エティハド・スタジアムの中心で、ひとりの男がクラブの命運を握っている。ロドリ。28歳、現バロンドール保持者、そして世界最高峰の守備的MF。
彼の契約は2027年まで残っているが、マンチェスター・シティはすでに延長交渉を加速させている。背景には、レアル・マドリードが来夏の最優先補強ターゲットとして彼をリストアップしている事実がある。
シティは、ロドリをエルリング・ハーランドに次ぐ高額サラリーで引き留める用意がある。延長が成立すれば2029年までの契約となり、クラブの中盤支配はさらに盤石になる。
しかし、スペインの首都から届く誘いは、単なる移籍話ではない。母国復帰、ラ・リーガ制覇、そしてサンティアゴ・ベルナベウでの新たな挑戦という魅力が、彼の心を揺さぶっている。
マンチェスター・シティが描くロドリ中心の未来
ロドリは2019年にアトレティコ・マドリードから加入して以来、シティの戦術的中枢を担ってきた。昨季は前十字靭帯断裂からの復帰を果たし、再び中盤の支配者として君臨。
パス成功率93%超、1試合平均90回以上のボールタッチ、そして守備面ではリーグ屈指のデュエル勝率を誇る。これらの数字は、彼がただの守備的MFではなく、攻撃の起点であり試合のテンポを操る指揮者であることを示している。
ペップ・グアルディオラの戦術において、ロドリは「不可欠」という言葉すら足りない存在だ。彼がピッチに立つと、シティは高い位置でのボール保持と即時奪回を両立できる。逆に彼を欠いた試合では、ビルドアップの精度が落ち、守備の切り替えも遅れる傾向が顕著になる。昨季のブライトン戦での敗戦は、その象徴的な一例だ。
クラブはこの夏、イルカイ・ギュンドアンやマヌエル・アカンジら主力を放出し、エデルソンもフェネルバフチェへ移籍。新戦力ジャンルイジ・ドンナルンマの加入で守備陣は刷新されたが、中盤の安定感はロドリの存在に依存している。
レアル・マドリードが仕掛ける中盤再編計画
レアル・マドリードは、中盤の再構築に取り組んでいる。すでにジュード・ベリンガムを中心とした新体制を構築しつつあるが、守備的MFのポジションは依然として補強が必要だ。ロドリはその条件に完璧に合致する。
スペイン代表としての経験、ラ・リーガでの実績、そしてビッグマッチでの安定感。マドリードは彼を「次の黄金期の軸」と位置づけており、獲得には1億ユーロ超の移籍金を用意する可能性が高い。
さらに、ペップ・グアルディオラが2025年限りで退任する可能性があるとの報道も、マドリード側の期待を高めている。監督交代は選手の去就に大きな影響を与える要因であり、ロドリにとってもキャリアの方向性を見直す契機となり得る。
個人的な見解
ロドリの去就は、シティとマドリードという二大クラブの戦略が正面からぶつかる稀有なケースだ。
シティに残れば、プレミアリーグでの支配を継続し、グアルディオラの哲学を体現する象徴的存在として歴史に名を刻むだろう。一方で、マドリードに移れば、母国での新たな挑戦と欧州制覇の可能性が広がる。
私の見立てでは、ロドリがどちらを選ぶかは、今季のシティの成績とペップの去就が大きく影響する。
もしシティが再び欧州の頂点に立ち、ペップが続投すれば、延長の可能性は高まる。しかし、監督交代や成績不振が重なれば、マドリード行きのシナリオは一気に現実味を帯びる。いずれにせよ、2025-26シーズンは彼のキャリアにおける分岐点となることは間違いない。