エベレチ・エゼという創造性の化身を失ったクリスタル・パレスが、早くも次なる一手を打とうとしている。Fabrizio Romano氏によれば、イーグルスはヴィジャレアルに所属する22歳のスペイン代表ウィンガー、ジェレミ・ピノへの関心を具体化させ、すでにコンタクトを開始したという。
アーセナルに横取りされたエゼの穴を埋めるべく、オリバー・グラスナー監督率いるパレスが仕掛ける逆襲劇の幕が上がった。
ピノという選択肢が示すパレスの新戦略
パレスは既にヴィジャレアルに対してピノの獲得条件について正式な打診を行っている。6700万ポンドという高額な違約金が設定されているものの、パレス側はそれを大幅に下回る金額での交渉を目指していると伝えられている。
エゼとピノ、一見すると異なるタイプの選手だが、グラスナーのシステムにおける適応性という点で興味深い共通項がある。エゼが左サイドからカットインして中央でプレーメイクすることを得意としていたのに対し、ピノは右サイドから内側に切り込む逆足のドリブラーとして知られる。この左右のバランス調整により、パレスの攻撃陣により多彩性をもたらす可能性を秘めている。
ラ・リーガでの豊富な経験を持つピノは、10代でデビューを果たして以来、ヴィジャレアルの主力として活躍し続けてきた。スピードと技術、そして1対1での勝負強さを兼ね備えた彼のプレースタイルは、フィジカルなプレミアリーグでも十分に通用するポテンシャルを感じさせる。
特に、狭いスペースでのボールコントロールとカットイン時の決定力は、エゼが残した創造性の一部を補完できるかもしれない。
ヨーロッパ挑戦を見据えた戦略的補強
今回のピノ獲得に向けた動きは、パレスにとって歴史的なシーズンを迎える上での重要な分岐点となりそうだ。クラブ史上初となるUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ参戦を控え、国内リーグとの両立を図るためにはスカッドの厚みが不可欠となる。
グラスナー監督が構想する攻撃的なサッカーにおいて、ピノのような多彩なポジションでプレー可能な選手は極めて価値が高い。右ウィング、左ウィング、さらには10番ポジションでもプレー経験のあるピノなら、怪我人続出時の緊急事態にも対応できる。これはヨーロッパの舞台で戦う上で、戦術的な柔軟性を保つ意味でも重要な要素だ。
しかし、ヴィジャレアル側が簡単に手放すとは考えにくい。黄色い潜水艦は近年、若手の育成と売却で安定した経営を続けており、ピノのような将来性豊かな選手には相応の対価を求めてくるはずだ。パレス側としては、エゼ売却で得た資金を如何に効率的に活用できるかが成功の鍵を握っている。
個人的な見解
パレスのピノ獲得は理にかなった選択だと感じている。エゼのような唯一無二の才能を完全に代替できる選手は存在しないが、ピノが持つ異なる武器によって新たな攻撃パターンを構築できる可能性は十分にある。
特に、右サイドからの切り込みという要素は、これまでパレスが持っていなかった攻撃オプションであり、相手チームにとって新たな脅威となるだろう。
ただし、6700万ポンドという違約金設定を考えると、現実的な落としどころを見つけるのは容易ではない。パレスの財政状況とヴィジャレアルの売却意欲のバランスが、今回の交渉の成否を分けることになりそうだ。
仮に獲得が実現すれば、パレスファンにとってエゼ流出の痛手を癒やす希望の光となり、ヨーロッパの舞台での躍進にも大きく貢献することは間違いない。移籍締切まで残り僅かな時間の中で、グラスナー監督とクラブ首脳陣の手腕が問われる正念場を迎えている。