2025-26シーズンが開幕したエヴァートンで、一人の若き右サイドバックが脚光を浴びている。ノリッジ・シティの21歳、ケレン・フィッシャーだ。今年1月にエヴァートンに復帰したデイビッド・モイーズ監督が、チャンピオンシップで躍動する逸材に熱視線を送っている。
フィッシャーという名前を聞いて即座にピンとくるプレミアリーグファンは、まだそれほど多くないかもしれない。しかし、昨シーズンのチャンピオンシップでの彼のパフォーマンスは、間違いなく上のレベルでも通用することを証明している。
41試合という出場数が物語るのは、若干21歳にして既にノリッジの中核を担っているという事実だ。4アシストという数字も、攻撃的サイドバックとしての資質を如実に示している。
フィッシャーが魅せるチャンピオンシップでの存在感
英『Football Insider』の報道によると、エヴァートンはフィッシャーの獲得に向けて本格的に動き出す構えを見せている。その背景には、モイーズ監督が描く戦術的ビジョンと、現在のエヴァートンが抱える右サイドバックのポジション事情が密接に関わっている。
フィッシャーの最大の魅力は、その汎用性にある。右サイドバックを本職としながらも、左サイドバック、さらにはセンターミッドフィールドでもプレー可能な戦術的柔軟性を持つ。ブロムリーから2023年夏にノリッジへと移籍してきた彼は、まさに現代サッカーが求めるユーティリティプレイヤーの典型と言える。
イングランドU-20代表として3回の出場経験を持つフィッシャーは、昨シーズンにはヨハネス・ホフ・トルプ前監督の下で飛躍的な成長を遂げた。チャンピオンシップという厳しい環境で38試合に出場し、4つのアシストを記録したその実績は、プレミアリーグのクラブが注目するに十分な説得力を持っている。
新シーズンでは8月10日のミルウォール戦で途中出場を果たしており、新監督リアム・マニングの下でも重要な戦力として期待されている。
現在のエヴァートンの右サイドバック事情を見ると、フィッシャー獲得の必要性が浮き彫りになる。シェーマス・コールマンは今夏1年間の契約延長を結んだものの、37歳という年齢を考えれば後継者の育成は急務。ネイサン・パターソンは怪我に悩まされ続けており、現在は本来センターバックのジェイク・オブライエンが右サイドバックのバックアップを務めている状況だ。
エヴァートンの移籍戦略とモイーズの構想
1月にエヴァートンに復帰したモイーズ監督は、11年半ぶりの古巣復帰を果たし、2年半の契約を結んでいる。61歳の名将は、現在のクラブ状況を冷静に分析し、長期的な視点での戦力構築を進めている。今夏の移籍市場では、チェルシーからキアナン・デューズバリー=ホール、ビジャレアルからティエルノ・バリー、バイエルン・ミュンヘンからアダム・アズヌを獲得するなど、着実に戦力を整えている。
フィッシャーの獲得は、この一連の補強戦略の重要なピースとなる。特に注目すべきは、彼の年齢と成長ポテンシャルだ。21歳という若さでありながら、既にチャンピオンシップで一定の実績を残している選手は、プレミアリーグへの適応も期待できる。さらに、2028年まで契約を結んでいるという事実は、ノリッジが彼を高く評価している証拠でもある。
エヴァートンの右サイドバック補強を巡っては、セビージャのサンチェス・ベラスコの名前も浮上していたが、同選手がナポリ移籍を選択したため、フィッシャーへの関心が高まったという経緯がある。
現在のところ、エヴァートンとノリッジの間で具体的な交渉は行われていないものの、トフィーズ側は近々アプローチを開始するとみられている。ノリッジにとってフィッシャーの移籍は大きな損失となるため、相当な移籍金を要求してくることが予想される。契約期間の長さを考慮すれば、ノリッジが交渉において優位なポジションにいることは間違いない。
フィッシャーにとって、プレミアリーグへのステップアップは願ってもない機会だろう。チャンピオンシップからプレミアリーグへの昇格は、多くの選手にとって大きな魅力となる。特に、モイーズという経験豊富な監督の下でプレーできる機会は、彼のキャリアにとって大きなプラスとなるはず。
個人的な見解
フィッシャーのようなタイプの選手こそ、現在のエバートンが必要としている人材だと確信している。技術的にも戦術的にも柔軟性を持ち合わせた若手選手は、モイーズ監督の手によってさらに大きく成長する可能性を秘めている。彼の獲得が実現すれば、エバートンの右サイドは向こう数年間安泰となるだろう。
また、フィッシャーの多様性は、モイーズ監督の戦術的選択肢を大幅に広げることになる。ミッドフィールドでもプレー可能という特性は、試合中の戦術変更や怪我人対応において極めて有効だ。
現代サッカーにおいて、このような選手の価値は計り知れない。モイーズ監督は1月の復帰以降、着実にチーム再建を進めており、フィッシャーのような将来性豊かな選手の獲得は、新スタジアム移転を控えたエバートンの長期的な成功に不可欠な要素となるはずだ。