チェルシーからノニ・マドゥエケを獲得し、攻撃陣を強化したアーセナルは、スポルティングCPからスウェーデン代表FWヴィクトル・ギェケレシュ獲得間近とされ、順調に補強は進んでいる。また、中盤にはマルティン・スビメンディやクリスティアン・ノアゴールらも迎え入れた。
しかし、クラブはさらなる攻撃力の強化を視野に入れており、移籍市場における複雑な連鎖反応の中心に身を置いている。現在の焦点は、クリスタル・パレスのエベレチ・エゼとニューカッスル・ユナイテッドのアンソニー・ゴードンであると、英『football.london』が報じた。
前者については契約解除金6750万ポンドの支払いが必要とされており、選手の獲得にはまず既存戦力の放出が不可欠と見られている。一方、ゴードンに対しては以前から明確な関心を示してきたとされるが、交渉は一筋縄ではいかない。
その背景には、同じくニューカッスルに所属するスウェーデン代表FWアレクサンデル・イサクの動向が深く関わっている。リバプールがイサクの獲得に迫っており、その移籍金は英国史上最高額となる可能性すらある。アーセナルがギェケレシュに舵を切ったのも、このイサク争奪戦を静観していたからにほかならない。
だが、もしリバプールがイサクを本当に引き抜けば、ニューカッスルがゴードンまで同時に手放すことは極めて考えにくい。すでにクラブはノッティンガム・フォレストからアンソニー・エランガを補強しているが、これはゴードンの代役ではなく、あくまで両ウイングの層を厚くするための動きと見られている。
よって、イサクの動向次第では、アーセナルが長らく追い求めてきたゴードン獲得の道は閉ざされる可能性もある。
ニューカッスルがイサク放出によって1億ポンドを超える資金を手にしたとしても、すぐさま代替となるストライカーをブンデスリーガなど他リーグから確保できる保証はない。これまでにもターゲットの獲得に失敗してきた現状を考えれば、二人の主力を同時に放出するリスクはあまりにも大きい。
ギョケレス加入で見えた一筋の光と、残された課題
アーセナルにとって、ヴィクトル・ギェケレシュとの合意は確かな一歩だ。新たな9番候補として、クラブの未来を背負う可能性すら秘めたこのストライカーは、今季の戦術オプションを一気に広げる存在になる。すでに獲得に至ったと報じる声もあり、残すは公式発表を待つのみといった段階にある。
しかし、それだけでは不十分だ。クラブが攻撃陣の補強において真に満足するには、さらにもう一手が必要となる。エゼのような違いを作れる選手の確保、そしてゴードンのようにプレミアリーグで即戦力となるタレントの獲得は、その仕上げとして理想的な存在だ。
ただし、これらの補強は現有戦力の整理と表裏一体。フロント陣はすでに数名の放出に向けて動いているとされるが、まだ目に見える成果は少ない。さらに、ニューカッスルのイサクに関する一連の動きが、ゴードン獲得という「パズルの最後のピース」を左右するという点において、事態はより複雑な様相を呈している。
ギェケレシュという待望の点取り屋を得たアーセナルにとって、残るエゼやゴードンの行方は、今季の成績をも左右する重要な要素になるかもしれない。