3000万ユーロの攻防戦が開幕?アモリム監督が惚れ込む「エルチェの闘将」ダビド・アッフェングルーバー

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オーストリアの新星アッフェングルーバー、マンチェスター・ユナイテッド移籍の可能性! Manchester United

オールド・トラッフォードに吹き荒れる変革の嵐は、まだ止む気配を見せない。ルベン・アモリム監督が指揮を執るマンチェスター・ユナイテッドは、着実にその姿を変えつつある。かつてのスター選手依存からの脱却、そして指揮官の戦術哲学に完全にマッチする「機能美」を追求したチーム作り。

2025年の冬を迎えた今、クラブの強化部は水面下で次なる夏に向けた重大なミッションを遂行している。そのターゲットリストの最上位に、意外とも言える名前が浮上した。スペインの地で評価を急騰させているオーストリア人DFダビド・アッフェングルーバーだ。

アモリム流3バックに不可欠な「闘争心」と「戦術眼」

マンチェスター・ユナイテッドのスカウティング網が捕らえたのは、今シーズンのラ・リーガで旋風を巻き起こしているエルチェの守備の要のようだ。英『Team Talk』が報じたところによると、ユナイテッドは来夏の移籍市場でのアッフェングルーバー獲得を真剣に検討している。ラ・リーガで健闘するエルチェの立役者であるこの24歳のセンターバックの能力を疑いようがない。

なぜ、メガクラブがエルチェのDFを狙うのか。その根拠はアモリム監督が志向する3-4-3システムの特性に求められる。彼の戦術において、3バックの一角を担う選手には、守備力以上のタスクが課される。広大なスペースを埋める走力、激しいプレッシングに連動する勇気、そして最後尾から攻撃のスイッチを入れる配球力だ。

ザルツブルクのアカデミーで育ち、シュトゥルム・グラーツで研鑽を積んだアッフェングルーバーは、まさにこのプロファイルを体現する存在としてアモリムの目に留まった。

アッフェングルーバーのプレーには、アモリムが好むアグレッションが宿る。相手FWに食らいつくような対人守備は、プレミアリーグの屈強なアタッカーたちとも互角に渡り合えるポテンシャルを感じさせる。加えて、彼はボールを持った際の推進力も兼ね備えている。

ユナイテッドの守備陣は長らく、ビルドアップ時の停滞や、ハイラインの背後への対応に苦慮してきた。レニー・ヨロやマタイス・デ・リフトといった既存の戦力に加え、アッフェングルーバーのような機動力と戦術理解度が高い選手を加えることは、最終ラインのオプションを増やし、チーム全体の重心を高く保つために不可欠な補強となる。

今季のエルチェでのパフォーマンスを見れば、彼がラ・リーガ屈指のセンターバックという評価を得ているのも頷ける。アッフェングルーバーはただゴール前を固めるだけのディフェンダーではない。インターセプトでボールを奪い、そのまま前線へ駆け上がるシーンは、アモリムが求める「攻撃的な守備」そのもの。

3000万ユーロの壁とINEOS体制下の交渉戦略

アッフェングルーバー獲得に向けた障害となるのは、エルチェが設定した強気なプライスタグだ。報道によれば、スペインのクラブはこの主力DFの放出に対し、少なくとも3000万ユーロを要求している。中堅クラブの選手としては高額に映るかもしれないが、近年のDF市場の高騰や、彼の年齢、そしてラ・リーガでの実績を考慮すれば、決して法外な数字ではない。

しかし、交渉のテーブルではユナイテッドにも勝機がある。アッフェングルーバーとエルチェの現行契約は、来夏時点で残り1年となる可能性があるからだ。契約満了が近づけば、クラブ側の立場は弱くなる。

フリーでの流出を防ぐため、エルチェは妥協点を探らざるを得なくなるかもしれない。もちろん、エルチェ側には1年間の契約延長オプションが存在するとも伝えられており、これを盾に移籍金を吊り上げる駆け引きに出る公算が高い。

ここで試されるのが、INEOS主導となったユナイテッド首脳陣の手腕。強化部はかつてのような無謀な支出を控え、適正価格での補強を徹底している。アッフェングルーバーの獲得交渉においても、契約年数というカードを巧みに使い、3000万ユーロからの減額を引き出す算段だろう。

ユナイテッドの視界にあるのはアッフェングルーバーだけではない。アモリム監督はウイングバックの刷新も求めており、さらには中盤の支配力を高めるワールドクラスのMF確保も画策している。

プレミアリーグ内のライバルから主力級を引き抜くプランも進行中だ。限られた予算を効果的に配分し、チーム全体のレベルを底上げするためには、アッフェングルーバーのような隠れた実力者を適正価格で確保することが極めて重要になる。

個人的な見解

アモリム監督とユナイテッドのこの動きは、非常に理にかなった、そして好感の持てるアプローチだ。数年前のユナイテッドであれば、マーケティング的な華やかさを優先し、すでにピークを過ぎたビッグネームや、プレミアリーグへの適応が未知数な高額選手に飛びついていただろう。

しかし、今回のアッフェングルーバーへの関心は、純粋に「戦術的な必要性」に基づいている。知名度は世界的にはまだ低いかもしれないが、監督が求める役割を完璧にこなせる選手を連れてくる。これこそが、強いチームを作るための鉄則だ。

リヴァプールがアンディ・ロバートソンをハル・シティから獲得したとき、あるいはアーセナルがガブリエウ・マガリャンイスをリールから引き抜いたとき、多くのファンは懐疑的だった。しかし、彼らはチームの骨格となり、タイトル争いの主役となった。

アッフェングルーバーにも同様の匂いを感じる。彼のプレースタイルは、プレミアリーグのインテンシティに合致するはず。特にアモリムの3バックは特殊な連携を要するため、監督の戦術眼に適う選手であるという事実自体が、成功への最大の保証となる。

現在のユナイテッド守備陣において、ハリー・マグワイアやビクトル・リンデロフといったベテラン勢の去就が不透明になりつつある今、20代中盤のハングリーな選手を加えることは、チーム内の競争原理を活性化させる。

3000万ユーロという金額を巡る攻防はあるだろうが、もしこの補強が実現すれば、それはユナイテッドが真の意味で「フットボールファースト」のクラブへと生まれ変わったことを示す決定的な証拠となるだろう。