マンチェスター・シティの右サイドが、いま大きな転換点を迎えようとしている。カイル・ウォーカーがバーンリー移籍し、かつての爆発的な推進力を持つ背番号2の姿は、エティハド・スタジアムから消えた。
その後継者として、ペップ・グアルディオラが心を寄せているのが、ニューカッスル・ユナイテッドに所属する22歳のディフェンダー、ティノ・リヴラメント。
英『TBR Football』は、マンチェスター・シティが今夏、リヴラメントに対して6月に提示した4,000万ポンドのオファーを上回る、5,000万ポンド超の新たなアプローチを仕掛けたと報じた。
彼はただの若手ではない。リヴラメントは今年のU-21欧州選手権でイングランド代表のキープレイヤーとして輝きを放ち、並外れたドリブルスキルとポジショニング感覚で注目を集めた。カイル・ウォーカー自身も評価しており、その才能には折り紙付きだ。
“未来の右サイド”を巡る攻防…シティの本気度とニューカッスルの抵抗
グアルディオラは現在、ミッドフィルダーであるマテウス・ヌネスを右サイドバックとして“応急処置”的に起用している。この状況は彼の理想とは程遠い。トランジションの速さとプレッシングを重視する戦術において、右サイドの爆発力は必須であり、ウォーカーのような縦への推進力を持つプレーヤーの不在は致命的ですらある。
そのため、リヴラメントは最優先ターゲットとして位置づけられている。彼のプレースタイルは、チェルシー時代に培ったボール保持の冷静さと、サウサンプトンで見せたアグレッシブな対人守備を融合したもの。
身長は1m82と平均的ながら、空中戦の競り合いにも強く、サイドからのカットインにも対応できる。リヴラメントを起点に攻撃を組み立てるという、ペップのビルドアップの青写真にはぴたりとハマる人材。だが、その計画には一つ、大きな障害が立ちはだかっている。
同紙によれば、ニューカッスルはイングランド代表の期待の星を絶対に手放さないという強い意志を示している。さらに、リヴラメントの代理人側と接触し、契約延長と大幅な給与引き上げを通じて彼をクラブのトップ給与層へと押し上げようとしているのだ。
単なる慰留ではなく、リヴラメントを将来のキャプテン候補とみなし、長期的なプロジェクトの中核とする姿勢を明確にした動きと言える。
リヴラメントがダメなら──シティが狙う“次の一手”
仮にニューカッスルの守備が突破できなかった場合、マンチェスター・シティは代替案も既に準備。シティがユヴェントスのアンドレア・カンビアーゾとニコロ・サヴォーナの両選手に注目していると報じている。いずれも右サイドバックに加え、攻撃的な場面ではウイングバックや中盤での起用も可能な多機能型プレーヤーであり、ペップ・グアルディオラ好みの柔軟性を備えている。
特に興味深いのは、サヴォーナに対してニューカッスルも関心を寄せているという点。リヴラメントを手放さず、なおかつ新たなディフェンスオプションを求める両クラブが、皮肉にも同じ選手を巡って交差する形となっている。
さらに今夏、シティはインテル所属のデンゼル・ダンフリースから打診を受けていた。約2,000万ポンドの契約解除条項が7月中旬で失効したものの、シティはこれに対して動かなかった。年齢やスタイルがペップの志向と合致しなかったのか、あるいは他の選手に比べて戦術的適合性が低いと判断された可能性もある。
マンチェスター・シティは、ペップ・グアルディオラのもとで最先端の戦術を展開するクラブであり、プレーヤーのキャリアにおける飛躍の場としても理想的な環境を提供する。だが、ニューカッスルもまた、エディ・ハウの下で着実に成長を遂げており、プレミアリーグの新たな勢力として地位を確立しつつある。
マンチェスター・シティがこの若き才能に賭ける想いは、並々ならぬもの。果たして、未来のイングランド代表DFは来季もイングランド北部に留まるのか、もしくはマンチェスターに新天地を求めるのか。