リヨンでの覚醒は序章に過ぎない…トッテナムら6つのクラブが狙うタイラー・モートンの帰還

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プレミアリーグ復帰の可能性を秘めるタイラー・モートン、クリスタル・パレスが狙う!? Brighton & Hove Albion

ローヌ川から吹き付ける冷たい風とは対照的に、タイラー・モートンの周囲は今、熱狂の渦中にある。フランス南東部の古豪オリンピック・リヨンで司令塔としての地位を確立しつつあるこのイングランド人は、ドーバー海峡の向こう側から強烈な求愛を受けている最中だ。

今年8月にリヴァプールという巨大な「家」を離れ、1500万ポンドでリーグ・アンへの完全移籍を決断した際、これほど早くプレミアリーグへの帰還ルートが開通すると予測した者は少なかったはずだ。

だが、現実は小説よりも劇的だ。英『TEAMtalk』によれば、トッテナム・ホットスパーを筆頭に、エヴァートン、クリスタル・パレス、ニューカッスル、ブライトン、ノッティンガム・フォレストという計6つのクラブが、この冬、あるいは来夏のターゲットとしてモートンの名前をリストアップしている。

リーグ・アンの荒波で手にした「抗う力」とプレミア勢の包囲網

今シーズン、モートンはリーグ・アンのピッチに12回立ち、1ゴール1アシストという数字を残している。だが、スカウトたちが報告書に熱心に書き込んでいるのは、ゴール数やアシスト数といった表面的なスタッツではない。

彼らが評価しているのは、フランス特有の、時として理不尽なまでのフィジカルコンタクトに晒されながらも、涼しい顔でボールを配給し続けるタフネスと適応力。リヴァプールのアカデミーで育まれた技術的な優位性はそのままに、異国の地で泥臭く戦う術を身につけたモートンは、中盤の底でゲームをコントロールするモダンなMFとして完成形に近づいている。

特に興味深いのは、関心を寄せるクラブの顔ぶれだ。トッテナムのようなCL権を争うトップクラブだけでなく、ブライトンのようなデータ分析に基づいた補強で成功を収めるクラブが含まれている事実は、モートンの潜在能力に対する「品質保証書」のようなものだ。

さらに、リヴァプールの宿敵エヴァートンまでもが獲得レースに名を連ねている事実は、マージーサイドの情勢をよく知るファンにとって、禁断の果実のような背徳的な刺激を含んでいる。アンフィールドで育った才能がグディソン・パークの青いユニフォームを纏うなど、数年前なら冗談で済まされた話だが、プロフェッショナルなフットボールの世界において、それは現実的な選択肢の一つとして浮上している。

推定市場価値は1200万ユーロとされているが、この数字はあくまで目安に過ぎない。リヨンとの契約は2030年6月まで残されており、彼を引き抜くためには、この評価額を嘲笑うかのような巨額のオファーが必要になる。

トッテナムの戦術的渇望とリヨンが仕掛けるマネーゲーム

トーマス・フランク監督が率いるトッテナムにとって、中盤の構成力強化は、タイトル獲得へのラストピースとなり得る。彼らが求めているのは、激しいプレスを回避し、攻撃のスイッチを入れることができる「レジスタ」だ。

モートンがリヨンで見せている、相手のプレスを無効化するターンや、長短を織り交ぜた正確なパスワークは、スパーズのハイライン・ハイプレス戦術において、リスク管理と攻撃展開の両面で機能する。

現在のスパーズの中盤はタレントこそ豊富だが、モートンのような純粋な配球役、いわゆる「メトロノーム」のような存在は希少であり、彼が加わることでチームの戦術的オプションは劇的に広がる。

しかし、交渉は一筋縄ではいかない。リヨンというクラブは、欧州でも屈指の商売上手。彼らは選手の価値がピークに達するタイミングを見極める嗅覚において、他の追随を許さない。わずか半年前に1500万ポンドで獲得した選手を、同額やそこらの利益で手放すような慈善事業は彼らの辞書にはない。

リヨン側は、プレミアリーグのクラブが持つ潤沢な資金力を完全に把握しており、獲得競争が激化すればするほど、つり上がった移籍金を提示してくるはず。イングランド国籍を持つモートンはホームグロウン扱いというプレミアリーグ特有の付加価値も持っている。これが移籍金をさらに押し上げる要因となる。

トッテナムが正式なオファーを提示するかはシーズン終了後との見方もあるが、冬の移籍市場で他クラブが先手を打てば、静観している余裕は消え失せる。ニューカッスルのオイルマネーが動くか、ブライトンが素早い動きを見せるか。水面下での駆け引きはすでに始まっているのだ。

個人的な見解

このニュースに接した時の感情は「誇らしさ」と「一抹の寂しさ」が入り混じった複雑なものだ。ハーヴェイ・エリオットやカーティス・ジョーンズらと共に、次代のアンフィールドを背負うと期待された男が、フランスの地で評価を高め、ライバルクラブのターゲットとしてプレミアに戻ってくるかもしれない。

リヴァプールを離れるという決断が、キャリアにおいて正解だったことを証明している。出場機会を求めて安住の地を捨て、言語も文化も異なるリーグ・アンへ飛び込んだ勇気が、わずか数ヶ月で結実しようとしているのだ。

だが、リヨンがそう簡単に首を縦に振るとは思えない。彼らはモートンを長期的なプロジェクトの核心、あるいは将来的に莫大な富をもたらす資産として見ている。

もしトッテナムが本気で彼を欲するなら、3500万ポンド、いや4000万ポンド級の小切手を用意する必要があるだろう。個人的には、あと1シーズンはフランスで揉まれ、CLのような欧州最高峰の舞台で経験を積んでから帰還してほしいという願望がある。

しかし、現代フットボールの時計の針はあまりにも早く進む。もし来シーズン、彼がスパーズの白いユニフォームを着てアンフィールドのピッチに立ったとしても、KOPは彼に温かい拍手を送るべきだ。