移籍市場の熱が一層高まるなか、ロンドンの名門チェルシーが注目株モーガン・ロジャースの獲得に向けて動き出したと、英『The Sun』が報じた。アストン・ヴィラの22歳に設定されている評価額は8000万ポンドにまで膨れ上がるとされ、クラブはこの移籍を成立させるためにあらゆる手段を講じる構えだ。
ロジャースは、昨年にミドルズブラからヴィラに加入したばかりの攻撃的ミッドフィルダー。移籍金はわずか1500万ポンドに過ぎなかったが、半年足らずでその評価は数倍に跳ね上がった。プレミアリーグでは8ゴール11アシストを記録し、ヴィラのヨーロッパリーグ出場権獲得にも大きく貢献。さらにイングランド代表としてもすでに4試合に出場し、急成長を続けている。
チェルシーとの過去の対戦でも結果を残しており、すでに2ゴールを奪取。対戦相手としても十分に厄介な存在だったロジャースだが、今後はスタンフォード・ブリッジでその力を振るう可能性が出てきた。
しかし、移籍の実現には複雑な背景がある。チェルシーは今夏、すでにジョアン・ペドロ、リアム・デラップ、ジェイミー・ギッテンズらに計1億3000万ポンド以上を投じており、財政面では大きな負担を抱えている。UEFAからはファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規則違反による罰金も課され、選手登録には売却益による帳簿調整が不可欠な状況だ。
現状では、ペドロら新戦力を来季の欧州大会に登録するためにも、移籍収支を均衡させる必要があるとされており、大型補強の裏には選手売却という犠牲がつきまとう。
一方、アストン・ヴィラもまた財政の健全化という壁に直面している。プレミアリーグのPSR(利益と持続可能性規則)やUEFAの収支基準を満たすため、主力の放出を避けられない可能性がある。特に、CL出場を逃したことで2025-26シーズンの収入は減少が見込まれ、経営陣は苦渋の決断を迫られている。
ロジャースを手放す代わりに、オリー・ワトキンス、エミ・マルティネス、レオン・ベイリーといった面々の売却による資金調達も検討されているが、現時点では十分なオファーが届いていない模様。最終的に、最も高い市場価値を持つロジャースの売却に踏み切るシナリオが現実味を帯びてきている。
ニコラ・ジャクソンの動向が引き金に?
さらに興味深いのは、アストン・ヴィラのウナイ・エメリ監督が、かつてビジャレアルで指導していたチェルシーのニコラ・ジャクソンに関心を示している点だ。
両クラブは選手のトレードではなく、あくまで別個の取引を模索しており、これはFFPの観点からも合理的だとされている。しかしながら、ヴィラがジャクソン獲得に正式なオファーを出した場合、チェルシーがロジャースへの入札に踏み切る“引き金”となる可能性も示唆されている。
アストン・ヴィラはこれまで、今夏の補強において目立った動きを見せていない。新たな戦力を迎え入れるためには、誰かを放出しなければならない。その筆頭候補がロジャースであることは言うまでもなく、資金繰りのための「現金化」は、戦力維持とクラブ経営の両立を図るうえで避けられない選択肢となりつつある。
交渉は長期化する可能性が高いと見られ、8月いっぱいまでに決着を見ない可能性もある。資金調達に追われるチェルシー、財政規律に縛られるヴィラ、それぞれが抱える課題の中で、この移籍がどのような形に収束するのか注目がせざるを得ない。