今夏の移籍市場でも動きを止めないマンチェスター・ユナイテッドが、ノッティンガム・フォレストが獲得に迫っていたボローニャ所属のスイス代表ウィンガー、ダン・エンドイェに対し、約3500万ポンドのオファーを準備していると報じられた。
この報道を伝えたのは仏メディアの記者セバスチャン・ヴィダル氏。既にフォレストが個人合意を済ませ、クラブ間交渉も最終段階に入っていた中、ユナイテッドが突如として“割り込み”を試みたと伝えている。
昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドは、リーグ戦15位というクラブ史に残る低調な成績に終わり、ヨーロッパリーグ決勝も落とすなど、ファンの忍耐力を試す1年となった。昨季途中から指揮を執るルベン・アモリム監督の下で再出発を図るが、その移籍戦略はどこか場当たり的で、明確なチームビジョンが見えてこない。
これまでにもマテウス・クーニャやブライアン・ムベウモの獲得に資金を投じ、さらに若手有望株のディオゴ・レオンまで加えた。しかし、これら補強が即座に機能する保証はなく、攻撃面の再建は依然として道半ばといえる。
エンドイェは24歳のウィンガーで、主に右サイドを主戦場としながら、セカンドトップでもプレー可能な万能型。鋭いカットインと推進力を武器に、ボローニャでのブレイクを果たし、スイス代表としてもコンスタントに招集を受けている。アモリムが採用する3-4-2-1のシステムであれば、トップ下やサイドの一角でフィットする余地はある。
正念場の移籍市場…ユナイテッドの狙いは明確か、それとも錯綜か
しかし、今回の報道に対しては、懐疑的な声も少なくない。既に大型補強を進めてきたクラブが、さらなる出費を行う余裕があるのかは不透明だ。特に、欧州カップ戦への出場権を逃したことで収益が減少する見通しであり、クラブ内部ではコスト削減が急務とされている。
エンドイェへの3500万ポンドという金額は、アントニーやサンチョといった既存の高額ウィンガーが退団しない限り、財政的な整合性に欠けるとも指摘されている。クラブは今夏、売却による資金回収に動いていると報じており、補強を進めるにはまず放出が前提となる。
さらに、昨季不振に終わったラスムス・ホイルンドや、守護神アンドレ・オナナの不安定なパフォーマンスを考えれば、本来優先すべきはストライカーやゴールキーパーの補強だという見方も根強い。
今回のエンドイェを巡る動きが実現するかは、今後の放出次第ともいえる。フォレストに対する強奪劇が成立するには、資金の裏付けが不可欠。
目指すべきは再建か、それとも話題性の確保か。ユナイテッドの今夏の補強方針は、そのどちらとも取れる曖昧なもので、クラブ全体の迷走ぶりを象徴しているようにも映る。