イラン・メリエのキャリアは大きな転換点を迎えている。かつてリーズ・ユナイテッドの絶対的守護神として君臨したフランス人GKは、今やルーカス・ペリ、カール・ダーロウの後塵を拝し、第3GKに甘んじている。契約は2026年夏で満了を迎える予定で、クラブが延長に動く気配は皆無。事実上、来年の夏にはフリートランスファーで退団する可能性が極めて高い。
この状況を見逃さなかったのがインテル・ミラノだ。ヤン・ゾマーは今季限りで契約が切れる36歳のベテラン。昨季はセリエA準優勝とチャンピオンズリーグ決勝進出に貢献したが、年齢的に次世代への橋渡しが急務となっている。
インテルはすでにステファン・オルテガ(マンチェスター・シティ)やホセフ・マルティネス(ジェノア)といった候補をリストアップしているが、メリエもその一角を占めている。
メリエはまだ25歳。GKとしては伸び盛りの年代であり、プレミアリーグで200試合以上の経験を積んできた実績は決して軽視できない。リーズでの序列低下は彼の評価を下げたが、インテルにとっては「低コストで獲得可能な潜在能力の高い守護神」という魅力的な選択肢に映っていると、トルコ人ジャーナリストのエクレム・コヌル氏が伝えた。
🚨🆓 #InterMilan
— Ekrem KONUR (@Ekremkonur) September 19, 2025
Inter Milan are monitoring Illan Meslier as a free agent option for 2026.
🔺Leeds United’s third-choice GK is out of Daniel Farke’s plans.
👀Sommer’s expiring deal opens the door. pic.twitter.com/tVOSkcYdXQ
メリエの強みと課題、インテルでの適応可能性
メリエの最大の強みは、190cmを超える体格を活かしたシュートストップ能力だ。特に至近距離での反応は鋭く、セービングの瞬発力はプレミアリーグでも高く評価されてきた。さらに、足元の技術も一定以上の水準にあり、後方からのビルドアップに積極的に関与できる。インテルが近年取り入れている後方からの組み立て型戦術において、メリエの配球力は十分に活かされるだろう。
一方で、クロス対応やハイボール処理に課題を抱えているのも事実だ。プレミアリーグでは空中戦の強度が高く、メリエはその場面で不安定さを露呈することがあった。セリエAは戦術的に緻密で、セットプレーの質も高い。インテルのようにスクデットを狙うクラブであれば、わずかなミスが命取りになる。メリエがこの弱点を克服できるかどうかは、移籍後のキャリアを大きく左右する。
さらに、インテルのゴールマウスは常に重圧に晒される舞台となる。リーズでの残留争いとは異なり、インテルでは優勝争いと欧州の大舞台が日常となる。サン・シーロの観衆は守護神に対して容赦ない視線を注ぎ、安定感を欠けばすぐに批判の矢面に立たされる。メリエがその環境で精神的な強さを発揮できるかどうかも、大きな焦点となる。
リーズでの功績と失墜の背景
メリエは2019年にロリアンからリーズへ加入し、2020年に完全移籍。以降、クラブのプレミアリーグ昇格と残留争いを支え、公式戦214試合に出場した。特に2020-21シーズンには、昇格1年目のリーズを中位に導く原動力となり、若手GKとして大きな注目を集めた。
しかし、その後は不安定なパフォーマンスが増え、2022-23シーズンの降格争いでは痛恨のミスも目立った。ダニエル・ファルケ監督の下では信頼を失い、今季は完全に序列を落としている。クラブとしても新たな守護神を据えたことで、メリエの未来はエランド・ロードから遠ざかっている。
インテルは経済的に大きな投資を避けつつ、将来性のある選手をフリーで獲得する戦略を繰り返してきた。メリエの獲得もその延長線上にある。ゾマーの後継者として即戦力を求めるならオルテガの方が適任かもしれないが、長期的な育成を視野に入れるならメリエは理想的な候補と言える。
また、インテルは近年、若手選手を段階的に起用しながら成長を促すスタイルを取っている。メリエが加入すれば、最初は控えとしてゾマーや他のGKから学び、数年後に正守護神へとステップアップするシナリオも十分に考えられる。
個人的な見解
メリエのキャリアは、まさに再生のチャンスを迎えている。
リーズでの序列低下は彼にとって屈辱的な経験かもしれないが、同時に新たな挑戦への扉を開く契機でもある。
インテルのようなビッグクラブで再び正守護神の座を掴めば、代表復帰やさらなるキャリアアップの可能性も広がるだろう。
ただし、インテルで即座にゾマーの後継者として定着するのは容易ではない。オルテガのような即戦力候補と比較すると、メリエはまだ粗削りな部分を残している。
しかし、25歳という年齢を考えれば、数年後にセリエAを代表する守護神へと成長する可能性は十分にある。インテルが本気で彼を育成し、競争の中で磨き上げる環境を整えれば、メリエは再び欧州の舞台で輝きを放つだろう。
メリエがサン・シーロのゴールマウスに立つ日が来るのか、その答えは2025-26シーズンの終盤、そして来夏の移籍市場で明らかになる。