プレミアリーグの移籍市場に、また一つ興味深いストーリーが浮上している。クリスタル・パレスがRBライプツィヒのオーストリア代表MFクリストフ・バウムガルトナー獲得に向けて動き出した。
この移籍劇の鍵を握るのは、パレスを率いるオリバー・グラスナー監督の存在である。同じオーストリア出身のバウムガルトナーを南ロンドンに呼び寄せたいという強い意向が、この興味深い移籍話の原動力となっている。
ドイツ人ジャーナリストのフロリアン・プレッテンベルク記者によると、パレスとスペインのビジャレアルがバウムガルトナーに関心を寄せているものの、まだ正式なオファーは提出されていない段階だという。しかし、ライプツィヒ側の事情を考慮すると、移籍ウィンドウが9月1日夜7時に閉じるまで残り3日を切った現在、この移籍話が急展開を見せる可能性は十分にある。
バウムガルトナーを取り巻く複雑な状況
現在26歳のバウムガルトナーは、オーレ・ヴェルナー新監督の構想から完全に外れてしまっている。オーストリア代表として51試合に出場した実績を持つ攻撃的ミッドフィルダーが、今季のライプツィヒでは2試合ともベンチスタートという屈辱的な扱いを受けている。
この状況は、バウムガルトナーの市場価値にも直接的な影響を与えている。2023年夏にホッフェンハイムから2550万ユーロで加入した時点では2400万ユーロの評価を受けていたが、現在はその半分の1200万ユーロまで下落している。
しかし、これは必ずしも能力の低下を意味するものではない。むしろ戦術的なミスマッチと出場機会の不足が主な要因であり、適切な環境に移れば本来のパフォーマンスを発揮する可能性は十分にある。
ライプツィヒが抱える構造的問題も、この移籍を後押ししている。クラブは現在34人という異常に大きなチームを抱えており、ブンデスリーガで最大規模となっている。
給与面での負担軽減のため、移籍ウィンドウ終了までに3〜4人の選手を放出する必要に迫られている。ティモ・ヴェルナーやルトシャレル・ヘールトルイダといった高給取りの選手たちも同様の状況にあり、バウムガルトナーの移籍は避けられない流れとなっている。
グラスナー監督の戦術的意図
パレスのグラスナー監督がバウムガルトナーに注目する理由は、同胞意識を超えた戦術的な必然性がある。グラスナーが好む攻撃的な4-2-3-1システムにおいて、バウムガルトナーのような創造性豊かな攻撃的ミッドフィルダーは欠かせない存在。
バウムガルトナーの最大の武器は、狭いスペースでのボールコントロールと瞬時の判断力にある。ホッフェンハイム時代には、セバスティアン・ヘーネスの下で中央のプレーメーカーとして才能を開花させ、2022-23シーズンには14ゴール6アシストの好成績を記録している。
プレミアリーグの激しいフィジカルコンタクトにも対応できる身体能力を持ちながら、ドイツで培った戦術的な理解力も兼ね備えている。パレスが求める創造性とダイナミズムを両立できる選手として、グラスナー監督の目に留まったのは自然の流れ。
この移籍が実現すれば、パレスにとっては大きな戦力アップとなる。現在のチームには、バウムガルトナーのような典型的なプレーメーカーが不足しており、攻撃の起点となる選手の獲得は急務だった。
一方で、バウムガルトナー自身にとってもプレミアリーグは新たなチャレンジの舞台として理想的だ。グラスナー監督の下でキャリアの再起を図り、来年のワールドカップ予選に向けて代表での地位を確固たるものにする絶好の機会となるだろう。
ビジャレアルとの競争は予想されるものの、グラスナーとの既存の関係性とプレミアリーグの魅力を考えると、パレス移籍の可能性が高い。移籍金も現実的な範囲に収まっており、双方にとってウィンウィンの取引となる。バウムガルトナーがセルハースト・パークで新たな章を開くかどうか、移籍ウィンドウ終了まで目が離せない状況が続く。
個人的な見解
この移籍は非常に理にかなったものだと考えている。グラスナー監督は昨季パレスを大幅に改善させた手腕の持ち主であり、彼が求める選手の質を見極める能力は疑う余地がない。
バウムガルトナーの能力は決して疑問視されるべきものではなく、適切な環境と指導者を必要としていただけだ。ライプツィヒでの停滞は一時的なものに過ぎず、プレミアリーグという新天地で本来の輝きを取り戻すことは十分に可能だろう。
さらに言えば、この移籍は選手獲得以上の意味を持つ。パレスが目指すヨーロッパ圏内での戦いを見据えた場合、バウムガルトナーのような国際経験豊富な選手の存在は計り知れない価値がある。
彼の加入により、パレスの攻撃陣は一段と厚みを増し、来季のプレミアリーグでさらなる躍進を遂げる可能性が高まる。移籍市場の最終局面で、この興味深い移籍劇がどのような結末を迎えるのか、サッカーファンとして非常に楽しみにしている。