プレミアリーグが冬の過密日程へと突入する中、トッテナム・ホットスパー・スタジアムの周辺ではピッチ外の喧騒が鳴り止まない。指揮官トーマス・フランクが構築する堅牢かつダイナミックなチームにおいて、最後尾を支える守護神の去就問題が突如として表面化した。
英『TEAMtalk』が報じた内容によれば、現在のチームで正守護神を務めるイタリア人GKグリエルモ・ヴィカーリオに対し、母国イタリアの二大巨頭、インテルとACミランが獲得に向けて具体的な動きを見せているという。
トーマス・フランクを悩ませるヴィカーリオの郷愁とセリエAの魔力
ヴィカーリオはこれまで、その驚異的な反射神経とシュートストップで幾度となくチームの危機を救ってきた。しかし、ここへ来て彼自身がイタリアへの帰還を真剣に検討しているという情報が、事態を複雑にしている。
フランク監督が求める規律とハードワークを忠実に遂行してきた彼だが、異国でのプレッシャーと母国からのラブコールは、選手の心を揺さぶるに十分すぎる要素だ。特にスクデットを争うミラノのクラブからのオファーは、キャリアの絶頂期にある選手にとって抗いがたい魅力を放つ。
トーマス・フランクという指揮官は、戦術的な規律とともに、チームへの絶対的な献身を求めるリアリストだ。もしヴィカーリオの心がすでにロンドンになく、ミラノの空へ飛んでいるのであれば、デンマーク人監督は躊躇なく外科手術を断行するだろう。
情に流されて不安定な心理状態の選手を起用し続けることは、彼の哲学に反する。クラブ首脳陣もまた、ヴィカーリオが高値で売れるタイミングを逃すつもりはない。
後釜の確保さえ確実ならば、この冬の放出も辞さない構えを見せている。そこでリストの最上位に躍り出たのが、マンチェスター・シティで不遇をかこつジェームズ・トラッフォードである。
マンチェスター・シティという檻に囚われたトラッフォードとニューカッスルの影
ジェームズ・トラッフォードの現状は、才能の浪費という言葉以外で見当たらない。エティハド・スタジアムのベンチ、あるいはスタンドから試合を眺める日々は、彼の野心を深く傷つけている。
ペップ・グアルディオラの下で英才教育を受けたこの若きGKは、現代フットボールに求められる足元の技術と、広範囲をカバーする守備範囲を兼ね備えている。しかし、出場機会の欠如に対するフラストレーションは限界を超え、彼は新たな舞台を渇望している。
トッテナムにとってトラッフォードは理想的なターゲットだ。フランク監督が好む、素早いトランジションと正確なロングフィードを駆使する戦術において、トラッフォードのキック精度は大きな武器となる。
ブレントフォード時代にダビド・ラヤを重用したように、フランクはGKを攻撃の起点として計算する。トラッフォードならば、その要求水準をクリアするどころか、チームの攻撃戦術に新たな次元を加えることができるはず。
だが、この獲得レースは一筋縄ではいかない。ニューカッスル・ユナイテッドも虎視眈々と狙っている。エディ・ハウ監督もまた、ビルドアップ能力に長けたGKを求めており、資金力ではスパーズにとって脅威となる存在。
ヴィカーリオの売却益をいかに迅速にトラッフォード獲得へ転用できるか。スパーズのチーム力が再び試されることになる。
個人的な見解
トーマス・フランク体制において、グリエルモ・ヴィカーリオの放出は必ずしもネガティブな要素だけではないと考える。
確かにヴィカーリオのビッグセーブは魅力的だが、フランクが目指す「組織としての強固なブロックと鋭いカウンター」を完遂するためには、より配球能力に優れたGKが必要な場面も多い。
ヴィカーリオが感情的な動揺を見せている今こそ、よりモダンで、かつ監督の戦術的志向にフィットするトラッフォードへと切り替える絶好の好機だ。
ジェームズ・トラッフォードは、マンチェスター・シティでの飼い殺し状態から解放されれば、爆発的な成長を見せる可能性を秘めている。イングランドの次世代を担うポテンシャルを持ちながら、実戦経験が不足している現状はあまりにも惜しい。
トッテナムが彼に正守護神の座を与え、フランク監督がその才能を解き放つことができれば、この交代劇は数年後に「スパーズの歴史を変えた英断」として語り継がれることになるだろう。リスクを冒してでも未来を掴みに行く姿勢こそが、今のトッテナムには必要だろう。
