マンチェスターの青いユニフォームを纏い続けて8年。ベルナルド・シウバは、グアルディオラ体制の象徴的存在として、プレミアリーグと欧州の舞台で数々の栄光を手にしてきた。2025年8月に31歳を迎えた今も、その足元から生まれるタッチは研ぎ澄まされ、視野の広さと判断の速さは一級品だ。だが、彼の未来は静かに転換点を迎えている。
契約は2026年6月まで。つまり、あと数か月で国外クラブと自由にプレ契約を結べる立場になる。イタリアメディア『Tuttosport』によれば、ユベントスはすでに代理人サイドと非公式なコンタクトを取り、来夏のフリートランスファー獲得に向けた下準備を進めているという。
背景には、今季セリエAで成功を収めた“フリーの大物補強”の事例がある。ケビン・デ・ブライネがナポリに、ルカ・モドリッチがミランに加わり、いずれも即座にチームの中核となった。
ユベントスが求めるのは「創造性と経験の融合」
今季のユベントスは、守備の安定感こそリーグ屈指だが、攻撃面では試合を決定づける創造性が不足している。イゴール・トゥドール監督の戦術は堅牢だが、相手を押し込み続けるための中盤のアイデアは限られている。ベルナルド・シウバは、その空白を埋める存在として理想的。
彼は右サイドのインサイドハーフ、トップ下、さらには偽9番までこなす万能型。狭いスペースでのボール保持能力は、セリエAの守備的ブロックを崩す上で極めて有効になる。
さらに、グアルディオラの下で培ったハイプレスの習慣は、ユベントスの守備的アプローチにも適合する。ボールを失った瞬間の切り替え、相手のビルドアップを寸断する動きは、攻守両面での即効性を保証する。
また、彼のプレーは数字にも裏付けられている。2024-25シーズンのプレミアリーグでは、33試合で4ゴール4アシストを記録。パス成功率は90%を超え、ファイナルサードでのパス本数はチーム内トップクラスだった。
現行契約の満了まで残り1年を切った今、マンチェスター・シティが延長オファーを提示する可能性は低いと見られている。エティハドの経営陣は30歳を超える選手への長期契約に慎重で、条件面での折り合いは難航するだろう。
ユベントスにとっての最大の障壁は経済面だ。移籍金は不要でも、年俸と契約ボーナスは高額になる見込みで、財務的な負担は軽くない。
さらに、MLSやサウジアラビアからの巨額オファーも予想される。特にサウジ勢は、2025年夏にも複数の欧州スターを引き抜いており、ベルナルド・シウバにも年俸総額で圧倒的な条件を提示する可能性がある。
それでも、ユベントスは勝算を見出している。デ・ブライネがナポリで見せた即効性、モドリッチがミランにもたらした安定感は、経験豊富な選手がセリエAで輝けることを証明した。ベルナルド・シウバが加われば、中盤の創造性と試合運びの巧みさが一気に向上し、スクデット争いにおける決定的な武器となるだろう。
セリエA全体への波及効果
もしこの移籍が実現すれば、ユベントスだけでなくリーグ全体にも影響を与える。セリエAは近年、若手育成と即戦力補強のバランスを模索してきたが、ワールドクラスのベテランを迎えることで国際的な注目度が高まり、商業的価値も上昇する。
ベルナルド・シウバは、ただの経験豊富な補強ではない。試合のテンポを自在に操り、攻撃のリズムを変えることができる稀有な存在。こうした選手がリーグに加わることは、戦術的多様性を広げ、若手選手にとっても最高の教材となる。
一方で、本人は去就について明言を避けており、代理人も「今季終了後に最適な選択をする」とコメント。ユベントスはこの沈黙を好機と捉え、冬の移籍市場解禁と同時に正式交渉へ動く準備を進めている。
個人的な見解
ベルナルド・シウバのユベントス移籍は、戦術面だけでなくクラブのブランド戦略にも直結する一手になると考える。
彼の加入は、単に中盤の質を高めるだけでなく、若手選手への刺激、そしてセリエA全体の国際的評価向上にもつながるだろう。
もちろん、経済的リスクや年齢的な要素は無視できない。
しかし、31歳という年齢は、経験とフィジカルのバランスが最も充実する時期でもある。適切な起用法とコンディション管理があれば、彼はまだ数年にわたりトップレベルで輝き続けるはずだ。
ユベントスがこの賭けに出るなら、それは短期的な戦力補強にとどまらず、クラブの未来像を形作る象徴的な決断になるだろう。