は、まさに今の攻撃陣に必要なラストピースを指している。ブンデスリーガでのディオマンデを見れば、彼が並大抵のウインガーでないことは一目瞭然だ。
彼の最大の武器は、密集地帯を苦にもせず、むしろ相手守備陣の密林をあざ笑うかのようにすり抜けるドリブルの推進力にある。いわゆるラインブレイカーとしての才能。
既存の戦力が連動性やパスワークで崩すタイプだとすれば、ディオマンデは独力で風穴を開ける理不尽な存在だ。2、3人のディフェンダーに囲まれてもボールを失わず、強引に前を向いてシュートコースを作り出す。
その野性味あふれるプレースタイルは、かつてアンフィールドを沸かせたサディオ・マネの初期衝動や、ルイス・ディアスの不屈の闘争心を想起させる。RBライプツィヒという組織でゲーゲンプレスの哲学を骨の髄まで叩き込まれている点も、リヴァプールへの適応を早める決定的な要素となるはず。
ロンドンの刺客、トッテナムとのデッドヒート
しかし、この極上の才能を放っておくほど、プレミアリーグは甘くない。北ロンドンのトッテナム・ホットスパーが、リヴァプールと同じ熱量、同じ執念でディオマンデを追い回している。
タヴォリエリ氏の情報によれば、トッテナムもまた選手サイドと非常に高度な接触を行っており、数ヶ月前から徹底的なスカウティングを続けてきたという。最近になって交渉を加速させたという事実は、彼らがこの争奪戦に勝算を持っていることの裏返しでもある。
トッテナムが志向する、縦に速く強度の高いフットボールにおいて、ディオマンデのようなアスリート能力と技術を兼ね備えたアタッカーは理想的な補強となる。ソン・フンミンらが築いた攻撃の基盤に、若く爆発力のある新たな血を加えたいという彼らの渇望は、リヴァプールにとっても脅威。
資金力、ロンドンという立地、そして成長著しいチームプロジェクト。彼らが提示する条件は、決して侮れるものではない。
一方で、朗報もある。かつて関心を示していたバルセロナが、このレースから後退したという事実だ。カンプ・ノウの財政事情か、あるいは戦術的な優先順位の変化か。いずれにせよ、スペインの巨人が去った今、ディオマンデの視線はイングランド、それもトップレベルの強度を誇るプレミアリーグへと固定された。
個人的な見解
RBライプツィヒ産の選手はハズレがないどころか、常に期待値を数段上回るパフォーマンスを見せてくれる。ヤン・ディオマンデに関しても、リヴァプールのスカウト陣がゴーサインを出しているのなら、それは「間違いない」という証明書のようなもの。
特に、近年のブンデスリーガで見せている、あの強引なまでの縦への突破力。あれは今のリヴァプールにおいて、膠着した試合展開をひっくり返すジョーカーになり得る。
綺麗に崩すだけがサッカーではない。時には個の力で強引にこじ開ける蛮勇が必要なのだ。彼にはその匂いがプンプンする。
トッテナムとの競合が伝えられているが、格の違いを見せつける時が来た。施設、歴史、サポーターの熱量、そして何よりタイトルへの距離。どれをとってもアンフィールドに分がある。
バルセロナが消え、視界は良好。この冬に事前合意を取り付け、来夏に赤いユニフォームを着た彼がアンフィールドのピッチを疾走する姿を想像すると、身震いが止まらない。
フロントには、多少の金銭的条件の上積みをしてでも、この逸材を確実に確保してもらいたい。彼は間違いなく、次なるアイコンとして君臨するかもしれない選手だ。