移籍市場終盤戦に突如現れた巨大な波紋が、サッカー界全体を揺さぶっている。パリ・サンジェルマンのジャンルイジ・ドンナルンマとマンチェスターシティの交渉が遂に本格始動し、昨日には代理人エンツォ・ライオラがマンチェスター入りを果たした。
Fabrizio Romano氏が伝える通り、個人条件合意には既に至っており、残る焦点は両クラブ間での移籍金交渉に絞られている。
🚨 Gigio Donnarumma has agreed on personal terms with Manchester City, keen on joining Pep Guardiola.
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 24, 2025
Negotiations are also underway between Man City & PSG, fee will be under initial €50m request.
❗️ Deal still depends on Éderson exit this summer, with Galatasaray still keen. pic.twitter.com/4HYxRZsTRs
この数日間で状況は劇的に進展した。8月22日を境にPSGとシティの直接対話が開始され、当初PSG側は5000万ユーロを要求しており、シティとPSGとの間で交渉が進んでいる。
契約最終年のドンナルンマを来夏フリーで失うリスクを抱えるPSGにとって、この価格帯は現実的な妥協点となっている。Football Italiaが報じるように、交渉の行方は想像以上に順調で、移籍実現への障壁は着実に取り除かれつつある。
この移籍はエデルソンの去就に依存しないケースとして進行している。ガラタサライからの1000万ユーロという低額オファーに対し、シティが3500万ユーロの評価を維持している現状では、ブラジル人キーパーの移籍は難航必至となっている。
それでもシティがドンナルンマ獲得を推進する背景には、来夏の契約満了を控えるエデルソンの長期的な後継者確保という戦略的判断がある。
ペップ構想に潜む戦術的革命
ペップ・グアルディオラが描くドンナルンマ起用プランは、従来のゴールキーパー像を根底から覆すものになる可能性を秘めている。現在22歳を迎えるジェームズ・トラフォードとの競争構図は表面的な話に過ぎず、真の狙いは戦術システムの多様化にある。
エデルソンが体現してきた「第11のフィールドプレーヤー」という概念を、ドンナルンマがより洗練された形で継承するシナリオが現実味を帯びている。
しかし、この移籍には専門家からの懐疑的な声も上がっている。PSG事情に精通するジュリアン・ローレンス氏は、ドンナルンマの足元技術とクロス対応能力に疑問を呈し、プレミアリーグでの苦戦を予想している。
だが、ドンナルンマ自身の意欲は疑う余地がない。代理人ライオラが公言するように、プレミアリーグは彼のキャリアにとって理想的なステップアップの舞台となる。
特にペップ・グアルディオラとの協働に対する憧憬は強烈で、新天地での挑戦に向けた準備は万端と伝えられている。PSGでの4年間で積み上げた実績は申し分なく、リーグ・アン4回制覇、チャンピオンズリーグ優勝という輝かしい成果を誇る。
PSG内部の冷酷な決断が転機に
ドンナルンマを取り巻く環境激変の震源地は、ルイス・エンリケ監督の非情な判断にある。UEFAスーパーカップでのスタメン落ちは氷山の一角に過ぎず、リールから4000万ユーロで獲得したルカス・シェヴァリエへの世代交代方針は不動のものとなった。
エンリケ監督が求める「異なるプロファイル」という言葉の裏には、ドンナルンマのプレースタイルに対する根本的な不満が透けて見える。
PSG首脳陣の計算も冷徹だ。年俸削減と出場連動型ボーナス制度を盛り込んだ契約延長オファーは、事実上の戦力外通告に等しい。これまでクラブ史上最高の成功を築き上げてきた功労者に対する処遇としては、あまりにも酷薄な内容と言わざるを得ない。ドンナルンマがSNSで失望と落胆を表明したのも無理からぬ話だ。
この状況がシティにとって千載一遇のチャンスを生み出している。通常なら8000万ユーロ級の選手を半額に近い金額で獲得できる可能性は滅多にない。PSGの内部事情が生み出した隙間を突く形での補強劇は、移籍市場の醍醐味そのものと言える。
個人的な見解
この移籍劇を追いながら感じるのは、現代サッカーにおけるゴールキーパーの存在意義がいかに変貌を遂げたかということ。
かつてはシュート阻止が最重要任務だったポジションが、今やチーム戦術の根幹を左右する司令塔的役割を担っている。ドンナルンマクラスの選手が5000万ユーロで動く時代は、ゴールキーパー市場の成熟を象徴している。
ペップ・グアルディオラにとって、この補強は来シーズン以降の長期構想における重要なピースとなるはずだ。エデルソンとの併用システムが実現すれば、相手チームや試合状況に応じた戦術的選択肢が飛躍的に拡大する。
イタリア代表キャプテンの経験値とプレミアリーグ未経験という新鮮さのバランスは、シティにとって魅力的な要素だ。移籍期限まで残り1週間を切った今、この夏最後のビッグディールが現実のものとなる瞬間が刻一刻と近づいている。