ボーンマスの夜空にブルーノ・フェルナンデスの咆哮が響き渡った。今季リーグ戦5点目、クラブ通算103ゴール目。数字だけを見れば、彼は依然としてマンチェスター・ユナイテッドの絶対的なアイコンであり、サポーターの希望そのものだ。
だが、歓喜の輪の中心にいた背番号8の心は、決して晴れやかではなかった。母国ポルトガルの『Canal 11』で放送された独占インタビュー。そこで彼が口にしたのは、クラブへの愛着ではなく、自身を「換金対象」としてしか見ない経営陣への痛烈な告発だった。
「家具」のように扱われる忠誠心
2025年の夏、サウジアラビアのアル・ヒラルから届いたオファーは、常軌を逸した巨額なものだった。同胞ルベン・ネヴェスが待つ中東へ向かえば、ブルーノは莫大な富を手にすることができた。しかし、彼はそれを拒否した。「まだここで幸せでありたい」という純粋な想いからだ。だが、その忠誠心に対するクラブ側の反応は、あまりにも冷酷で、彼のプライドを深く傷つけるものだった。
「忠誠心という問題は、以前と同じようには見られていない」…ブルーノは静かに、しかし確信を持って語り始めた。
「イングランドでは、選手が30歳に近づくと、クラブは模様替えが必要だと考え始める。まるで家具のようにね。僕はこの夏の移籍市場で出て行くこともできたし、そうすればもっと多くの金を稼げただろう。
でも、クラブ側からは『もし君が出て行っても、我々にとってはそれほど悪い話ではない』という空気を感じたんだ。それが少し、僕の心を痛めた」
「家具(furniture)」。クラブのために身を粉にして戦ってきた主将が、自らを形容するのに選んだ言葉があまりにも悲しい。31歳という年齢、残り少なくなった契約期間。PSR(収益性と持続可能性に関する規則)に縛られる経営陣にとって、彼はもはやピッチ上の英雄ではなく、バランスシートを改善するための高額な在庫に過ぎなかったのだ。
ブルーノの不信感は、具体的な経営陣とのやり取りによって決定的なものとなった。ジェイソン・ウィルコックスTDやオマル・ベラダCEOといった新たなリーダーたちは、彼に対してこう告げたという。
「ジェイソンは、オマルと同じように言った。『ノーとは言わないが、もちろん君には残ってほしい。でも、もし君が行きたいなら、我々にとってそれが悪いオファーだとは言わない。なぜなら、それは巨額の金だからだ』とね」
婉曲的な表現だが、メッセージは明白だ。「1億ポンド近い移籍金を置いていくなら、我々は喜んでドアを開ける」ということだ。
ブルーノは続ける。「彼らにとっては、お金が何よりも重要なんだという時点に達してしまったんだ」と。ピッチ上でどれだけ汗をかいても、どれだけ血を流しても、経営陣の眼中にあったのは「巨額の金」だけだった。
「彼らには勇気がなかった」 アモリムの抵抗とフロントの逃げ
経営陣が金勘定に奔走する一方で、現場の防波堤となったのはルベン・アモリム監督だった。スポルティングCPからやってきた新指揮官は、ブルーノこそが自身のプロジェクトに不可欠であると断固として主張した。
「監督は僕と話してくれた。まだプロジェクトの一部だと言ってくれたし、残ってほしいと言ってくれた」
だが、ここでブルーノはさらに踏み込んだ発言を残している。それは、首脳陣の優柔不断さと責任転嫁に対する強烈な皮肉だ。
「クラブは僕に出て行ってほしかったんだ。僕の頭の中にはそれがある。取締役たちにもそう伝えたよ。でも思うに、彼らにはその決断を下す勇気がなかったんだ。なぜなら、監督が僕を望んでいたからね。もし僕が『出て行きたい』と言っていたら、彼らは喜んで手放していただろう」
つまり、首脳陣は「ファンからの反発」や「監督との対立」を恐れ、自らの手で売却のボタンを押すことを避けたに過ぎない。ブルーノが自ら退団を志願するという形を待ち望んでいたのだ。責任を選手側に押し付け、金銭的な利益だけを享受しようとする。その卑怯な姿勢こそが、主将の心を最も深くえぐった。
「自分は評価されていると思っていたし、僕を最も評価してくれるのは自分のクラブでなければならない。だが最近は、まるで薄氷の上を歩いている気分だ。」
2027年まで契約を延長し、表向きは和解したように見える。だが、「薄氷の上」という表現が示す通り、信頼関係は崩壊寸前だ。いつまた氷が割れ、冷たい水の中に突き落とされるかわからない。そんな恐怖と疑念を抱えながら、彼は今日もキャプテンマークを巻いている。
個人的な見解
ブルーノ・フェルナンデスの口から「金が何よりも重要」という言葉が出たこと、これ自体がマンチェスター・ユナイテッドというクラブの敗北を意味する。
歴史あるクラブの魂は、いつから損益計算書の数字に置き換わってしまったのか。31歳の選手に対し、将来への投資として売却を検討すること自体は、現代フットボールの経営判断として否定はしない。しかし、そのプロセスがあまりにもリスペクトを欠いている。
選手は敏感。自分が「戦力」として見られているのか、それとも「商品」として見られているのかを、言葉の端々や態度から瞬時に感じ取る。ブルーノが感じた「家具」のような扱い。
これは、今のユナイテッドが選手を人間として見ていない証左であり、その冷徹な空気は必ずロッカールーム全体に伝染する。「次は自分が売られる番かもしれない」。若手選手たちがそう感じた瞬間、ピッチ上の献身性は消え失せ、チームは崩壊への道を歩むだろう。
アモリム監督が彼を引き留めたのは、戦術的な理由だけではないはず。苦しい時にチームを鼓舞し、泥にまみれることができるリーダーの不在がどれほど致命的かを知っているからだ。
経営陣は、監督の「勇気」に救われたことを恥じるべきだ。もしあの時、小切手に目がくらんでブルーノを手放していたら、今の順位すら維持できていなかっただろう。ボーンマス戦のゴールは、経営陣に対するブルーノの意地であり、「俺を安売りしようとしたお前たちは間違っている」という無言のメッセージに他ならない。
だが、一度入ったヒビはそう簡単には埋まらない。この冬、あるいは来年の夏、再び「巨額の金」が積まれた時、今度こそ薄氷は割れてしまうのではないか。そんな危惧を抱かずにはいられない。
