アーセナルが手放したがっている才能豊かなポルトガル人ミッドフィールダー、ファビオ・ビエイラを巡る移籍戦争が白熱の様相を呈している。
独『Sky Sports Germany』のフロリアン・プレッテンベルク記者が報じたところによると、ウェストハムがこの25歳の創造的な中盤の獲得レースに電撃参戦したという。デッドライン・デーまで残り2日となった今、果たしてビエイラの新天地はどこに決まるのか。
🚨⚒️ Understand West Ham have entered the race for Fábio #Vieira!
— Florian Plettenberg (@Plettigoal) August 30, 2025
Departure before Deadline Day is still planned. VfB Stuttgart also admire the versatile Portuguese midfielder from Arsenal, but he’s currently too expensive.
Another top Bundesliga club playing in the Champions… pic.twitter.com/TjjlcCLRdI
2022年夏に約35億円という巨額でポルトからエミレーツ・スタジアムにやってきたビエイラだが、ミケル・アルテタ監督の戦術構想には決してフィットしなかった。
昨シーズンは古巣ポルトへのレンタル移籍で42試合に出場し5ゴール6アシストという堅実な数字を残したものの、アーセナルでの将来は完全に閉ざされている。プレシーズンツアーからも除外されたビエイラは、クラブの放出リストに確実に名前が載っている状況。
ハマーズが狙う中盤再構築の野心的プラン
グレアム・ポッター監督率いるウェストハムにとって、ビエイラ獲得はチーム戦術の根幹を揺るがす大胆な賭けとなる。今季序盤のパフォーマンスを見る限り、ジェームズ・ウォード=プラウスやトマーシュ・ソーチェクといった既存の中盤陣は、ポッター監督が描く創造性とダイナミズムに満ちたフットボールを体現できていない。
ビエイラの真骨頂は、その芸術的なパス配球と中距離からの鋭いシュート精度にある。ポルトでのレンタル期間中、彼は攻撃の最終局面での冷静な判断力を遺憾なく発揮してみせた。ウェストハムが今季直面している攻撃面での深刻な課題、特に相手ディフェンスラインを破綻させるクリエイティビティの枯渇を考慮すると、ビエイラの技術的な洗練度は即座に戦力となるだろう。
しかし、ウェストハムの電撃参戦により、この移籍劇は予測不可能な展開を迎えている。これまで最有力候補と目されていたシュツットガルトは、アーセナルが提示した約30〜35億円の移籍金を法外と判断し、上限を約20億円程度に設定して交渉の難航を招いている。
プレッテンベルク氏によれば、シュツットガルト以外にも名前を伏せられた複数のチャンピオンズリーグ出場ブンデスリーガクラブが熱視線を送っているが、いずれも金銭面での隔たりが埋まらない膠着状態が続く。
アーセナル財政再建戦略の核心的要素
アーセナルにとってビエイラの売却は、余剰戦力の単純な整理を遥かに超えた戦略的重要性を帯びている。今夏の大型補強により急激に膨れ上がった移籍支出を相殺するため、クラブは積極果敢な選手売却路線を推進している。オレクサンドル・ジンチェンコやリース・ネルソンなど複数の選手が放出候補として俎上に載る中、ビエイラの移籍金は財政健全化への重要な起爆剤となる。
注目すべきは、バイエルン・ミュンヘンもビエイラを獲得候補として密かにリストアップしているという情報。ただし、バイエルンはマックス・エーベルの明言通り、ローン契約での獲得方針に固執しているため、アーセナルの完全売却戦略とは根本的に相容れない構造になっている。
一方、ウェストハムならば完全移籍での獲得も現実的な選択肢として検討しているため、アーセナルの意向により合致する可能性が高い。
プレッテンベルク氏の最新報告が物語るように、デッドライン・デーまでに何らかの劇的な動きが生じることは疑いようがない。ビエイラ自身も新天地での復活を切望しており、各クラブとの水面下交渉は秒進分歩で進行していると予想される。
ウェストハムがビエイラ獲得に成功した暁には、ポッター監督の戦術により豊かな多様性と斬新な創造性が注入されることになる。一方で、シュツットガルトやバイエルンといったドイツ勢の巻き返しも完全に排除できない。特にシュツットガルトは、ニック・ウォルトメイドのニューカッスル移籍により手にした潤沢な資金を武器に、最終局面での逆転劇を仕掛けてくる可能性も十分に残されている。
この激動の移籍劇の帰結は、ビエイラの選手生命だけでなく、関係各クラブの今後の戦略構想にも甚大な影響を及ぼすことになる。プレミアリーグで再び閃光を放つか、それともブンデスリーガでの全く新しい挑戦を選択するか。ファビオ・ビエイラの運命的な決断に全世界のサッカーファンが固唾を呑んで見守っている。
個人的な見解
ビエイラの移籍劇は現代フットボールにおける戦術的適応性の決定的重要さを鮮烈に浮き彫りにする象徴的事例だと確信している。
彼の卓越した技術力は疑問の余地がないにもかかわらず、アーセナルでの苦境は戦術システムとの化学反応が選手のキャリア軌道に与える絶大な影響力を如実に証明している。
アルテタが要求する苛烈なプレッシング強度と守備時の厳格な規律に対し、ビエイラが体現する創造性第一主義のプレースタイルが根本的に水と油の関係にあったことは火を見るより明らかだ。
ところが、ウェストハムという舞台であれば、彼の眠れる才能が完全覚醒を遂げる可能性は極めて高い。ポッター監督の戦術哲学は選手固有の個性を最大限に尊重し開花させることに真骨頂があり、ビエイラが秘める絶妙なパス感覚とゴールへの嗅覚を余すところなく引き出せる理想的な環境が整っている。
今回の移籍劇が実現の運びとなれば、ビエイラにとって選手人生の大きな転換点となり、ウェストハムにとっては中盤における質的飛躍の起爆装置となる。移籍市場の最終局面まで秒読み段階に入った今、この世紀の大型移籍がいかなるフィナーレを迎えるのか。