インテル・ミラノはセリエAでまさかの2連敗を喫している。序盤戦だけにまだまだ巻き返せるものの、守護神のポジションに揺らぎを抱えている。
ヤン・ゾマーは経験豊富なスイス代表GKとして信頼を寄せられてきたが、今季序盤のパフォーマンスには陰りが見える。特にクロス対応やシュートへの反応で一瞬の遅れが生じてる。クラブ首脳陣はこの問題を軽視せず、冬の移籍市場での補強を真剣に検討している。
その候補として急浮上しているのが、マンチェスター・シティに所属するドイツ人GKシュテファン・オルテガだ。イタリアメディア『Inter Live』の報道によれば、インテルはオルテガをゾマーの後継者としてリストアップし、1月の移籍市場での獲得を視野に入れている。
オルテガは現在32歳。マンチェスター・シティではジャンルイジ・ドンナルンマやジェームス・トラフォードの加入によって序列を下げ、出場機会を大きく失っている。
契約は来夏で満了を迎えるため、移籍金を抑えつつ即戦力を確保できる点で、インテルにとっては理想的なターゲットとなっている。
シュテファン・オルテガの特性とインテルでの適応可能性
オルテガの最大の武器は、ショットストップ能力と足元の技術。アルミニア・ビーレフェルト時代から、彼は「現代型GK」として評価されてきた。単にシュートを防ぐだけでなく、後方からのビルドアップに積極的に関与し、数的優位を作り出すことができる。
マンチェスター・シティでペップ・グアルディオラの戦術要求に応えてきた経験は、インテルの3バックシステムにおいても大きな武器となるだろう。
一方で、課題も存在する。オルテガはクロス対応において圧倒的な支配力を誇るタイプではなく、空中戦での強さは際立っていない。セリエAはフィジカルに優れたストライカーが多く、ゴール前での競り合いは日常茶飯事だ。ゾマーと同様に空中戦での不安を抱える可能性がある以上、インテルの守備陣全体で補完する必要がある。
ただし、インテルの守備ブロックは組織力に優れており、3バックの中央に構えるアレッサンドロ・バストーニやフランチェスコ・アチェルビが空中戦をカバーすることで、オルテガの弱点を最小限に抑えることは可能だ。むしろ、彼の足元の技術が加わることで、後方からの組み立てがよりスムーズになり、攻撃の幅が広がることが期待される。
マンチェスター・シティの事情と移籍の現実味
マンチェスター・シティは2024年夏にGK陣を大幅に再編した。ジェームズ・トラフォードをバーンリーから呼び戻し、さらにドンナルンマを獲得。エデルソンが退団したことで、オルテガは第2GKとして残留したが、出場機会は限られている。
クラブはトラフォードを武者修行に出す構想を持っているものの、オルテガの契約は残り1年。今冬に移籍金を得るか、来夏にフリーで放出するかという選択を迫られている。
インテルにとっては、まさに「市場の隙間」を突く好機だ。経済的に制約のあるクラブにとって、低コストで即戦力を確保できるオルテガは理想的な補強候補である。さらに、本人にとってもシティで控えに甘んじるより、欧州トップレベルの舞台で正守護神としてプレーする方が、キャリアの晩年を輝かせる道となる。
インテルはクリスティアン・キヴ監督の下で、ポゼッション志向を強め、後方からの組み立てにGKの関与が不可欠となっている。ゾマーは安定感を持つ一方で、足元の技術や配球の精度では限界が見え始めている。
オルテガが加入すれば、インテルは後方からのビルドアップに新たな選択肢を得ることになる。例えば、相手の前線プレスを誘い込み、オルテガが正確なロングフィードで一気にサイドへ展開する場面が増えれば、ラウタロ・マルティネスやマルクス・テュラムのスピードを活かした攻撃がより鋭さを増すだろう。
また、セリエAの戦術的な駆け引きにおいて、GKの判断力は勝敗を左右する要素となる。オルテガはシティで培った経験を活かし、インテルに新たな戦術的柔軟性をもたらす可能性がある。
個人的な見解
オルテガのインテル移籍は、クラブと選手双方にとって大きな転機となる可能性がある。
インテルはゾマーの不安定さを補い、スクデット争いを最後まで戦い抜くための安定感を手に入れられる。
一方のオルテガにとっても、シティで控えに甘んじるより、欧州トップレベルの舞台で正守護神としてプレーする方が、キャリアの晩年を輝かせる道となる。
ただし、獲得が即座に成功を保証するわけではない。セリエA特有の戦術的な駆け引きや空中戦の激しさに適応できるかどうかが、オルテガの評価を大きく左右する。
個人的には、彼の足元の技術と反射神経はインテルの守備構造に新たな可能性をもたらすと考えている。もしこの移籍が実現すれば、インテルのゴールマウスは再び安心感を取り戻し、チーム全体の攻守のバランスが改善されるはず。
最終的に、この補強は「リスクを抑えた勝負手」として評価できる。
インテルが本気で欧州の頂点を狙うのであれば、守護神の安定は不可欠だ。オルテガがその答えとなるかどうか、冬の移籍市場は大きな注目を集めることになる。