セビージャの中盤で躍動するフランス人の23歳MFルシアン・アグメが、今やプレミアリーグの補強の最前線に立っている。
インテル・ミラノで将来を嘱望されながらもレンタル移籍を繰り返し、安住の地を見つけられなかった選手が、スペインで再び評価を高め、今夏の移籍市場でブライトンの最重要ターゲットとなった。ブライトンはカルロス・バレバの退団に備え、アグメ獲得に全力を注いでいると、スペイン紙『Fichajes』が報じた。
ブライトンが求める“攻守の心臓”
ファビアン・ヒュルツェラー監督の下、ブライトンは戦術的な柔軟性と攻守のバランスを兼ね備えた中盤を再構築しようとしている。バレバがマンチェスター・ユナイテッドからの強い関心を受けている今、後継者探しは急務だ。その候補として浮上したのがアグメである。
アグメの魅力は、守備的MFとしての強度と、後方から試合を組み立てる配球力の両立にある。セビージャではアンカーとして相手の攻撃を刈り取り、素早く縦に展開するプレーで攻撃のスイッチを入れてきた。プレッシングを受けても慌てず、ワンタッチで前線にボールを供給できる冷静さは、プレミアの激しいトランジションにおいて大きな武器になる。
ブライトンは今夏、ディエーゴ・コッポラやマキシム・デ・カイペルといった将来性豊かな選手を獲得しつつ、ジョアン・ペドロやシモン・アディングラら主力を放出している。
総支出は約6880万ポンド、総収入は約8490万ポンドと黒字を確保しており、アグメ獲得に必要な2000万ポンド前後の資金は十分に用意できる状況。ヒュルツェラー監督は、アグメを新たな中盤の軸として据え、攻守両面でチームの心臓部を担わせる構想を描いている。
プレミアリーグ移籍を巡る駆け引き
アグメにはブライトンだけでなく、アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドも関心を寄せている。アーセナルはミケル・アルテタの下で中盤の層を厚くするため、アグメをマルティン・スビメンディやデクラン・ライスのパートナー候補としてリストアップ。ユナイテッドはカゼミーロの後継者探しが急務で、アグメのフィジカルと戦術理解度を高く評価している。
しかし、ブライトンには他クラブにはない強みがある。それは、即戦力としての出場機会と、成長を促す環境だ。アグメがアメックス・スタジアムにやって来れば、開幕から中盤の主力として起用される可能性が高い。
若手の成長を促すクラブ文化と、プレミアでの経験を積める舞台は、キャリアの次のステップを模索する彼にとって魅力的に映ることは間違いない。
セビージャは財政面の理由から売却を検討しており、アグメ自身もプレミア移籍に前向きとされる。交渉の行方は、ブライトンの動きの速さと説得力にかかっている。
アグメのプレースタイルは、現代サッカーの中盤に求められる要素を高いレベルで備えている。185cmの長身を活かした空中戦の強さ、相手の縦パスを読み切るインターセプト、そしてライン間に通す縦パスの精度。守備的役割にとどまらず、攻撃の第一歩を生み出す能力は、ブライトンの攻撃的スタイルに完璧にフィットする。
さらに、彼の戦術理解度は高く、試合の流れを読む力に優れている。相手のプレスをいなすポジショニングや、味方の動きを引き出すパス選択は、年齢以上の成熟を感じさせる。こうした資質は、プレミアの強度とスピードに適応する上で不可欠となる。
個人的な見解
アグメがブライトンに加入すれば、中盤の安定感と創造性は一段と高まるはずだ。特に、バレバ退団後の穴を埋めるだけでなく、攻撃の起点としての役割も担える点は大きい。
ブライトンは近年、若手を育ててビッグクラブへ送り出すモデルで成功してきたが、アグメはそのサイクルの中で即戦力かつ将来の売却益も見込める理想的な補強になる。
一方で、アーセナルやユナイテッドのようなビッグクラブからの誘いは、選手にとって抗いがたい魅力を持つ。タイトル争いや欧州の舞台は、キャリアの価値を一気に高める可能性がある。
しかし、現時点でのアグメにとって最も重要なのは、継続的な出場機会と成長の場だと考える。ブライトンはその条件を満たす数少ないクラブであり、彼のキャリアを飛躍させる最適なステップになるだろう。