ルベン・アモリム監督就任から初の夏の移籍市場で、マンチェスター・ユナイテッドが前線だけではなく、中盤にも手を加えようとしている。ブライトンの若き中盤の逸材、カルロス・バレバへの本格的なアプローチだ。
英『The Athletic』のデイビッド・オーンスタイン記者によると、既にマテウス・クーニャ、ブライアン・ムベウモ、ベンヤミン・シェシュコに総額2億ポンド超を投じた今夏における、さらなる大型補強への意欲を示している。
ユナイテッドは仲介者を通じてブライトンと接触し、バレバ獲得の条件を探っているという。しかし状況は決して楽観視できるものではない。「ブライトンは今夏の売却を計画しておらず、全ての関係者が移籍は非現実的かもしれないと認識している」と分析している。
それでもユナイテッドが諦めない理由は明確だ。21歳のカメルーン代表MFは、アモリムが求める理想的なミッドフィルダーの条件を全て満たしているからである。
The Athleticが明かす交渉の現実と困難
英『The Athletic』の「Week In Football」番組でオーンスタインが語った内容は、この移籍劇の複雑さを物語っている。「我々が報じたのは、ユナイテッドが仲介者を通じてブライトンとバレバの取引可能性の条件を探るために接触したということだ。彼は素晴らしい選手だ」と、オーンスタインはバレバの実力を認めつつも、現実的な課題を指摘した。
最も重要なのは、ブライトンの明確な意思表示。「まず第一に、ブライトンは2025年夏の売却を認可する意図はない。彼らが会話の中で明確にしたのは、少なくともあと1年は彼を手元に置いておきたいということだ」と、オーンスタインは説明している。バレバは2028年まで契約を結んでおり、さらに12ヶ月の延長オプションも付いている状況。
さらに興味深いのは、ブライトンの内部評価。同記者が明かしたところによると、「ユナイテッドはバレバの価格を提示されていないが、ブライトンは彼がいつかモイセス・カイセドと同じくらいの価値を持つと信じている」そうだ。カイセドは2023年にチェルシーに1億1500万ポンドで売却されており、この評価がバレバの将来価値を示唆している。
財政的現実とアモリムの戦術的ビジョン
ユナイテッドの財政状況について、オーンスタインは現実的な見方を示している。「オールド・トラッフォード側が多数の有利な売却を確保できない限り、前線とナンバー6のポジションで高額な補強を行う余裕はないのが非現実的だ」と、移籍実現の困難さを指摘している。
英『The Athletic』の編集者でライターでもあるアンディ・ミッテン氏も、「バレバは絶対的な保証ではないと思う。純粋に財政的理由からだ」と慎重な見方を示している。彼はさらに、「妥協が必要になるだろう。ブライトンにとって魅力的なユナイテッドの選手もいるかもしれない」と、選手交換の可能性についても言及している。
しかし、それでもアモリムがバレバに固執する理由は明白。オーンスタインは選手の能力について、「彼の持つ才能、ボックス・トゥ・ボックスの動き、足の速さ、若さ、そして質は、エンジンルームを変革できる」と高く評価している。これこそが、アモリムの戦術システムにおいて不可欠な要素なのだ。
最新の動向として、ユナイテッドは最初の選手プラス現金のオファーをブライトンに拒否されたが、オーンスタインは「今後数日でこの状況が発展するかどうかが明らかになるはずだ」と、交渉の行方に注目している。
個人的な見解
英『The Athletic』のオーンスタインという信頼性の高い記者が一貫して「非現実的(improbable)」という表現を使っていることが、この移籍劇の困難さを物語っている。しかし、それでもユナイテッドが追求を続けているという事実は、アモリムのプロジェクトにおけるバレバの重要性を示している。
この報道で最も印象的だったのは、ブライトンがバレバを「いつかカイセドと同じくらいの価値を持つ」と評価している点。これは決して法外な期待ではなく、バレバの現在のパフォーマンスと将来性を考慮すれば妥当な評価といえる。プレミアリーグで2シーズンを戦い抜き、ファビアン・ヒュルツェラー監督の下で成長を続ける21歳の逸材に対する適正評価なのかもしれない。
もう一つ注目すべきは、ミッテンが指摘した「妥協」の必要性だ。これまでのユナイテッドなら、欲しい選手には満額を支払うという姿勢だったが、新体制下では戦略的な交渉が求められている。
選手交換を含めた創造的な取引構造の構築が、この移籍の成否を決める鍵となるだろう。アレハンドロ・ガルナチョへのチェルシーの関心など、複数の要素が複雑に絡み合う中で、INEOS時代の新たな移籍戦略が試されているのかもしれない。