「カンプ・ノウの魔力に惑わされるな」同胞DFがダニエル・ムニョスに説く、アンフィールド行きこそが正解である戦術的必然

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2025年の冬が到来し、再び移籍市場の喧騒がフットボール界を包み込もうとしている。ロンドンの南部、セルハースト・パークで異彩を放つ一人のコロンビア代表DFダニエル・ムニョスの周辺が騒がしい。

クリスタル・パレスでの約2年間でプレミアリーグ屈指の攻撃的右サイドとしての地位を確立した彼に対し、欧州の盟主たちが熱視線を送っているのは公然の事実。バルセロナ、そしてリヴァプール。

この究極の二択を前に、かつてプレミアリーグとセリエAでサイドラインを駆け抜けた元コロンビア代表MFフアン・スニガが口を開いた。彼の主張は極めて明確そのもの。「バルセロナのブランドに目が眩んで死ぬな、リバプールで生きろ」というものである。

「85試合」が証明するプレミア適性

2024年1月、ヘンクから800万ユーロという現代においては端金とも言える移籍金でロンドンへやってきたムニョスに対し、懐疑的な視線がなかったわけではない。しかし、オリヴァー・グラスナー監督の下で水を得た魚のように躍動した彼は、この2025年12月現在までに公式戦通算85試合に出場。

そこで記録した「10ゴール・14アシスト」という数字は、彼がディフェンダーという登録上の枠組みを完全に破壊している事実を突きつける。

彼のプレーエリアは右サイド全体。自陣深くでの守備から相手ボックス内への侵入まで、そのすべてを90分間繰り返す。この異常なまでの上下動と、フィジカルコンタクトを厭わない闘争心こそが、彼がプレミアリーグで成功した最大の要因。

スニガが現地メディア『Caracol Radio』のインタビューで強調したのは、まさにこの点である。「ダニエルのスタイルを鑑みれば、私は迷わず彼をリヴァプールに置く」。この言葉は、単なる希望的観測ではない。選手の生理的な特質とリーグの土壌に関する鋭い洞察を含んでいる。

スニガは続けた。「ダニエルは非常に活動的で、スペースを攻撃することに長けている。だからこそ、彼をプレミアリーグに留めておきたいのだ」。ここには、イングランド特有の高いインテンシティへの適応力が示されている。攻守が目まぐるしく入れ替わり、広大なスペースが瞬時に生まれては消えるプレミアリーグの環境こそ、ムニョスの野生的な推進力が最も脅威となる舞台なのだ。

バルセロナという「檻」

一方で、スニガはバルセロナへの移籍に対して明確な懸念を示した。「バルセロナの遅攻、メソッド重視のスタイルは彼に合わない。彼らはボールを保持し、行き来させるプレミアムなスタイルだが、ムニョスはもっとアタッカー気質だ」。

非常に的確な指摘だ。バルセロナが求めるサイドバックには、常に「止める・蹴る」の極めて高い技術と、複雑なポジショニングの理解が求められる。偽サイドバックとして中盤の底でパスを散らす、あるいは大外で幅を取りながら味方のインナーラップを待つといった「譜面通り」のタスクは、ムニョスの最大の魅力である理屈抜きの突撃を殺しかねない。

ムニョスは、戦術盤の上で駒を動かすように制御されることを好まないタイプ。彼のゴールやアシストの多くは、戦術的な崩しというよりも、彼自身の嗅覚と走力で強引にこじ開けた結果生まれている。

バルセロナのような緻密なオーケストラの一員として、指揮者のタクトに合わせて小さな音を奏でるよりも、彼には独奏が許されるロックバンドの方が似合う。スニガの「バルサに行けば、彼は持ち味を失う」という警告は、過去にカンプ・ノウへ渡り、自身のスタイルを見失って消えていった多くの実力者たちの姿と重なる。

アンフィールドが求める「縦への矢」

では、なぜリバプールなのか。スニガが「ボックス・トゥ・ボックスの展開が多いチームこそが彼に合う」と断言するように、リバプールのフットボールは伝統的に「縦への速さ」を生命線としている。

ユルゲン・クロップが去り、アルネ・スロット体制となって久しいが、アンフィールドに根付くインテンシティの文化は変わらない。ボールを奪った瞬間に全員がゴールへ向かってスプリントを開始するあの光景の中に、ムニョスの姿は違和感なく溶け込む。

特に現在のリバプールにおいて、右サイドの構成は常に議論の的。コナー・ブラッドリーやジェレミー・フリンポンらがポジション争いを繰り広げているものの、ともにコンディション調整に苦労しており、絶対的な信頼を寄せるには至っていない。

29歳という年齢で手を出すかは未知数だが、無尽蔵のスタミナを搭載するムニョスはサイドライン際を暴走する重戦車として機能する。負傷で離脱することも珍しく、安定した右サイドバックとしてプレーしてくれるだろう。

ムニョス自身はレアル・マドリードやバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドへの憧れを隠さない。しかし、憧れと適性は別物である。クリスタル・パレスで積み上げた85試合の実績は、彼がイングランドの水に完全に適応している。ここから環境をガラリと変え、言語も文化もフットボールの質も異なるスペインへ渡るリスクは計り知れない。

クリスタル・パレス側はすでに、ムニョスの流出に備えて後継者候補をリストアップしているとも報じられている。ロンドン側が別れの準備を始めている以上、決断の時は迫っている。自身のキャリアを最高到達点へ導くために必要なのは、クラブのエンブレムの輝きではなく、「自分が最も輝けるピッチ」を選ぶ冷静な判断力だ。

個人的な見解

フアン・スニガの提言は、近年の移籍市場において多くの選手が犯してきた過ちに対する強烈なアンチテーゼだ。代理人の甘い言葉や、子供の頃からの憧れといった感情論で移籍先を選び、ベンチで腐っていった才能を我々は嫌というほど見てきた。

ムニョスにはそうなってほしくない。その一心で、スニガは「リヴァプールへ行け」と叫んでいるのだと思う。

個人的にも、ムニョスのリヴァプール入りは戦術的に非常に理にかなった補強だと確信している。アンディ・ロバートソンの全盛期を彷彿とさせるような無尽蔵のスタミナで上下動を繰り返すタイプの右サイドバックが不足している。コナー・ブラッドリーは素晴らしい才能だが、ムニョスが持つ南米特有の狡猾さや、ゴール前での決定力という点では、現時点ではムニョスに分がある。

何より、戦える選手だ。アンフィールドのサポーターは、華麗なテクニックを持つ選手よりも、泥臭く走り、体を投げ出してチームのために戦う選手を愛する。

ムニョスがリヴァプールのシャツを着て、KOPスタンドの前で強烈なタックルを決める姿、あるいはファーサイドへ飛び込んでヘディングを叩き込む姿は、あまりにも鮮明に想像できる。

バルセロナからの関心は名誉だろう。だが、プレミアリーグでこれほどの実績を残し、脂が乗り切っている今、あえてペースの遅いリーグへ行く必要がどこにあるのか。世界最高峰のリーグで、世界最高峰のインテンシティを持つクラブへステップアップする。

これこそが、ダニエル・ムニョスというフットボーラーが選ぶべき、唯一にして王道のシナリオだ。もし彼がこの冬、あるいは来夏に赤いユニフォームを選ぶなら、私はその決断を諸手を挙げて歓迎する。彼こそが、我々の右サイドに新たなダイナミズムを注入するラストピースになり得るのだから。