ロンドン・スタジアムに吹く新たな風が、思わぬ方向から舞い込んできた。グラハム・ポッター監督率いるウェストハムユナイテッドが狙いを定めたのは、かつて自らが育て上げたイヴ・ビスマの獲得だった。2500万ポンドでトッテナムに売却してからわずか3年、この28歳のマリ代表ミッドフィルダーを巡る状況は劇的に変化している。
英『TBR Football』の独占情報によると、ビスマは8月13日のUEFAスーパーカップでのパリ・サンジェルマン戦を規律上の理由で欠場し、トーマス・フランク新監督との関係に亀裂が生じている。
6月に就任した新指揮官フランク監督の下で完全に構想外となったビスマを、スパーズは移籍市場最終週に向けて放出を急いでおり、ハマーズはこの機会を見逃すつもりはない。
ポッター監督の古巣愛が導く運命の再会
エドソン・アルバレスのフェネルバフチェ移籍により、ウェストハムの中盤は急速に薄くなった。2025-26シーズン開幕戦でサンダーランドに0-3で敗北、第2節でチェルシーに1-5で惨敗という屈辱的なスタートを受け、今年1月に就任したポッター監督は即座に中盤強化に動き出している。その矛先が向かったのが、ブライトン時代に3年間指導したビスマだった。
2019年から2022年まで、アメックス・スタジアムでポッターの戦術的指導を受けたビスマは、プレミアリーグ有数のボックストゥボックス・ミッドフィルダーへと成長した。1試合平均2.3回のタックル成功率と88%のパス成功率を記録し、ブライトンの中盤の心臓部として機能していた。ポッター監督はビスマの運動量と戦術理解度を高く評価しており、再びタッグを組むことで相乗効果を期待している。
ビスマがポッター・システムの核となるプレスとカウンターアタックに完璧に適応する。1試合あたりのインターセプト数4.1回は、当時リーグトップクラスの数字を記録していた。ウェストハムが求める守備的安定性と攻撃参加のバランスを併せ持つ選手として、ビスマは理想的な補強候補となっている。
フランク新体制で構想外、ハマーズの救世主となるか
トッテナムでのビスマの立場は、ジョアオ・パリーニャの加入により一変した。ポルトガル代表のフラム退団は夏の大型移籍の一つだったが、その影響でビスマは完全に構想外となってしまった。プレミアリーグ開幕2試合連続でベンチにも入れず、ロドリゴ・ベンタンクール、ルーカス・ベリバル、パペ・マタール・サール、アーチー・グレイといった選手たちの後塵を拝している。
この状況はビスマにとって屈辱的な転落そのものだ。昨季はポステコグルー前監督の下でヨーロッパリーグ優勝の立役者としてプレーしていたが、6月に就任した新指揮官フランク監督の戦術構想から完全に外れてしまった。
クラブ側も移籍市場最終1週間での放出を強く望んでおり、ローン移籍という選択肢も視野に入れている。
一方で、ウェストハムにとってビスマの獲得は複数の課題を一気に解決する魅力的なオプションとなる。まず守備面では、アルバレス退団により空いた穴を確実に埋めることができる。また攻撃面でも、ビスマの前線へのランニング能力は、ジャロッド・ボーウェンやカラム・ウィルソンとの連携で新たな得点パターンを生み出す可能性を秘めている。
ポッター監督は現在厳しい立場に置かれており、次の2試合で結果を出せなければ解任の可能性もあると報じられている。この状況下でのビスマ獲得は、監督自身のキャリアを賭けた勝負となる可能性が高い。実際、カレン・ブレイディ副会長がポッター監督を擁護するコメントを出すほど、クラブ内部でも議論が分かれている状況だ。
個人的な見解
この移籍はビスマのキャリアにとって最良の選択肢だと考えている。トッテナムでの現状を考慮すれば、プレー機会を求めての移籍は避けられない。特にポッター監督との再会は、彼の持つポテンシャルを最大限引き出す絶好の機会となるはずだ。ブライトン時代のビスマは、ポッターの指導下で最も輝いていた時期でもあった。
また、ウェストハムの現在の状況を鑑みても、ビスマの加入は即戦力として大きなインパクトをもたらすだろう。チェルシー戦での5失点惨敗は、中盤の守備力不足を露呈した試合でもあった。ビスマの持つ豊富な運動量と戦術眼があれば、ポッター監督が目指すハイプレス・システムを機能させる重要なピースとなり得る。
移籍市場最終1週間に向けて、この電撃移籍が実現する可能性は決して低くない。両者にとってWin-Winの関係を築ける理想的な移籍案件として、今後の動向に注目が集まっている。
特に、ポッター監督にとってはクラブでの立場を安定させるための重要な補強となる可能性が高く、一方のビスマにとっても恩師の下でキャリアを再構築する絶好の機会となるだろう。