トッテナム・ホットスパーはスポルティングCPの主将モルテン・ヒュルマンド獲得に向けて本格的に動いている。スペイン紙『Fichajes』が報じているように、クラブは6000万ユーロ規模の投資を検討しており、デンマーク代表MFを来夏の最重要ターゲットに据えている。
ヒュルマンドは2023年夏にUSレッチェから加入して以来、スポルティングで急速に存在感を高めた。ルベン・アモリム前監督の下でキャプテンを任され、リーグ戦やヨーロッパの舞台で安定したパフォーマンスを披露。
2024/25シーズンも公式戦47試合に出場し、3得点2アシストを記録している。数字以上に評価されているのは、試合の流れを読み切るインテリジェンスと、ピッチ全体を掌握するリーダーシップだ。
トッテナムは昨季のヨーロッパリーグ制覇という栄光の裏で、プレミアリーグでは苦戦を強いられ、アンジェ・ポステコグルー監督は退任。現在はトーマス・フランクが指揮を執り、チーム再建を進めている。
だが、中盤の守備的安定感は依然として課題であり、イヴ・ビスマの不安定さやジョアン・パリーニャの年齢、ロドリゴ・ベンタンクールの移籍噂など、クラブは確固たる“アンカー”を欠いている。
その穴を埋める存在として、ヒュルマンドは理想的。相手の攻撃を寸断する読みの鋭さ、ボール奪取後に縦へ展開する推進力、そして空中戦での強さを兼ね備えている。特にインターセプト能力はヨーロッパでも屈指とされ、1試合平均2回以上のボール奪取を記録。さらに85%を超えるパス成功率で、攻撃の起点としても機能する。
ヒュルマンドのプレースタイルとトッテナムへの適合性
ヒュルマンドの特徴は、守備的な規律と攻撃への橋渡しを同時にこなせる点にある。彼は相手のパスコースを読み切り、ボールを奪った瞬間に前線へ鋭い縦パスを供給する。スポルティングではしばしばカウンターの起点となり、守備から攻撃への切り替えを一瞬で実現してきた。
また、彼のリーダーシップは数字では測れない価値を持つ。キャプテンとしてチームを鼓舞し、試合の流れが悪いときでも冷静に仲間をまとめ上げる姿は、トッテナムが長年求めてきた資質そのものだ。
ハリー・ケイン退団後、クラブは精神的支柱を欠いており、その役割を担える選手は限られている。ヒュルマンドはその空白を埋める可能性を秘めている。
さらに、トーマス・フランクの戦術との相性も良い。フランクはブレントフォード時代からデータを駆使した柔軟な戦術を得意とし、ダブルボランチや3センターを使い分ける。ヒュルマンドはそのどちらにも適応でき、ルーカス・ベリヴァルやパペ・マタル・サールといった若手と組み合わせることで、守備の安定と攻撃の推進力を両立できる。
ただし、移籍実現には障害もある。ヒュルマンドにはアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドも関心を示しており、バルセロナやインテル、パリ・サンジェルマンといった欧州の強豪も動向を注目している。さらに、彼の契約には8000万ユーロのリリース条項が存在し、スポルティングは最低でも5000万〜6000万ユーロを要求するとみられる。
トッテナムがこの競争を制するためには、来季のチャンピオンズリーグ出場権を確保することが不可欠だ。ヨーロッパリーグ優勝によって得られる財政的余裕と、トップレベルで戦う舞台を提示できなければ、ヒュルマンドを説得するのは難しい。
個人的な見解
モルテン・ヒュルマンドは、トッテナムにとってクラブの未来を左右する存在だと感じている。
彼の守備的安定感とリーダーシップは、現在のチームに欠けている要素を一気に補う力を持っている。特に、プレミアリーグの激しい攻防において、彼の規律と冷静さは大きな武器になるだろう。
一方で、移籍金の高さや他クラブとの競争、さらにはアーセナルのタトゥー問題といった外的要因も無視できない。
だが、トッテナムが本気で再建を目指すのであれば、こうしたリスクを超えてでも獲得に動くべきだと考える。クラブのアイデンティティを再構築するための象徴的な存在になり得る。
もし彼がホワイト・ハート・レーンに立つ日が来れば、トッテナムの中盤は新たな時代を迎えることになるだろう。
守備の安定と攻撃の推進力を兼ね備えた“北欧の闘将”が、クラブの未来を切り拓く姿を見てみたい。