マージーサイドの凍てつく寒風よりも冷徹な現実が、リヴァプールサポーターの頬を叩いた。アンフィールドの歴史に深く刻まれた王の足跡が、今まさに音を立てて崩れ去ろうとしている。事の発端は、モハメド・サラー自らが投下した爆弾発言に他ならない。
アルネ・スロット監督による起用法を公然と批判し、あろうことかクラブから追い出されかけていると示唆したあのインタビューは、功労者に対する敬意を欠いた現体制への明確な反旗だ。これほどまでに荒んだ空気がクラブを覆ったことは、過去8年間の栄光を振り返っても一度としてなかった。
ユヴェントス急襲の現実味とリヴァプールが直面する劇薬の代償
トルコ人ジャーナリストであるエクレム・コヌール氏が報じた最新の情報は、マージーサイドにさらなる衝撃を与えている。セリエAの巨人ユヴェントスが、この極限まで悪化した関係を逆手に取り、モハメド・サラーの獲得に向けて牙を剥いている。
ビアンコネーリの狙いはあまりに露骨。彼らは現在、サイド攻撃における決定的な質不足に喘いでおり、1月の市場で即効性のある補強を何が何でも完遂させたい考え。33歳となったエジプトの王にとって、イタリアは未知の地ではない。
かつてASローマで圧倒的な才覚を証明し、プレミアリーグへ再上陸するための足場を固めた馴染み深い場所だ。ユヴェントスはこの冬、移籍金の支払いも辞さない構えでリヴァプールの足元を揺さぶり続けている。
一方で、リヴァプールは岐路に立たされている。8年前にわずか3900万ユーロという破格の投資で獲得した男は、数々のトロフィーをもたらし、イングランドの地で伝説となった。しかし、今シーズンのパフォーマンスには、かつての爆発的な躍動感は影を潜めている。
アルネ・スロットが構築した新たな規律と組織の中では、サラーがこれまで享受してきた特権的な振る舞いは許されない。先週末のブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン戦でベンチから送り出された際の、あの冷え切った表情こそが、両者の間に横たわる埋めがたい溝を白日の下に晒している。
スロットは選手個人の実績よりも現在の戦術適応度を冷徹に優先しており、その手法がプライド高き王の逆鱗に触れた。攻撃陣の主軸であるはずの男が、一兵卒として扱われることに耐えかね、外の世界に活路を求めたとしても、それを誰が責められようか。
PSGの沈黙と王を巡る欧州覇権争いの行方
この騒乱を冷徹に見つめているのはイタリアのクラブだけではない。フランスの覇者、PSGもまたモハメド・サラーの動向を克明に記録している。しかし、エクレム・コヌール氏の分析によれば、PSGの戦略はユヴェントスとは対照的に極めて慎重だ。
彼らは今冬の無謀な争奪戦に加わるのではなく、来夏のマーケットでの獲得を見据えて準備を進めている。すでにUEFAチャンピオンズリーグを制し、名実ともに欧州の頂点に立ったパリ・サンジェルマンにとって、サラーは短期的な救世主ではなく、王者としての権威を維持し、さらなる高みを目指すための熟練したピースとなる。
リヴァプールにとっての悲劇は、代わりがいないという一点に尽きる。チャンピオンズリーグ出場権を死守しなければならない後半戦に向けて、どれほど監督との不和があろうとも、サラーが持つ一瞬の魔法に頼らざるを得ないのが現状。
もし1月にユヴェントスの誘いに乗って彼を放出すれば、戦術的な整合性は取れるかもしれないが、肝心のゴールネットを揺らす術を失う。一方で、不満を抱えたままの王を残留させることは、チーム全体の士気を下げ、アンフィールドの平穏を根底から破壊するリスクを孕む。
クラブの上層部は、ビジネスとしての冷徹な判断と、サポーターが抱くレジェンドへの愛情との間で、かつてないほどに追い詰められている。
個人的な見解
リヴァプールがこの冬にモハメド・サラーを手放すことは、自ら敗北を宣言するに等しい愚行。確かに、かつてのキレを失いつつある33歳のベテランを高く売れるうちに処分するという考え方は、経営学的な観点では理に適っているのかもしれない。
しかし、フットボールは数字だけで動くものではない。モハメド・サラーという存在がピッチに立っているだけで相手DFに与える心理的重圧、そしてKOPが彼に寄せる絶大な信頼こそが、絶体絶命の窮地を何度も救ってきたのだ。
アルネ・スロット監督は、自身の戦術の正当性を証明するためにエースを犠牲にするのではなく、彼を懐柔し、その牙を再び研ぎ澄ませるべきだ。
もし1月の移籍が現実のものとなれば、リヴァプールというクラブが歩んできた誇り高き歴史の断絶を意味する。サポーターは、フロントの計算高い動きではなく、王が再び情熱を燃やし、赤いユニフォームを纏ってゴールを量産する姿を渇望している。
たとえ夏に契約満了で別れる運命だとしても、それは満員のアンフィールドでの万雷の拍手と、鳴り止まないチャントの中で行われるべきだ。
今、リヴァプールに必要なのは冷酷な刷新ではなく、功労者に対する最大限のリスペクトと、共闘を誓い合う熱い握手であるはず。
