チェルシーがこの夏の移籍市場で積極的に若手選手の放出に動いている。その中心にいるのが、コブハム育ちの19歳DFジョシュ・アチャンポンだ。育成組織出身で将来を嘱望された選手であるにもかかわらず、クラブはすでに完全移籍による売却に向けて準備を進めているという。
背景にあるのは、エンツォ・マレスカ監督の構想と、クラブが直面する財政的な課題。英『Football Insider』によれば、かつてマンチェスター・ユナイテッドなどでスカウトを務めたミック・ブラウン氏が、マレスカ監督はアチャンポンをトップチーム戦力として評価しておらず、実際に昨季も起用に消極的だったと明かしている。
アチャンポンは昨年末に2029年までの新契約を締結し、2024-25シーズンには公式戦12試合に出場。クラブワールドカップの舞台にも立ったが、ポジション内の競争が激しい右サイドではレギュラー奪取に至っていない。
クラブはすでに彼へのオファーを前向きに受け入れる方針を固めていると報じられており、代理人とクラブ双方が移籍の可能性を高めるために情報を流している可能性も指摘されている。
注目すべきは、チェルシーの選手整理が単なる陣容の刷新にとどまらない点だ。アチャンポンのようなホームグロウン選手を売却することは、プレミアリーグが定めるPSR(収益性と持続可能性に関する規則)への対応としても有効な手段となる。育成選手の移籍金は全額を純利益として計上できるため、クラブの収支バランス改善に直結するからだ。
トッテナムやニューカッスル・ユナイテッドが関心?
現時点でアチャンポンには、トッテナムやニューカッスルが強い関心を示しているとされる。ニューカッスルはトリッピアーの去就が不透明で、すでにティノ・リヴラメントやルイス・ホールといった元チェルシー勢の獲得に成功していることもあり、右SBのバックアップとしてアチャンポンを視野に入れている可能性が高い。
一方トッテナムも、ペドロ・ポロの控えとなる若手を探しており、出場機会を求めるアチャンポンにとっては魅力的な選択肢になり得る。かつてはリヴァプールやウェストハムも彼に興味を示していたとされており、そのポテンシャルはリーグ内でも高く評価されている。
なお、チェルシーは今夏、アチャンポンだけでなくクリストファー・エンクンクの売却にも動いている。ミック・ブラウン氏によると、ブンデスリーガの複数クラブがエンクンクの獲得に名乗りを上げており、数週間以内に正式なオファーが届く可能性が高いという。
クラブは今後も戦力の整理を進めつつ、ジョアン・ペドロに続く新戦力の獲得を視野に入れている。これにより、マレスカ監督の哲学に沿ったチーム構築を進め、戦術面での一貫性を高めることが狙いとされる。
財政的な規律と戦力の最適化という二つの課題に対し、冷静かつ戦略的に取り組む姿勢が、今後の成功に繋がるかどうかの試金石となるだろう。