王者ナポリを襲う中盤の緊急事態!デ・ブライネの代役にかつての愛弟子クルゼフスキを指名か?

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王者ナポリを襲う中盤の緊急事態!デ・ブライネの代役にかつての愛弟子クルゼフスキを指名か? Tottenham Hotspur

ナポリの街はクリスマスを前にした祝祭の空気とは裏腹に、ヴェスヴィオ火山の噴火のごとき焦燥感に包まれている。ディエゴ・アルマンド・マラドーナ・スタジアムの奥深く、戦術室に籠る指揮官アントニオ・コンテの脳裏を占拠しているのは、かつて共に戦ったスウェーデン人の姿だ。

イタリアメディア『Area Napoli』が報じた衝撃的なニュースは、カルチョの国を駆け巡り、遠く霧のロンドンまで波及した。ナポリがトッテナム・ホットスパーのデヤン・クルゼフスキを、この冬の移籍市場における最優先ターゲットとして定めたというのだ。

アントニオ・コンテが求める「即効性の劇薬」と崩れかけた中盤のパズル

ナポリがここまで性急に補強へと動く背景には、無視できないチームの亀裂がある。世界最高峰のテクニシャンとして迎え入れられたケヴィン・デ・ブライネが、度重なるコンディション不良によりピッチから遠ざかっている。

彼がボールを持てば魔法がかかるが、そもそもピッチに立てなければ魔法は発動しない。デ・ブライネ不在の穴は、ナポリの創造性を著しく欠落させ、攻撃の血流を滞らせている。

さらに追い打ちをかけるのが、アフリカ・ネーションズカップの開催。中盤の心臓部で汗をかき続けるアンドレ=フランク・ザンボ・アンギサが、モロッコ代表としてチームを離脱する瞬間が刻一刻と迫っている。

創造主と労働者、この異なるタスクを担う二人の主力がいなくなる事態は、スクデット防衛を狙うチームにとって致命傷になりかねない。マンチェスター・ユナイテッドの若き才能コビー・メイヌーなどもリストアップされているが、コンテが求めているのは「育成」ではなく「即戦力」だ。

そこで白羽の矢が立ったのが、クルゼフスキである。2022年、コンテはユヴェントスで燻っていた彼をトッテナムへ呼び寄せ、プレミアリーグという最高峰の舞台でその才能を爆発させた。右サイドから中央へ切り込む力強さ、狭いエリアでもボールを失わないキープ力、そして何よりコンテが愛してやまない “90分間” スプリントを繰り返す献身性。

これらを兼ね備えたクルゼフスキは、コンテの戦術における理想的な兵士。ウイングのみならず、インサイドハーフやトップ下としても機能する。デ・ブライネの代役として攻撃のタクトを振るうことも、アンギサの代わりに中盤の強度を担保することも可能。戦術的なマルチロールこそ、コンテが喉から手が出るほど欲している要素にほかならない。

北ロンドンの堅牢な要塞と「幻のシーズン」を送る男の現在地

今シーズンのクルゼフスキは、プレミアリーグのピッチに一度も立っていない。深刻な膝の怪我により、2025/26シーズンの公式戦出場記録は「ゼロ」のままだ。通常、稼働していない選手へのオファーは、放出側にとって渡りに船となるケースが多い。

だが、トッテナムの態度は極めて硬化している。同メディアによれば、スパーズはこの冬、いかなる条件であってもクルゼフスキの放出に応じるつもりはないと断言している。

トッテナムにとって、クルゼフスキは過去3年半で約150試合に出場し、25ゴール30アシストという数字を残してきた不可欠なコアメンバーだ。2023年に2500万ポンドで完全移籍して以降、彼はチームの攻撃になくてはならないアクセントであり続けている。

現在の長期離脱は確かに痛手だが、クラブ首脳陣や現地のサポーターは、彼が復帰すれば再びチームを活性化させると信じている。シーズン後半戦に向けた「最大の補強はクルゼフスキの復帰」と捉えている節すらある。

ナポリ側からすれば、怪我で実績のない今季のクルゼフスキを獲得することは、極めてリスクの高いギャンブルだ。メディカルチェックのハードル、半年間のブランクによる試合勘の欠如、激しいセリエAへの再適応。不安要素を並べ立てればキリがない。

それでもコンテが獲得を熱望するのは、理屈を超えた信頼があるからだ。「私の戦術を知る彼ならば、松葉杖をついてでも役に立つ」とでも言わんばかりの狂気じみた信頼が、この移籍話を加速させている。

だが、現実はシビアだ。トッテナムは扉を閉ざし、鍵をかけた。ナポリがこの扉をこじ開けるには、常識外れの移籍金を積むか、選手本人が移籍を強硬に志願するようなドラマが必要になる。デ・ブライネとアンギサの穴を埋めるのは誰か。コンテの次の一手が、シーズンの行方を決定づける。

個人的な見解

アントニオ・コンテという男は、自身の戦術パズルを完成させるためなら、どんな無理難題もフロントに要求する悪癖がある。今回のクルゼフスキ獲得報道も、まさにコンテらしい「理想の追求」だ。

確かに、戦術的な適合性だけで論じれば、クルゼフスキ以上の適任者は世界中を探しても見当たらない。彼が万全であれば、ナポリの中盤にダイナミズムと創造性を同時にもたらし、スクデット防衛の決定打となるだろう。

しかし、冷静にビジネスとリスク管理の観点から見れば、この移籍は成立し得ない。トッテナムは、資産価値が一時的に下がっている負傷中の主力を、みすみす手放すような甘いクラブではない。彼らはクルゼフスキの復帰を計算に入れている。

一方、ナポリにとっても、即効性が求められる1月のマーケットで、半年間プレーしていない選手を獲得するのは自殺行為に近い。コンテの夢は理解できるが、現実はあまりにも厳しい。

ナポリは早急にプランBへ移行し、セリエAの実力派など、より計算の立つ即戦力確保に全力を注ぐべきだ。クルゼフスキとの再会劇は、美しい思い出として心の奥底にしまっておくのが賢明だろう。