移籍市場ラストスパート、ビラがモザンビークの逸材ジェニー・カタモに決断の時

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移籍市場ラストスパート、ビラがモザンビークの逸材ジェニー・カタモに決断の時 Aston Villa

移籍市場の砂時計が最後の粒を落とそうとする中、アストン・ビラがスポルティングCPのジェニー・カタモ獲得に向けた最終攻勢を仕掛けている。ポルトガル紙『A Bola』によると、ビラとフェネルバフチェがモザンビーク代表ウィンガーを巡る激しい競り合いを繰り広げており、本格的なオファーを準備している段階まで交渉が進んでいる。

24歳のカタモは昨シーズン、スポルティングの主力として48試合に出場し、7得点5アシストという堅実な数字を残した。しかし、この統計だけでは表現しきれないのが、彼のビッグマッチでの勝負強さだ。特にライバルのベンフィカ戦では2度の決勝ゴールを決めており、プレッシャーのかかる場面での冷静さは既にポルトガルリーグで証明済みである。

エメリ監督が率いるビラにとって、カタモ獲得は戦力補強の枠を超えた戦略的意図がある。マーカス・ラッシュフォードとマルコ・アセンシオの相次ぐローン放出、さらにはレオン・ベイリー退団する中で、ウィンガーポジションの薄さは深刻な問題となっている。

カタモの市場価値と交渉の現実

スポルティングはビラの2000万ユーロオファーに対し、500万から1000万ユーロの上積みを要求している。現実的な落としどころとして2500万から3000万ユーロを狙っている。一方、ビラサイドは財政的制約を考慮しながらも、この価格帯での決着を模索している状況のようだ。

この価格設定には複雑な背景がある。カタモの経済的権利の75%を保有するアモーラFCが500万ユーロでの権利売却を求めており、さらにかつてスポルティングの交渉窓口を務めていたウーゴ・ヴィアナがマンチェスター・シティに移籍したことで、交渉プロセスが一時停滞していた。

競合関係も重要な変数となっている。ジョゼ・モウリーニョが指揮を執るフェネルバフチェは、ベンフィカのケレム・アクトゥルコールへの関心をあきらめたことで、カタモへのアプローチを本格化させている。トルコの移籍市場が9月13日まで続くことを考えれば、フェネルバフチェには時間的優位性がある。

エメリ監督の戦術的計算とカタモの適性

エメリ監督はカタモに何を期待しているのか。昨シーズンの戦術分析を紐解くと、その答えが見えてくる。カタモは左右両サイドでプレー可能な汎用性を持ち、時にはウイングバックとしても機能した経験を持つ。これはエメリ監督が好む戦術的柔軟性に完全に合致する要素となる。

各ポジションに2人の選手を配置できる構造を目指すと明言した監督にとって、カタモのような多機能性を持つ選手は理想的な補強対象となる。ベイリー放出後の左サイド、そしてラッシュフォードとアセンシオ放出後の攻撃的ポジションの両方をカバーできる選手は、現在の市場では希少価値が高い。

スピードとテクニックを兼ね備えたカタモのプレースタイルは、プレミアリーグの激しいフィジカルコンタクトにも対応できるポテンシャルを秘めている。モザンビーク代表として33キャップを誇る国際経験も、ビラにとっては魅力的な要素の一つだろう。

移籍市場終了まで残り1週間余り。金曜日にスポルティングのルイ・ボルジェス監督がカタモの状況について問われた際、ベルナルド・モライス・パルメイロ強化部長に聞いてほしいと答えたことからも、移籍の可能性は決してゼロではない。

ビラがチャンピオンズリーグ再出場を目指すシーズンに向けて、カタモという戦力を手に入れることができるのか。この駆け引きの行方は、ビラの来季の戦略そのものを左右する重要な分岐点となりそうだ。

個人的な見解

カタモにとってプレミアリーグは次のステップアップとして理想的な舞台であり、一方のビラも即戦力として期待できる選手を獲得できる。2000万ユーロという価格も、現在の移籍市場の相場を考えれば妥当な線だ。スポルティングが求める追加500万から1000万ユーロも、ビラの財政状況を考えれば捻出不可能な金額ではない。

ただし、懸念材料もある。ビラのPSR(プロフィット・アンド・サステナビリティ・ルールズ)への配慮は現実的な制約であり、チャンピオンズリーグ出場権を逃した今、財政的な余裕は以前より限られている。

カタモ獲得が実現したとしても、それが他の補強計画に影響を与える懸念は拭えない。移籍市場終了間際のこのタイミングでの大型補強は、エメリ監督の来季構想における優先順位を如実に物語っている。モンチ・スポーティングディレクターが休暇は9月まで取れないと語ったように、ビラの夏はまだ終わらない。