移籍市場が閉幕まで残り時間が少ない中、ブレントフォードがPSVの司令塔ヨエイ・フェールマンに対し、2500万から3500万ユーロという破格のオファーを提示した。 オランダ紙『Voetbal International』のティム・リーダイク記者が報じたこのニュースは、オランダサッカー界に大きな波紋を呼んでいる。
26歳のフェールマンは、昨季エレディヴィシーで既に1ゴール8アシストという圧倒的な創造性を発揮しており、その市場価値は約2500万ユーロと評価されている。
PSVが2022年にヘーレンフェーンから600万ユーロで獲得した才能豊かなミッドフィルダーは、3年間でクラブの中核選手へと成長を遂げた。しかし、今回の報道によると、今回のブレントフォードのオファーは「PSVを完全に吹っ飛ばすものではない」とされ、オランダのクラブは簡単には手放さない構えを見せている。
ブレントフォードの戦術的野心とフェールマンの適性
ブレントフォードは今夏、既にフェイエノールトからアントニ・ミランボを2000万ユーロで獲得し、アヤックスからジョーダン・ヘンダーソンを無料で迎え入れるなど、オランダ系選手への投資を積極的に進めている。キース・アンドリュース監督率いる同クラブにとって、フェールマンの獲得は中盤の創造性を大幅に向上させる戦略的な一手となる。
フェールマンは今季27試合で84.75%という高いパス成功率を記録し、その卓越したビジョンと配球能力でPSVの攻撃を牽引してきた。特に注目すべきは、彼のプレースタイルがブレントフォードの戦術コンセプトと見事に合致することだ。同クラブが重視するポゼッションベースのサッカーにおいて、フェールマンの正確なパスワークとゲームメイク能力は即戦力として機能するだろう。
さらに、ブレントフォードには既にセップ・ファン・デン・ベルフという元リバプールのオランダ人ディフェンダーが在籍しており、フェールマンにとって適応しやすい環境が整っている。プレミアリーグという新天地への挑戦に前向きな姿勢を示している26歳の国際経験豊富なミッドフィルダーにとって、これ以上ない好機と言える。
移籍市場締切直前の緊迫した駆け引き
今回の移籍劇で最も興味深いのは、そのタイミングの絶妙さだ。プレミアリーグの移籍市場は9月1日月曜日に閉幕するため、ブレントフォードには実質的に3日間しか残されていない。この時間的制約こそが、PSVにとって最大の交渉カードとなっている。
PSVのピーター・ボス監督は、フェールマンを簡単に手放すつもりはないと明言している。特に、マウロ・ジュニオールの負傷という緊急事態が発生した現在、中盤の核となる選手を失うリスクは計り知れない。
一方で、フェールマン自身は昨季「ブライトンのようなクラブ」への移籍は考えていないと発言していたが、その後のパフォーマンス低下もあり、現在のブレントフォードオファーは彼にとって現実的な選択肢となっている。16回のオランダ代表キャップを持つ経験豊富なミッドフィルダーにとって、プレミアリーグでの挑戦は長年の夢でもある。
移籍が実現すれば、PSVには最大3500万ユーロの移籍金が入り、フェールマンの元クラブであるフォレンダムには105万ユーロの育成補償金が支払われる予定だ。また、ヘーレンフェーンも売却益の一定割合を受け取る権利を持っており、この移籍は複数のクラブに恩恵をもたらすことになる。
個人的な見解
この移籍話を見ていて感じるのは、フェールマンという選手が持つ独特なポジションの難しさだ。彼は確実にエールディヴィジーレベルを超える才能を持っているが、同時に欧州トップリーグでレギュラーを務めるには、まだ一皮むける必要がある選手でもある。
昨季の停滞期を経て、今季は確実に復調の兆しを見せているだけに、このタイミングでの移籍は彼のキャリアにとって重要な分岐点となるだろう。
ブレントフォードという選択は、フェールマンにとって理想的なステップアップの舞台かもしれない。トーマス・フランク前監督時代から築き上げられた戦術的基盤と、プレミアリーグでの安定した地位を確立したクラブで、彼は真の国際的な選手へと成長できる可能性を秘めている。
PSVファンとしては手放したくない選手だが、フェールマンのキャリアを考えれば、この機会を逃すのは惜しいという複雑な心境が正直なところだ。移籍市場の残り時間は少ないが、両クラブの最終決断に注目していきたい。